控除
ひとり親控除は35万円、寡婦控除は27万円。
離婚と死別で要件が違います
ひとり親控除と寡婦控除は、どちらも「配偶者がいない人」の控除ですが、金額も要件も別のものです。ひとり親が35万円、寡婦が27万円。
そして、先に見るのはひとり親のほうです。寡婦控除の条文は「ひとり親に該当せず」から始まります。順番を逆にすると、35万円を27万円で申告してしまいます。国税庁のタックスアンサーNo.1171とNo.1170で確認します。
この記事の要点
ひとり親控除は35万円、寡婦控除は27万円です。ひとり親の要件は、婚姻をしていないこと、生計を一にする子(総所得金額等58万円以下)がいること、合計所得金額500万円以下の3つ。寡婦は「ひとり親に該当しない人」が前提で、離婚なら扶養親族が必要、死別なら扶養親族の要件がありません。どちらも、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいる場合は対象外です。判定はその年の12月31日の現況。国税庁タックスアンサーNo.1171・No.1170をもとに整理しました。
控除額はひとり親35万円、寡婦27万円
まず金額です。ひとり親控除は35万円、寡婦控除は27万円で、差は8万円あります。どちらか一方だけが適用され、両方を重ねて受けることはできません。所得控除ですので、同じ8万円の差でも、税率が高い方ほど税額の差は大きくなります。
| 区分 | 控除額 | 性別の要件 |
|---|---|---|
| ひとり親控除 | 35万円 | なし(男女どちらも対象) |
| 寡婦控除 | 27万円 | あり(夫と離婚・死別した人) |
ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用されました。国税庁は次のように書いています。
国税庁 タックスアンサー No.1171「ひとり親控除」
納税者がひとり親であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これをひとり親控除といいます。なお、ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用されます。
ひとり親控除の3つの要件
ひとり親は、その年の12月31日の現況で、婚姻をしていないことまたは配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件をすべて満たす人です。3つのうち1つでも欠けると、ひとり親控除は使えません。
国税庁 タックスアンサー No.1171「ひとり親控除」
(1)その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。
(2)生計を一にする子がいること。
この場合の子は、その年分の総所得金額等が58万円以下(注)(令和2年分から令和6年分までは48万円以下)で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
(3)合計所得金額が500万円以下であること。
ここで大事なのは、(2)が「子」に限られていることです。生計を一にする親や兄弟姉妹を扶養していても、ひとり親にはなりません。子がいることが条件です。
子の所得要件は、改正で動いています。国税庁は注でこう書いています。
同(注)
令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される金額は「62万円以下」です。
| 年分 | 生計を一にする子の総所得金額等の要件 |
|---|---|
| 令和2年分〜令和6年分 | 48万円以下 |
| 令和7年分 | 58万円以下 |
| 令和8年分〜 | 62万円以下 |
また、その子が他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないことも要件です。別れた配偶者が同じ子を扶養親族として申告していれば、こちらはひとり親になりません。
寡婦控除は、離婚と死別で要件が違う
寡婦控除は、離婚した場合と死別した場合で要件が分かれます。離婚のときは扶養親族がいることが必要ですが、死別のときは扶養親族の要件がありません。ここが、寡婦控除でいちばん間違えやすいところです。
国税庁 タックスアンサー No.1170「寡婦控除」
寡婦とは、原則としてその年の12月31日の現況で、「ひとり親」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人です。納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象となりません。
(1)夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
(2)夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
なお、この場合は、扶養親族の要件はありません。
| 離婚 | 死別(生死不明を含む) | |
|---|---|---|
| 扶養親族 | 必要 | 不要 |
| 合計所得金額 | 500万円以下 | 500万円以下 |
| ひとり親に該当しないこと | 必要 | 必要 |
寡婦の(1)は「扶養親族」ですから、子に限りません。離婚後に親を扶養している場合も、扶養親族がいる人として寡婦に当たり得ます。ひとり親の「子」との違いです。
なお、「夫」とは民法上の婚姻関係にある人をいう、と注記されています。
先にひとり親を見る。寡婦は「ひとり親に該当しない人」
順番を間違えると、金額を取り違えます。寡婦の定義は「ひとり親に該当せず」から始まりますので、まずひとり親の3要件に当てはまるかを確かめ、当てはまらなかった場合に寡婦を見ます。逆から見ると、35万円で済むところを27万円で申告してしまいます。
たとえば、離婚して合計所得金額が500万円以下で、生計を一にする子(収入がなく、他の人の同一生計配偶者や扶養親族にもなっていない)がいる方は、ひとり親の3要件をすべて満たします。この場合はひとり親控除35万円で、寡婦控除27万円ではありません。
一方、離婚して合計所得金額が500万円以下であっても、同居して扶養しているのが子ではなく実母という方は、ひとり親の(2)を満たしません。扶養親族はいますので、寡婦控除27万円になります。
事実婚の相手がいると、どちらも受けられない
ひとり親控除も寡婦控除も、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象外です。籍を入れていなくても、実質的に配偶者と同じ関係の相手がいれば、どちらの控除も受けられません。
国税庁 タックスアンサー No.1170「寡婦控除」
納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象となりません。
ひとり親のほうも、要件(1)に同じ内容が置かれています。令和2年分の改正で、ひとり親・寡婦の双方に共通して入った要件です。
令和2年分の改正で変わったこと
令和元年分以前は、寡婦控除の中に「一般の寡婦」27万円と「特別の寡婦」35万円という区分がありました。令和2年分からは、35万円の枠がひとり親控除として独立し、寡婦控除は27万円の一本になっています。
| 年分 | 区分 | 控除額 |
|---|---|---|
| 令和元年分以前 | 一般の寡婦 | 27万円 |
| 特別の寡婦 | 35万円 | |
| 令和2年分以後 | ひとり親控除 | 35万円 |
| 寡婦控除 | 27万円 |
令和元年分以前の一般の寡婦は、扶養親族がいる人または生計を一にする子がいる人(この場合の子は総所得金額等が38万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族となっていない人に限る)などとされていました。特別の寡婦は、そこに「扶養親族である子がいる」「合計所得金額が500万円以下」が加わった区分です。
過去の年分を修正申告や更正の請求で見直すときは、その年分のルールで判定します。令和元年分以前をいまの区分で当てはめないようご注意ください。
よくある質問
ひとり親控除と寡婦控除はいくらですか
まず金額です。ひとり親控除は35万円、寡婦控除は27万円で、差は8万円あります。どちらか一方だけが適用され、両方を重ねて受けることはできません。所得控除ですので、同じ8万円の差でも、税率が高い方ほど税額の差は大きくなります。→ 本文で読む
ひとり親控除を受けるための要件は何ですか
ひとり親は、その年の12月31日の現況で、婚姻をしていないことまたは配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件をすべて満たす人です。3つのうち1つでも欠けると、ひとり親控除は使えません。→ 本文で読む
離婚した場合と死別した場合で寡婦控除の要件は違いますか
寡婦控除は、離婚した場合と死別した場合で要件が分かれます。離婚のときは扶養親族がいることが必要ですが、死別のときは扶養親族の要件がありません。ここが、寡婦控除でいちばん間違えやすいところです。→ 本文で読む
ひとり親控除と寡婦控除はどちらを先に判定しますか
順番を間違えると、金額を取り違えます。寡婦の定義は「ひとり親に該当せず」から始まりますので、まずひとり親の3要件に当てはまるかを確かめ、当てはまらなかった場合に寡婦を見ます。逆から見ると、35万円で済むところを27万円で申告してしまいます。→ 本文で読む
事実婚の相手がいてもひとり親控除は受けられますか
ひとり親控除も寡婦控除も、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象外です。籍を入れていなくても、実質的に配偶者と同じ関係の相手がいれば、どちらの控除も受けられません。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1171 ひとり親控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1171.htm - 国税庁「No.1170 寡婦控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1170.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
離婚・死別があった年は、控除の当てはめを一度ご確認ください。
ひとり親か寡婦か、扶養親族がいるか、所得が500万円以下か。当てはめを一つ間違えると8万円の差が出ます。年末調整の書類とあわせてご相談ください。