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消費税

消費税の1,000万円。
前々年だけでなく
「前年の上半期」も見られます

「前々年の売上が1,000万円を超えたら消費税」。よく知られたルールですが、それだけではありません。

国税庁は、もうひとつの入口を示しています。前年の1月1日から6月30日までの半年間で1,000万円を超えたら、その時点で課税事業者になります。売上が伸びている方ほど、ここに先に当たります。

公開 最終更新

原則は前々年の1,000万円

国税庁「No.6501 納税義務の免除」概要

事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等について消費税を納める義務がありますが、その課税期間の基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます。

個人事業主なら前々年です。令和8年分の判定に使うのは令和6年分の課税売上高。すでに確定している数字です。

「課税売上高」であって「売上高」ではない点にも注意してください。住宅の家賃や社会保険診療のような非課税売上は含みません。

もうひとつの入口:前年の上半期

国税庁は、免除されない場合を3つ挙げています。そのうちのひとつがこれです。

同上 特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合

特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、納税義務は免除されません。

この特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間をいいます。

前年の上半期の半年間だけを見ます。前々年が1,000万円以下でも、ここで超えていれば課税事業者です。

実際に効いてくるのは、売上が急に伸びた方です。

令和6年(前々年)令和7年1〜6月(特定期間)令和8年の扱い
Aさん800万円600万円免税
Bさん800万円1,100万円課税事業者
Cさん1,200万円500万円課税事業者

Bさんは前々年が800万円なので、基準期間だけ見れば免税です。しかし特定期間で超えているため課税事業者になります。「まだ1,000万円いっていないから大丈夫」と思っていた方が、いちばん驚くパターンです。

給与等支払額で判定してもよい

この特定期間の判定には、逃げ道が用意されています。

同上

なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することができます。いずれの基準で判定するかは納税者の任意です。

売上ではなく、その半年に払った給与の合計で判定してもよい。しかもどちらを使うかは納税者が選べます。

ひとりで働いていて従業員がいなければ、給与等支払額はゼロです。つまり特定期間で売上が1,000万円を超えていても、給与を払っていなければ免税のままということになります。

先ほどのBさんが従業員を雇っていなければ、給与等支払額で判定して令和8年も免税事業者です。この選択肢を知らずに課税事業者として申告してしまうケースがあります。

「給与等支払額」に何が入るかは確認が要ります

従業員への給与のほか、専従者給与や賞与も含まれます。一方、外注費は給与ではありません。この区分がまさに外注費か給与かの論点と重なります。人に払っている方は、単純にゼロとは言い切れないので確かめてください。

インボイス登録をしていれば免除されません

同上 適格請求書発行事業者の登録を受けている場合

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、納税義務は免除されません。

売上がいくら小さくても、インボイスの登録をしていれば消費税を納めます。登録した時点で、免税事業者には戻れなくなっているということです。

もうひとつ、年の途中で登録した場合の扱いも書かれています。「免税事業者が課税期間の途中で適格請求書発行事業者の登録を受けた場合には、その登録日からその課税期間の末日までに行った課税資産の譲渡等が消費税の申告の対象となります」。年の途中からの部分だけが対象で、それ以前は対象外です。

自分から課税事業者になる場合の縛り

設備投資をする年など、あえて課税事業者を選んで還付を受けたい場面があります。その場合は「消費税課税事業者選択届出書」を出しますが、縛りが付きます。

同上 課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となっている場合

「消費税課税事業者選択届出書」を提出した事業者が、課税事業者となった日から2年を経過する日までの間に開始した各課税期間中に、調整対象固定資産の課税仕入れ等を行い、かつ、その仕入れた日の属する課税期間の確定申告を一般課税で行った場合には、調整対象固定資産の仕入れ等を行った課税期間の初日から原則として3年間は、免税事業者となることはできず、2年間は「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することもできません。

調整対象固定資産とは、国税庁の定義では「棚卸資産以外の資産で、建物およびその附属設備、構築物、機械および装置、船舶、航空機、車両および運搬具、工具、器具および備品、鉱業権その他の資産で一の取引単位の価額…が100万円以上のもの」です。

つまり100万円以上の設備を買って還付を受けると、そのあと3年間は免税に戻れず、2年間は簡易課税も選べません。還付を受けた年だけを見て判断すると、翌年以降で逆転することがあります。

いつ分かるか、が大事です

ここまでの判定は、すべてすでに終わった期間の数字で決まります。基準期間は前々年、特定期間は前年の上半期。つまり今の時点で、来年どうなるかはもう決まっています。

分かっていれば、打てる手があります。

  • 簡易課税を選ぶなら、その課税期間の初日の前日までに届出が必要です。個人事業主なら12月31日。年が明けたら間に合いません(簡易課税の記事
  • 本則課税で行くなら、インボイスの保存と経費の区分を年初から整えておく必要があります。年末にまとめてやると間に合いません
  • 価格の見直し——課税事業者になれば、それまで手元に残っていた消費税相当額を納めることになります。取引先との単価の話は、期首より前が話しやすいはずです

いちばん避けたいのは、申告の時期になって初めて課税事業者だと気づくことです。そのときにはもう、選べたはずの選択肢が全部閉じています。

出典

  1. 国税庁「No.6501 納税義務の免除」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm
  2. 国税庁「No.6505 簡易課税制度」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

来年課税事業者になるかどうか、いま判定できます。

基準期間も特定期間も、すでに終わった期間の数字で決まります。つまり今の時点で答えは出ています。課税になるなら、簡易課税の届出を年内に出すかどうかも一緒に判断します。初回30分は無料です。