美容師
美容室のインボイス。
お客様が一般の方なら、
登録しない
選択肢があります
「インボイスは登録しないといけない」——そうとは限りません。
登録が必要になるのは、取引先が消費税を納めていて、あなたへの支払いを控除したい場合です。美容室のお客様は一般の方が中心なので、この事情が当てはまりません。ただし面貸しの方は、サロンとの関係で話が変わります。
この記事の要点
インボイスに登録すると、売上がいくらでも消費税を納めることになります。ただし美容室のようにお客様が一般の方中心なら、登録しなくても取引に影響が出にくい業種です。面貸しの場合はサロンとの関係で判断が変わります。
なぜ登録が求められるのか
まず仕組みを整理します。インボイスを求めるのは、あなたではなく相手方の事情です。
消費税を納めている事業者は、売上で預かった消費税から、仕入や経費で払った消費税を引いて納めます。この「引く」ために、相手方が発行したインボイス(適格請求書)が必要になります。
国税庁「No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」
仕入税額控除の適用を受けるためには、法定事項が記載された帳簿および請求書等の保存が要件とされています。この請求書等には、適格請求書、適格簡易請求書のほか、仕入明細書等やそれらの電磁的記録を含みます。
つまりインボイスは、受け取る側が控除するために要るものです。控除しない相手には必要ありません。
つまり——
| 相手が課税事業者 | あなたが登録していないと、相手は控除できません。だから登録を求められます |
|---|---|
| 相手が一般のお客様 | そもそも消費税を控除しません。インボイスを必要としません |
| 相手が免税事業者 | 控除の計算をしないので、こちらも必要としません |
美容室は事情が違います
美容室のお客様は、ほとんどが一般の方です。カットやカラーの代金を経費にして消費税を控除する、ということをしません。
だからお客様の側から「インボイスを出してください」と言われることは、まず起きません。
登録しないままでいられる業種です
建設業や、企業を相手にしているフリーランスは、取引先から登録を求められて事実上断りにくい場面があります。美容室はその圧力がかかりにくい数少ない業種のひとつです。
売上が1,000万円を超えていなければ、登録しない限り消費税を納める必要はありません。
面貸しの場合は別です
ここが分かれ目です。面貸し・業務委託の美容師は、お客様ではなくサロンから報酬を受け取っています。
サロンが消費税を納めている事業者なら、あなたへの支払いを控除したいと考えます。そのためにインボイスが必要になります。
| 受け取り方 | 相手 | 登録を求められるか |
|---|---|---|
| 自分で集客し、お客様から直接いただく | 一般のお客様 | 求められにくい |
| サロンから報酬として受け取る | サロン(課税事業者なら) | 求められる可能性があります |
| 席を借り、お客様から直接いただく (面貸し料を払う形) | 一般のお客様 | 求められにくい |
お金の流れがどうなっているかで変わります。「面貸し」と呼んでいても、実際にはサロンがまとめて受け取って歩合で払っている形なら、真ん中の行に当たります。
なお、経過措置があるため、登録していない相手からの仕入れでも当面は一定割合を控除できます。令和8年10月からは70%です。サロン側の負担がゼロになるわけではないので、そこは交渉になります。
登録すると何が起きるか
| 売上がいくらでも消費税を納めます | 1,000万円以下でも免税に戻れません。くわしくはこちら |
|---|---|
| 申告と納税の手間が増えます | 所得税とは別に、消費税の申告が必要になります |
| 登録番号が公表されます | 国税庁のサイトで、氏名または名称と登録番号が公表されます |
| 当面は負担が軽くなります | 2割特例(令和8年分まで)・3割特例(令和9年・10年分、個人のみ) |
個人事業者は令和8年分が2割特例の最後です
いま登録している方は、売上の消費税の2割を納めれば済む特例を使えているはずですが、これは令和8年9月30日を含む課税期間で終わります。個人事業者なら今年が最後です。
令和9年・10年分は3割特例になり、令和11年分からは簡易課税か本則課税を選ぶことになります。登録した場合の負担は、これから重くなっていきます。
判断のしかた
| 1 | お金を誰から受け取っているか。お客様から直接なら、登録しない選択肢が現実的です |
|---|---|
| 2 | サロンから受け取っているなら、サロンが課税事業者か確認する。免税事業者なら、そもそも求められません |
| 3 | 求められている場合、条件を確認する。登録しない場合に報酬が下がるのか、下がるならいくらか |
| 4 | 登録した場合の納税額を計算して比べる。報酬の減額分と、納める消費税のどちらが大きいか |
4が肝心です。「登録しないと報酬を下げる」と言われた場合でも、下げ幅より納税額のほうが大きければ、登録しないほうが手元に残ります。数字を出さずに決めないでください。
あとから変えられるか
登録の取消しはできます。「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を出す形です。ただし、出したその日から効くわけではありません。いつから外れるかには決まりがあるので、取りやめたい時期が決まっているなら、逆算して早めに動く必要があります。具体的な期限はご相談ください。
そして取消しをしても、売上が1,000万円を超えていれば、そもそも課税事業者のままです。登録をやめれば免税に戻る、という単純な話ではありません。
登録は入るより出るほうが手間がかかります。だから入る前に計算してください。
よくある質問
美容室にインボイス登録は必要ですか?
まず仕組みを整理します。 インボイスを求めるのは、あなたではなく相手方の事情です。 消費税を納めている事業者は、売上で預かった消費税から、仕入や経費で払った消費税を引いて納めます。この「引く」ために、 相手方が発行したインボイス(適格請求書)が必要 になります。→ 本文で読む
お客様が一般の方の美容室はインボイスをどう考えますか?
美容室のお客様は、 ほとんどが一般の方 です。カットやカラーの代金を経費にして消費税を控除する、ということをしません。 だから お客様の側から「インボイスを出してください」と言われることは、まず起きません。→ 本文で読む
面貸しの美容師はインボイスをどう考えますか?
ここが分かれ目です。 面貸し・業務委託の美容師は、お客様ではなくサロンから報酬を受け取っています。 サロンが消費税を納めている事業者なら、 あなたへの支払いを控除したいと考えます。 そのためにインボイスが必要になります。→ 本文で読む
インボイス登録はどう判断しますか?
4が肝心です。 「登録しないと報酬を下げる」と言われた場合でも、下げ幅より納税額のほうが大きければ、登録しないほうが手元に残ります。 数字を出さずに決めないでください。→ 本文で読む
インボイス登録をやめたいときはどうしますか?
登録の取消しはできます。「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を出す形です。 ただし、出したその日から効くわけではありません。 いつから外れるかには決まりがあるので、取りやめたい時期が決まっているなら、逆算して早めに動く必要があります。 具体的な期限はご相談ください。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「インボイス制度特設サイト」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm - 国税庁「No.6501 納税義務の免除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm - 国税庁「No.6505 簡易課税制度」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm - 国税庁「No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6497.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
サロンとの関係を含めて判断します。
面貸し料の決まり方や、サロンが課税事業者かどうかで結論が変わります。登録した場合としない場合の納税額を計算して並べてお出しします。登録は取り消しに時間がかかるので、決める前にご相談ください。初回30分は無料です。