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人を雇って給与を払うと、
源泉徴収の義務が生まれます。
外注費なら不要です

ひとりでやっていたときは、税金の手続きは年に一度でした。人を雇った瞬間、毎月のことになります。

ただし、払う相手や自分の状況によっては、源泉徴収が要らない場合もあります。どこで義務が生まれ、どこでは生まれないのか。国税庁の記載で線を引いておきます。

公開 最終更新

源泉徴収義務者とは

国税庁「No.2502 源泉徴収義務者とは」概要

会社や個人が、人を雇って給与を支払ったり、税理士、弁護士、司法書士などに報酬を支払ったりする場合には、その支払の都度支払金額に応じた所得税および復興特別所得税を差し引くことになっています。
そして、差し引いた所得税および復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。
このように、所得税および復興特別所得税を差し引いて、国に納める義務のある者を源泉徴収義務者といいます。

ポイントは3つです。差し引くのは支払いの都度。納めるのは翌月10日まで。そして納める義務は払った側にあります。

ここを軽く見ると重くなります。源泉徴収を忘れていた場合、あとから請求されるのは受け取った本人ではなく、払った側です。すでに満額を渡してしまっていても、納付義務は消えません。加えて不納付加算税と延滞税がつきます。

誰が義務者になるのか

同上 源泉徴収義務者となる者

源泉徴収義務者となる者は、会社や個人だけではありません。
給与などの支払をする学校や官公庁、人格のない社団・財団なども源泉徴収義務者になります。

個人事業主も、人を雇って給与を払えば源泉徴収義務者です。規模は関係ありません。アルバイトひとりでも、家族に専従者給与を払う場合でも同じです。

法人はさらに単純で、ひとり法人でも役員報酬を払う以上は源泉徴収義務者になります。自分から自分に払う形でも、手続きとしては会社が個人から源泉徴収して納める、という建て付けです。

義務が生まれない場合

国税庁は、例外を2つ挙げています。

同上

ただし、常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与を支払っている個人は、その支払う給与や退職金について源泉徴収をする必要はありません。

また、給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う弁護士報酬などの報酬・料金については、源泉徴収をする必要はありません(例えば、会社員等である給与所得者が確定申告等のために税理士に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はありません。)。

2つ目が、実務では効きます。読み解くとこうです。

あなたの状況税理士や弁護士に報酬を払うとき
誰にも給与を払っていない個人事業主源泉徴収は不要
従業員や専従者に給与を払っている個人事業主源泉徴収が必要
法人源泉徴収が必要

ひとりでやっている個人事業主が税理士に報酬を払うとき、源泉徴収は要りません。ところが人をひとり雇った途端、税理士報酬からも源泉徴収する義務が生まれます。雇用と、士業への支払いが連動しているという、少し意外な仕組みです。

外注費なら源泉徴収は不要です

もうひとつ大きいのが、給与と外注費の違いです。

源泉徴収の対象は、給与と、所得税法204条に列挙された報酬・料金です。そのどちらにも当たらない外注費には、源泉徴収は要りません。建設業で一人親方に工事を発注する場合、それが請負であれば源泉徴収の対象外です。

ただし、ここは実態で判定されます。外注費のつもりで払っていたものが給与だと認定されれば、源泉徴収をしていなかったぶんを遡って納めることになります。しかも消費税の仕入税額控除まで否認されます。

判定基準は、専用の通達に書かれています

大工・左官・とび職などについては、国税庁が判定項目を示した法令解釈通達(課個5-5)を出しています。代替性、時間的拘束、指揮監督、危険負担、材料と用具の5つです。一人親方への支払いは外注費か給与かに原文を引いてまとめました。

なお、士業への報酬は外注費ではなく「報酬・料金」として別に列挙されているため、上で見たとおり給与の源泉徴収義務がある方は源泉徴収が必要です。デザイン料や原稿料も同じ枠です。「外注だから全部不要」ではありません。

毎月の納付を年2回にする特例

原則は毎月10日納付ですが、小規模なら緩和されます。

国税庁「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与の支給人員が常時10人未満である給与等の支払者が、給与等から源泉徴収した所得税の納期について年2回にまとめて納付するという特例の適用を受ける場合の手続です。
提出期限等:随時(原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。)

この特例を受けると、納付は年2回(1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日)になります。毎月10日の手続きが年2回に減るので、事務負担がかなり違います。

提出期限は「随時」ですが、適用されるのは提出した日の翌月に支払う給与からです。人を雇うと決めたら、給与を払い始める前に出しておくのがきれいな順番になります。

まとめる期間が長いぶん、金額も大きくなります

年2回にすると、1回あたりの納付額は半年ぶんです。納期の特例を使っている事業所で、7月10日に資金が足りないという相談は珍しくありません。預かっているお金なので使ってしまわないよう、別に置いておくことをおすすめします。

令和8年1月からの届出の変更

最後に、今年から変わった点です。

国税庁「No.2502 源泉徴収義務者とは」

国内において会社や個人が、新たに給与の支払を始めて、源泉徴収義務者となる場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を、給与支払事務所等を開設してから1か月以内に提出することになっています。

ただし、個人が新たに事業を始めたり…した場合には、「個人事業の開業等届出書」を提出することになっていますので「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要はありません(令和8年1月1日以後に開業した場合を除きます。)。

括弧書きが重要です。令和8年1月1日以後に開業した場合は、開業届では代替できません。給与支払事務所等の開設届出書を、開設から1か月以内に別途出す必要があります。

「開業届を出したから大丈夫」という以前の解説が、そのままインターネット上に残っています。今年から始める方は、この点だけ更新しておいてください。くわしくは開業のときに出す届出にまとめました。

人を雇うということは、税務の面では年に一度の申告から、毎月の手続きに変わるということです。源泉徴収と納付、年末調整、法定調書、給与支払報告書。ひとつずつは難しくありませんが、期限がそれぞれにあります。ここは外に出せる仕事なので、本業に時間を使うほうが合理的な場面が多いはずです。

出典

  1. 国税庁「No.2502 源泉徴収義務者とは」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2502.htm
  2. 国税庁「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

人に払い始める前に、一度整理しておきませんか。

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