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節税

小規模企業共済。
掛金の全額が所得控除になり、
出口は退職所得です

個人事業主に退職金はありません。その代わりに用意されているのが、この制度です。

掛金はその年に払った全額が所得控除になります。そして受け取るときは、給与でも事業所得でもなく退職所得として扱われます。入口で引いて、出口でも優遇される。数少ない、両側に効く仕組みです。

公開 最終更新

掛金は月1,000円から70,000円まで

制度を運営しているのは独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)です。掛金についてはこう説明されています。

中小機構「小規模企業共済とは」

月々の掛金は1,000〜70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額できます。また、その全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果があります。

年額にすると最大84万円です。500円単位で設定でき、あとから増減もできます。所得が読めない年は少なく始めて、伸びた年に増やす、という使い方ができます。

全額が所得控除になります

税務上の扱いは、国税庁が明快に書いています。

国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」

納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合には、その支払った金額について所得控除が受けられます。これを小規模企業共済等掛金控除といいます。

控除できる金額は、その年に支払った掛金の全額です。

上限も割合も付きません。払った全額です。生命保険料控除が最大12万円で頭打ちなのと比べると、枠の大きさが際立ちます。

効き方を見ておきます。所得控除なので、減る税額は掛金 × その方の税率です。

課税所得所得税+住民税の税率年84万円掛けた場合に減る税額
300万円20%約17.2万円
500万円30%約25.5万円
800万円33%約28.1万円

(復興特別所得税を含めた概算です。)所得が大きい方ほど効きます。逆に、課税所得がほとんど出ていない年に無理して掛けても、控除は使い切れません。

控除の対象になるのは、この制度だけではありません。国税庁は3つ挙げています。

同上 小規模企業共済等掛金控除の対象となる掛金

(1)小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
(2)確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金
(3)地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金

(2)がiDeCoです。小規模企業共済とiDeCoは、同じ「小規模企業共済等掛金控除」の欄に合算して書きます。ただし控除額に上限がないので、両方掛ければ両方とも全額が控除されます。iDeCoについてはiDeCoとNISA。iDeCoは出口の「10年ルール」に注意にまとめました。

出口は退職所得か、公的年金等の雑所得

所得控除の制度には、出口で課税されるものが多くあります。この制度も例外ではありませんが、課税のされ方が有利です。

中小機構「小規模企業共済とは」

共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」が可能です。一括受取りの場合は退職所得扱いに、分割受取りの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、税制メリットもあります。

受け取り方を選べること自体が、この制度の使いどころです。他に退職金がなければ一括で退職所得、公的年金が少なければ分割で雑所得。ご自身の他の収入と組み合わせて、有利なほうを選べます。

退職所得の計算

一括で受け取った場合の計算です。

国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

(収入金額(源泉徴収される前の金額)− 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得の金額

控除を引いたうえ、さらに2分の1になります。しかも他の所得と分離して計算されるので、その年の事業所得と合算されて税率が跳ね上がることもありません。

同上 退職所得控除額の計算の表

勤続年数20年以下:40万円 × A(80万円に満たない場合には、80万円)
勤続年数20年超:800万円 + 70万円 ×(A − 20年)

ここでいう年数は、小規模企業共済なら掛金を納付した期間です。30年掛けていれば控除額は800万+70万×10年で1,500万円。受け取る共済金がこの範囲なら、退職所得はゼロになります。

入口で全額控除して、出口でも課税されない。長く続けるほど、この構図が成立しやすくなります。

短く辞めると元本割れします

ここは正直に書いておきます。この制度は、短期で解約すると損をします。

共済金は、廃業や退職といった事由で受け取るのが本来の形です。それ以外の理由で自分から解約する場合(任意解約)は、掛金納付月数によって受け取れる割合が変わり、期間が短いと払った額を下回ります。

具体的な割合は、中小機構でご確認ください

任意解約の場合の支給割合は掛金納付月数に応じて細かく定められており、本記事では確認できた範囲を超えるため具体的な数字は書きません。加入前に必ず中小機構の資料でお確かめください。また、任意解約による解約手当金は退職所得ではなく一時所得として扱われる点も、あわせて確認が必要です。

つまりこれは、途中で引き出す前提の制度ではありません。生活資金や事業資金に余裕を残したうえで、長く続けられる金額から始めるのが正しい使い方です。掛金は500円単位で減額もできますが、減額した部分は運用されない扱いになるため、最初から無理のない額にしておくほうが結果的に有利です。

なお、資金が必要になったときのために貸付制度が用意されています。中小機構は「掛金の範囲内で事業資金の貸付制度をご利用いただけます」としています。解約する前に、まず貸付を検討するという順番があることは知っておいてください。

法人の役員が入るとき

法人の役員も加入できますが、掛金を払うのは会社ではなく個人です。

小規模企業共済等掛金控除は所得控除であって、法人の損金ではありません。役員報酬として受け取ったお金から個人が払い、その個人の確定申告(または年末調整)で控除します。会社の経費で落とす制度ではない、という点を混同しないでください。

事業の経費になるほうの共済は、経営セーフティ共済です。役割がまったく違うので、両方を並べて考えるのが実務的です。

手続きは、証明書の添付だけ

国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」手続き

この控除を受ける場合は、確定申告書の小規模企業共済等掛金控除の欄に記入するほか、支払った掛金の証明書…を確定申告書に添付または提示する必要があります。ただし、年末調整で控除された場合はその必要はありません。

年末に中小機構から届く控除証明書を添付するだけです。証明書を失くすと控除が受けられません。届いたら申告書類と一緒に保管してください。

出典

  1. 国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
  2. 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
  3. 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「小規模企業共済とは」
    https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/about/index.html

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

いくら掛けるのが妥当か、税率から逆算します。

所得が大きい年ほど控除の効きは大きくなりますが、生活の資金繰りとのバランスがあります。所得の見込みをお聞きすれば、無理のない掛金と、その場合に減る税額をお出しします。年末の駆け込みでも間に合う方法もあります。初回30分は無料です。