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インボイス

インボイスに登録すると、
売上がいくらでも
消費税を納めます

インボイスの話は「登録したほうがいいか」から始まりがちですが、その前に知っておくことがあります。

国税庁がはっきり書いています。登録した課税事業者は、基準期間の課税売上高にかかわらず、消費税の納税義務は免除されません。売上300万円でも納めます。まずここから確認します。

公開 最終更新

インボイスとは何か

国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」概要

令和5年10月1日から、複数税率に対応した消費税額の仕入税額控除の方式として、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が開始しています。適格請求書等保存方式の下では、一定の事項が記載された帳簿及び「適格請求書(インボイス)」等の保存が仕入税額控除の要件となります。

要点は「仕入税額控除の要件」という一句です。消費税は、預かった消費税から払った消費税を引いて納めます。この「引く」ができるかどうかが、インボイスの有無で決まるようになりました。

同上 適格請求書とは

売手が買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類するものをいいます。
なお、適格請求書は、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者でなければ、交付することはできません。

「請求書や納品書その他これらに類するもの」とあるとおり、書類の名前は問いません。領収書でもレシートでも、必要な事項が書かれていればインボイスです。

登録すると起きること

この記事でいちばんお伝えしたいのが、次の注記です。

同上(注2)

適格請求書発行事業者の登録を受けた課税事業者は、基準期間の課税売上高にかかわらず、消費税の納税義務は免除されません。

同じことが、納税義務の免除のページにも書かれています。

国税庁「No.6501 納税義務の免除」

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、納税義務は免除されません。

売上が1,000万円を大きく下回っていても、登録している限り毎年消費税を計算して納めます。これは「登録の副作用」ではなく、制度の設計そのものです。1,000万円の判定とは別の話として動きます。

免税事業者だった方が登録した場合の扱いも書かれています。「免税事業者が課税期間の途中で適格請求書発行事業者の登録を受けた場合には、その登録日からその課税期間の末日までに行った課税資産の譲渡等が消費税の申告の対象となります」。年の途中からの部分だけが対象で、それ以前は対象外です。

登録番号と、公表されること

国税庁「No.6498」(注4)(注5)

登録申請書を提出し、税務署における審査を経て、適格請求書発行事業者として登録された場合は登録番号が通知されるとともに、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」において適格請求書発行事業者の登録番号や氏名または名称等の情報が公表されます。

登録番号の構成は、法人番号を有する課税事業者であれば「T+法人番号」となり、それ以外の課税事業者であれば「T+13桁の数字」となります。

個人事業主が登録すると、氏名が公表サイトに載ります。これは知っておいてください。屋号で商売をしている方でも、公表されるのは原則として本名です。

屋号を載せたい場合は別の手続きがあります。「個人事業者等で、『主たる屋号』や『主たる事務所の所在地』の公表を希望される場合は、別途『適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書』を提出する必要があります」。屋号は自動では出ません。出したいなら申し出が要ります。

売手としての義務

同上 適格請求書発行事業者の義務等(売手の留意点)

適格請求書発行事業者には、適格請求書を交付することが困難な一定の場合を除き、原則として、取引の相手方(課税事業者に限ります。)の求めに応じて、適格請求書等を交付する義務および交付した適格請求書等の写しを保存する義務が課されます。

義務は2つです。求められたら交付することと、交付したものの写しを保存すること。

後者が見落とされがちです。相手に渡して終わりではなく、こちら側にも控えを残す必要があります。手書きの領収書を渡している方は、複写式にするなどの対応が要ります。

登録をやめられるか

登録は取りやめることができますが、思い立ってすぐ、というわけにはいきません。

取りやめには「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します。ただし提出のタイミングによって、効力が生じるのが翌々課税期間になることがあります。年末に出せば翌年から、とは限りません。

さらに、免税事業者に戻れるかどうかは別の判定になります。登録をやめても基準期間や特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば、課税事業者のままです。

「とりあえず登録」がいちばん危ない

取引先に言われて深く考えずに登録し、あとから「思ったより納税が重い」と気づく——実際によくある流れです。登録は取引先との関係で決まる面がありますが、納税額は自分の売上と経費で決まります。両方を並べてから決めてください。

登録するかどうかの判断

結論から言えば、取引先が誰かでほぼ決まります。

主な取引先登録しないとどうなるか傾向
課税事業者(元請、法人、店舗)相手が仕入税額控除できず、実質的に負担が増える登録を求められやすい
免税事業者・一般の消費者相手はもともと仕入税額控除をしない登録の必要性は低い

建設業の一人親方のように元請が課税事業者である場合は、登録を求められることが多くなります。一方、お客様が一般の方中心の美容室やサロンでは、登録しなくても取引に影響が出にくいのが実際です。

ただし、登録しない相手との取引には経過措置が置かれています。すぐに全額が控除できなくなるわけではありません。そこは経過措置の記事にまとめました。

そして登録すると決めたなら、次は本則課税か簡易課税かの判断になります。事業区分によって納税額が大きく変わるので、みなし仕入率も一緒に確認してください。

出典

  1. 国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
  2. 国税庁「No.6501 納税義務の免除」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

取引先の構成を見れば、登録すべきかは判断できます。

相手が課税事業者ばかりなのか、一般消費者が中心なのか。それだけで結論が大きく動きます。登録した場合と免税のままの場合で、手元にいくら残るかを数字でお出しします。初回30分は無料です。