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節税

iDeCoとNISA。
iDeCoは出口の
「10年ルール」に注意が要ります

どちらも「投資の非課税制度」とまとめられがちですが、税務の仕組みはまったく違います。

NISAは入口で控除がないかわり、出口が非課税。iDeCoは入口で全額控除できるかわり、出口では課税されます。そして令和7年度の改正で、その出口のルールが変わりました。順に整理します。

公開 最終更新

入口と出口が、逆になっています

先に全体像を並べます。

NISAiDeCo
掛けたとき(入口)控除はありません全額が所得控除
運用中非課税非課税
受け取るとき(出口)非課税退職所得または公的年金等の雑所得として課税
途中で引き出すいつでも可能原則60歳まで不可
損失が出たとき損益通算・繰越控除ができません

NISAは出口で効き、iDeCoは入口で効きます。そして流動性はNISAが上、税務上の効果はiDeCoが上、というのがおおまかな構図です。

NISAの枠と、損益通算できないこと

国税庁「No.1535 NISA(少額投資非課税制度)」

令和6年以降のNISAでは、18歳以上(口座開設の年の1月1日現在)の居住者等が、非課税口座に係る特定累積投資勘定(つみたて投資枠)及び特定非課税管理勘定(成長投資枠)で取得した上場株式等について、その配当等やその上場株式等を売却したことにより生じた譲渡益が、非課税となります。

年間投資上限額は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円です。また、非課税保有限度額は1,800万円(内数として成長投資枠のみの上限が1,200万円)です。

税理士の立場から、必ずお伝えしているのは次の注記です。

同上(注2)

非課税口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失はないものとみなされます。したがって、その上場株式等を売却したことにより生じた損失について、特定口座や一般口座で保有する上場株式等の配当等やその上場株式等を売却したことにより生じた譲渡益との損益通算や、繰越控除をすることはできません。

NISAの損失は、税務上なかったことになります。課税口座で利益が出ていても相殺できず、翌年以降に繰り越すこともできません。「利益が出れば非課税、損失が出ればなかったことにされる」という非対称な設計です。

もうひとつ、注1も実務では効きます。「非課税とされる配当等は非課税口座を開設している金融商品取引業者等を経由して交付されるもの(株式数比例配分方式を選択したもの)に限られています」。配当金の受取方法を株式数比例配分方式にしていないと、配当は課税されます。個別株を持つ方は、証券会社の設定を確認してください。

iDeCoは掛金の全額が所得控除

iDeCoの掛金は、小規模企業共済と同じ枠で控除されます。

国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」

控除できる掛金は次の3つです。
…(2)確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金

控除できる金額は、その年に支払った掛金の全額です。

「個人型年金加入者掛金」がiDeCoです。全額が所得控除になります。

効き方はその方の税率次第です。課税所得500万円(所得税20%+住民税10%)の方が年27.6万円(月2.3万円)掛ければ、年およそ8.4万円税金が減ります。所得の小さい方ほど効果は薄く、課税所得がゼロなら控除しても意味がありません。そこはNISAと決定的に違うところです。

iDeCoの出口は退職所得か雑所得

iDeCoは受け取るときに課税されます。国税庁は退職所得の定義のなかで、こう書いています。

国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、…確定拠出年金法に規定する企業型年金規約または個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金なども退職所得とみなされます。

一時金で受け取れば退職所得、年金形式なら公的年金等の雑所得です。

退職所得は「(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2」で計算し、他の所得と分離されます。控除の範囲に収まれば、税金はかかりません。ここまでなら、入口で控除して出口でも課税されない、という理想的な形になります。

問題は、会社の退職金も同じ「退職所得」だということです。

令和7年度改正の「10年ルール」

退職所得控除は、勤続年数に応じて計算します。ところが短い間隔で2回受け取ると、控除が重複しないように調整されます。

国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」

次に掲げる重複期間がある場合には、本年分の退職手当等の勤続年数に基づき上記表により算出した退職所得控除額から、重複期間の年数…に基づき上記表により算出した退職所得控除額相当額を控除した残額が退職所得控除額となります。

この重複調整の対象になる期間が、令和7年度税制改正で延長されました。

調整の対象になる期間通称
改正前前年以前4年内に受け取った退職手当等5年ルール
改正後前年以前9年内に受け取った退職手当等10年ルール

これまでは、iDeCoの一時金を受け取ってから5年空ければ、会社の退職金でも退職所得控除を満額使えました。改正後は10年空ける必要があります。

60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で会社を退職して退職金を受け取る。この形は、これまでは成立していましたが、改正後は重複調整の対象になります。

財務省「令和7年度税制改正の大綱」(令和6年12月27日 閣議決定)

退職手当等(老齢一時金(確定拠出年金法の老齢給付金として支給される一時金をいう。以下同じ。)を除く。)の支払を受ける年の前年以前9年内に老齢一時金の支払を受けている場合には、当該老齢一時金等について、退職所得控除額の計算における勤続期間等の重複排除の特例の対象とする

老齢一時金に係る退職所得の受給に関する申告書の保存期間を10年(現行:7年)とする。

上記の改正は、令和8年1月1日以後に老齢一時金の支払を受けている場合であって、同日以後に支払を受けるべき退職手当等について適用する。

原文を読むと、通称の「10年ルール」より条件が細かいことが分かります。3点に分けて押さえてください。

① 順番が決まっています

対象になるのは「老齢一時金を先に受け取り、そのあと退職手当等を受け取る」場合です。原文が「退職手当等(老齢一時金を除く。)の支払を受ける年の前年以前9年内に老齢一時金の支払を受けている場合」と書いているとおりです。逆の順番(会社の退職金が先、iDeCoが後)は、この改正の対象ではありません。

② 令和8年1月1日以後の「両方」が条件です

適用は「令和8年1月1日以後に老齢一時金の支払を受けている場合であって、同日以後に支払を受けるべき退職手当等について」です。老齢一時金と退職手当等の両方が令和8年1月1日以後である必要があります。令和7年中にiDeCoの一時金を受け取っていれば、この改正の対象外です。

③ 申告書の保存期間も10年に

あわせて「退職所得の受給に関する申告書」の保存期間が7年から10年に延びました。これは支払う側(会社)の義務です。調整期間が9年に延びたことに合わせた改正で、あまり触れられていませんが、法人にとっては実務が変わる部分です。

取れる対応

調整の対象になるからといって、税金が跳ね上がると決まったわけではありません。控除枠に収まっていれば影響はありません。そのうえで、実務上の選択肢を挙げておきます。

  • 受け取る順番を変える。この改正が効くのは「iDeCoが先、退職金があと」の順番です。会社の退職金を先に受け取る形なら、別の調整ルール(退職金どうしの重複調整)が働くため、扱いが変わります
  • iDeCoを年金形式で受け取る。退職所得ではなく公的年金等の雑所得になるため、この重複調整の対象外になります。ただし公的年金と合算されるので、そちらの枠を見る必要があります
  • 一括と分割を組み合わせる。控除枠に収まる分だけ一時金で受け取り、残りを年金にする方法もあります

どれが有利かは、退職金の額・勤続年数・公的年金の見込みで変わります。60歳が近づいてから考えるのでは遅いことがあるので、40代50代のうちに一度並べておく価値があります。

どちらから始めるか

税務の観点だけで言えば、判断の軸は2つです。

状況効きやすいほう理由
課税所得が大きいiDeCo所得控除の効果が税率に比例します
課税所得がほとんどないNISA控除する所得がなければiDeCoの入口の効果はゼロです
60歳前に使う可能性があるNISAiDeCoは原則60歳まで引き出せません
すでに大きな退職金の見込みがあるNISA寄りiDeCoの出口が退職所得控除を食い合います

そして、忘れられがちな前提があります。iDeCoは60歳まで引き出せません。事業をしている方にとって、これはリスクにもなります。事業資金が必要になっても、そこからは出せません。

節税効果だけで枠を埋めるのではなく、手元に残す現金とのバランスで決めてください。個人事業主なら、いざというとき貸付を受けられる小規模企業共済のほうが先、という考え方もあります。

出典

  1. 国税庁「No.1535 NISA(少額投資非課税制度)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1535.htm
  2. 国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
  3. 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
  4. 国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm
  5. 財務省「令和7年度税制改正の大綱」(令和6年12月27日 閣議決定)
    https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_01.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

所得の見込みが分かれば、どちらが効くか計算できます。

iDeCoの控除は税率の高い方ほど効き、NISAは所得に関係なく使えます。そして受け取り方まで含めると、判断は人によって変わります。数字を入れて比べたうえでお決めください。初回30分は無料です。