不動産
マイホームを売ったときの
3,000万円控除。
使えない相手がいます
自宅を売って利益が出ても、3,000万円までは税金がかかりません。しかも所有期間の長短を問いません。使える場面の広い、効果の大きい特例です。
ただし要件は細かく、売る相手や、その前後にどんな特例を使ったかで、まるごと使えなくなります。売ってからでは戻せないので、先に確認しておく価値があります。
どういう特例か
国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」概要
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
これを、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
「所有期間の長短に関係なく」というところが、この特例の大きいところです。譲渡所得の税率は所有期間5年で分かれますが、この控除にはその区別がありません。
効果の大きさを見ておきます。譲渡所得が3,000万円あった場合、長期譲渡(所有5年超)の税率は20.315%なので、この特例が使えるかどうかで税額がおよそ600万円変わります。
対象になる資産と、3年の期限
同上 特例の適用を受けるための要件(1)
イ 現に自分が住んでいる家屋
ロ 以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。なお、その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。)
ハ 上記イまたはロの家屋とともに売ったその敷地や借地権
すでに引っ越している場合は3年の期限があります。「住まなくなってから3年」ではなく、「3年を経過する日の属する年の12月31日まで」です。令和5年5月に引っ越したなら、令和8年5月ではなく令和8年12月31日までということになります。少し猶予があります。
括弧書きも実務では重要です。「住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません」。引っ越したあと人に貸していても、この特例は使えるということです。
取り壊して土地だけ売る場合
同上(1)ニ
(イ)その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(ロ)家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
更地にして売るなら、取り壊しから1年以内に契約する必要があります。そしてその間に駐車場として貸してはいけません。空き地にしておくのはもったいないと思って月極駐車場にすると、この特例が落ちます。
親子・夫婦への売却には使えません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
同上 特例の適用を受けるための要件(5)
親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと。
「特別の関係がある人」には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
範囲が広いことに注意してください。
- 生計を一にする親族——同居していなくても、仕送りなどで生計が一なら該当します
- 売った後その家屋で同居する親族——売ったあとに一緒に住むなら、たとえ生計が別でも該当します
- 内縁関係にある人
- 特殊な関係のある法人——自分が支配している会社に売る場合も含まれます
「身内に売って特例を使う」という形は、まず通らないと考えてください。相続対策や親族間の整理で自宅を動かすときは、この特例が使えない前提で税額を見積もる必要があります。
前年・前々年の実績も見られます
同上(2)(3)
(2)売った年の前年および前々年にこの特例…またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
(3)売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
この特例は3年に一度しか使えません。買換えの特例を使った直後も同様です。複数の物件を持っていて順に整理するときは、売る順番と年をずらす設計が要ります。
住宅ローン控除とは併用できません
同上(※)
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除…については、入居した年、その前年または前々年に、このマイホームを売ったときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。
また、入居した年の翌年から3年目までのいずれかの年中に、…資産を譲渡し、この特例の適用を受ける場合にも、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。
買い替えるときに直撃します。前の家を売って3,000万円控除を使うと、新しい家の住宅ローン控除が使えません。逆に、住宅ローン控除を受けたあと3年目までに前の家を売って特例を使うと、受けていた住宅ローン控除まで遡って取り消されます。
どちらが有利かは、譲渡益の大きさとローン残高の両方を並べないと決まりません。売買の順番を決める前に計算しておくべき論点です。
そもそも対象外の家屋
同上 適用除外
(1)この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
(2)居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
(3)別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋
「売る直前に住民票を移す」といった形は(1)で否認されます。実際に生活の本拠として使っていたかどうかが問われます。
売る前に決めておくこと
この特例は申告して初めて使えます。国税庁も「この特例の適用を受けるためには、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です」としています。控除の結果として税額がゼロになる場合でも、申告しなければ適用されません。
そして、売ってしまってから変えられないことがあります。売買契約の前に決めておきたいのは、この4つです。
- 買主が「特別の関係がある人」に当たらないか——当たるなら、この特例は使えません
- 前年・前々年に他の特例を使っていないか——使っていれば、今年は使えません
- 買い替えるなら、住宅ローン控除とどちらを取るか——両方は取れません
- 取得費の資料があるか——買ったときの契約書が見つからないと、売却価額の5%を概算取得費とすることになり、譲渡益が大きく出ます
4つ目は特に、古い家ほど問題になります。探すなら、売る前のうちです。
出典
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
売る前に一度、見せてください。
売買契約を結んでからでは選べなくなる特例があります。いつ住まなくなったか、その前後に他の特例を使っていないか、買主が誰か。これだけで使えるかどうかの見当がつきます。取得費が分からない場合の対応も含めてご相談ください。初回30分は無料です。