税制改正
少額減価償却資産が
40万円未満に。
令和8年度改正で拡充されました
パソコンや機械を買ったとき、その年に全額を経費にできる制度があります。中小企業者等の少額減価償却資産の特例です。
これまで対象は30万円未満でしたが、令和8年度税制改正で40万円未満に引き上げられました。10万円の差ですが、ノートパソコンや業務用の機材では、この差で扱いが変わるものが少なくありません。
何が変わったのか
令和8年度税制改正の大綱に、こう書かれています。
財務省「令和8年度税制改正の大綱」中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
対象となる減価償却資産の取得価額を40万円未満(現行:30万円未満)に引き上げる。
対象となる法人から常時使用する従業員の数が400人を超える法人を除外する。
その適用期限を3年延長する。
大綱には「所得税についても同様とする」という趣旨の記載があり、個人事業主にも同じ改正が及びます。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 取得価額の上限 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 適用除外となる従業員数 | 500人超 | 400人超 |
| 適用期限 | — | 3年延長 |
枠が広がる一方で、対象になる法人の範囲は少し狭まっています。従業員数の基準が500人超から400人超に下がりました。ひとり法人や小規模な事業所には関係のない話ですが、伸びている会社は意識しておく必要があります。
適用開始の時期について
本記事は財務省の大綱の記載にもとづいています。この記事の作成時点では、国税庁のタックスアンサーNo.5408はまだ改正前(30万円未満)の記載のままです。実際に適用される取得の時期については、国税庁の最新の資料か所轄の税務署でご確認ください。
そもそもどういう制度か
改正前の内容ですが、制度の骨格は国税庁のページで確認できます。
国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産…を…取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。
ただし、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円…を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度となります。
本来なら、資産は耐用年数にわたって少しずつ経費にします。パソコンなら4年、機械なら10年といった具合です。この特例はそれを飛ばして、買った年に全額を落とせるようにするものです。
年間の合計で300万円までという枠があります。大綱にはこの300万円を変えるという記載がないため、据え置きと読めます。
対象になる資産は、思ったより広い
同上 注意事項
この特例は、取得価額が30万円未満である減価償却資産について適用がありますので、器具および備品、機械および装置等の有形減価償却資産のほか、ソフトウエア、特許権、商標権等の無形減価償却資産も対象となり、また、所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産や、中古資産であっても対象となります。
ソフトウェアも対象です。会計ソフトや業務システムの導入費用が、この枠で落とせることがあります。中古資産も対象なので、中古の機械や車両にも使えます。
ただし除外もあります。「令和4年4月1日以後に取得などする場合は、少額減価償却資産から貸付け(主要な事業として行われるものは除きます。)の用に供したものが除かれます」。買ってすぐ人に貸すような使い方は対象外です。
10万円・20万円・40万円という3つの線
資産を買ったときの扱いは、金額で段階的に分かれます。この特例だけを見ていると全体が見えないので、並べておきます。
| 取得価額 | 扱い | 青色申告 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | その年に全額を経費に | 不要 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等に経費に | 不要 |
| 20万円以上40万円未満 | この特例で、その年に全額を経費に | 必要 |
| 40万円以上 | 耐用年数にわたって減価償却 | — |
10万円未満と一括償却資産は、青色申告でなくても使えます。この特例だけが青色申告者限定です。
そして国税庁は「取得価額が10万円未満のものまたは一括償却資産の損金算入制度の適用を受けるものについてもこの特例の適用はありません」としています。重複して使うことはできず、資産ごとにどれか一つを選ぶことになります。
一括償却資産をあえて選ぶ場面もあります
15万円のパソコンなら、この特例で全額落とすことも、一括償却資産として3年に分けることもできます。ふつうは全額落とすほうが有利ですが、その年が赤字なら、3年に分けたほうが使い切れることがあります。
もうひとつ、一括償却資産には償却資産税(固定資産税)がかからないという違いがあります。この特例で全額落とした資産は償却資産の申告対象になり、課税標準の合計が150万円以上なら税金がかかります。目先の所得税・法人税だけで決めると、翌年に別の税金が出てくることがあります。
使うための条件
国税庁が挙げている主な条件です。
- 青色申告書を提出していること。白色では使えません(青色申告の始め方)
- 中小企業者等であること。常時使用する従業員数の基準は、改正後は400人以下になります
- 事業の用に供した事業年度で損金経理すること。買っただけでは足りず、実際に使い始める必要があります
- 明細書を付けること。法人は別表16(7)、個人は青色申告決算書の摘要欄への記載などが必要です
明細を付け忘れると、適用されません
国税庁は「確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))を添付して申告することが必要です」としています。申告書を自分で作っている方が、いちばん落としやすいところです。会計ソフトで資産登録の区分を正しく選んでいれば自動で作られますが、手で組んでいる場合は確認してください。
使う前に確かめること
枠が40万円未満に広がったことで、判断が要る場面が増えます。
まず、300万円という年間の枠です。1台40万円弱の機材なら、7台で枠を使い切ります。年度末にまとめて買うと超えることがあるので、超えそうなら年をまたいで買うという選択肢が出てきます。
次に、その年に落とし切るのが有利かどうか。利益が大きい年なら有利ですが、これから伸びる見込みなら、あえて減価償却で数年に分けたほうが税率の高い年に当てられることがあります。個人事業主は累進課税なので、この差が効きます。
最後に、税込か税抜きか。取得価額の判定は、消費税の経理方式によります。税抜経理なら税抜きの金額で、税込経理なら税込みの金額で判定します。40万円ぎりぎりの資産では、これで結論が変わります。免税事業者は税込経理になるので、その点も含めて確認してください。
出典
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱(3/9)」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm - 国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
買う前に、どの枠で落とすかを決めておきませんか。
同じ機材でも、買う時期と金額の刻み方で経費にできる年が変わります。年間300万円という枠もあるので、複数台まとめて買うなら順番も効いてきます。設備投資の予定があれば、決める前にご相談ください。初回30分は無料です。