経費
自宅で仕事をしている場合の家事按分。
求められているのは
「明らかに区分」できることです
自宅で仕事をしていると、必ず出てくるのが「家賃の何割を経費にできますか」という質問です。
ところが国税庁は、割合を示していません。示しているのは要件のほうで、それは「明らかに区分できること」です。つまり大事なのは%の数字ではなく、その数字をどう説明できるかです。原文を読みながら整理します。
国税庁が書いていること
該当する部分を、そのまま引きます。
国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」注意事項
家事上の費用は必要経費となりませんが、個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。
(例)店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費など)
この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
「何%まで」という記述はどこにもありません。「50%までなら安全」といった基準も、国税庁は出していません。ネット上でよく見る「家賃は3割程度が無難」のような数字は、あくまで実務上の相場観であって、根拠のある基準ではありません。
2つの要件に分けて読む
引用した一文には、要件が2つ入っています。分けて読むと分かりやすくなります。
| 要件 | 問われていること |
|---|---|
| ① 業務遂行上直接必要であったこと | そもそも仕事に使っているか。使っていないものは、何%にしようが経費になりません |
| ② 取引の記録などに基づいて明らかに区分できること | 仕事のぶんとそれ以外を、根拠をもって分けられるか |
争いになるのは、ほぼ②です。「使っている」ことは言えても、「これだけ使っている」を説明できないケースが多い。
逆に言えば、説明の筋道さえ通っていれば、割合そのものはその筋道から出てくるものです。先に%を決めて、あとから理由を探すのが順番として逆だということになります。
面積で説明する
家賃や火災保険料、住宅の減価償却費のように、空間に紐づく費用は面積で分けるのが素直です。
たとえば60㎡の住まいのうち、6畳(約10㎡)の一室を仕事専用にしているなら、10 ÷ 60 で約16.7%。この数字には、間取り図という裏づけがあります。
実際に組み立てるときの注意点を挙げておきます。
- 専用の部屋があるほうが説明しやすい。リビングの一角で作業している場合は、その一角の面積で計算することになります。「リビング全部」は通りません
- 共用部分(廊下・トイレ・浴室)を分母に入れるかどうかで数字が変わります。どちらで計算したかを、自分で説明できるようにしておいてください
- 持ち家の場合は家賃という支出がないため、住宅ローンの元本は経費になりません。対象になるのは建物の減価償却費、固定資産税、火災保険料などです。住宅ローン控除を受けている場合は、按分割合によって控除額に影響が出ることがあります
時間で説明する
電気代や通信費のように、使った量に紐づく費用は時間で分けるほうが実態に合います。
週に5日、1日4時間その部屋で作業しているなら、週20時間 ÷ 168時間で約11.9%。あるいは1日24時間のうち4時間として16.7%。どちらの分母を取るかで数字が変わるので、考え方を一つに決めて毎年同じにしておくことが大事です。
面積と時間を掛け合わせる方法もあります。仕事部屋が16.7%で、その部屋を1日のうち3分の1使っているなら、16.7% × 33% で約5.6%。厳密にすればするほど割合は小さくなります。ここは、説明できることと取れる額とのバランスの問題です。
費用ごとに、違う割合でかまいません
家賃は面積で16.7%、電気代は時間で11.9%、通信費は使用実態で50%。これらを揃える必要はありません。それぞれの費用の性質に合った分け方をしているほうが、むしろ筋が通ります。
逆に、家賃も電気代も通信費も水道代も一律「30%」としてあると、その30%の根拠を聞かれたときに答えられません。水道代は、仕事に水を使う業種でなければそもそも①の要件を満たしません。
家族に払う家賃は経費になりません
意外に知られていない規定があります。同じページに、こう書かれています。
国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」注意事項
生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません。逆に、受け取った人も所得としては考えません。
これは、土地や家屋に限らずその他の資産を借りた場合も同様です。ただし、例えば子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、子が営む業務の必要経費になります。
実家で仕事をしていて親に家賃を払っている、という形は経費になりません。払った側で経費にならず、受け取った側でも所得にならない。税務上は、なかったものとして扱われます。
ただし後段が重要です。その建物にかかる固定資産税など、実際に生じている費用のほうは経費にできます。親名義の家で仕事をしているなら、家賃という形ではなく、固定資産税や火災保険料を業務分だけ按分するのが正しい入り口になります。
同じ理屈で、生計を一にする家族への給与も原則として経費になりません。青色事業専従者給与だけが例外です。
結局、記録が要件です
もう一度、原文の言葉に戻ります。
「取引の記録などに基づいて」
この一句が要件の中に置かれていることの意味は小さくありません。頭の中に根拠があるだけでは足りず、記録として残っていることが求められています。
やっておくと違うのは、たとえばこういうものです。
- 間取り図に、仕事で使っている部分を書き込んで保存しておく。賃貸契約書のコピーと一緒にしておけば、それだけで面積按分の根拠になります
- 按分の計算式そのものをメモに残す。「10㎡ ÷ 60㎡ = 16.7%」と1行あるだけで、翌年も同じ基準で計算できますし、聞かれたときに即答できます
- 割合を変えた年は、変えた理由も残す。引っ越した、部屋の使い方が変わった、稼働時間が増えた。理由があれば変えて構いません
逆に、いちばん危ういのは毎年なんとなく同じ割合を書き写している状態です。根拠を思い出せないまま数年が過ぎると、指摘されたときに説明の組み立て直しから始めることになります。
按分は、割合を大きくする工夫より、その割合を説明できる形にしておくことのほうがずっと効きます。
出典
- 国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
何%にするかより、なぜその%なのかを整えます。
間取り、使っている部屋、稼働している時間。お聞きすればどう組み立てるかをお伝えできます。すでに計上している方も、説明できる形になっているかを一度見ておく価値があります。初回30分は無料です。