控除
ふるさと納税。
確定申告をすると
ワンストップ特例は無効になります
ふるさと納税をして、ワンストップ特例の申請書も出した。これで手続きは終わり——そう思っていた年に確定申告をすると、その申請は無効になります。
国税庁がはっきり書いています。医療費控除を受けたい、副業がある、住宅ローン控除の初年度。申告する理由ができた瞬間に、ふるさと納税の手続きもやり直しになります。
控除される金額の仕組み
国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」概要
ふるさと納税は、ご自身の選んだ自治体に対して寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税および個人住民税からそれぞれ控除が受けられる制度です。
控除は3つに分かれています。国税庁の書き方をそのまま整理すると、こうです。
| 計算 | |
|---|---|
| ① 所得税 | (ふるさと納税額 − 2,000円)を所得控除(寄附金控除) |
| ② 個人住民税(基本分) | (ふるさと納税額 − 2,000円)× 10%を税額控除 |
| ③ 個人住民税(特例分) | (ふるさと納税額 − 2,000円)×(100% − 10% − 所得税率) ①②で控除できなかった額を③で全額控除 |
③が「残りを全部引く」役割を持っているので、上限の範囲内なら自己負担は2,000円だけになります。①の所得税だけ見ると寄附額の一部しか戻っていないように見えますが、②③の住民税で回収される設計です。
ワンストップ特例が使える条件
同上 手続き
平成27年4月1日以後、確定申告が不要な給与所得者の方については、ふるさと納税先が5団体以内の場合に限り、ふるさと納税先団体に申請することにより、この寄附金控除を受けることができます。
条件は2つです。確定申告が不要な給与所得者であることと、寄附先が5団体以内であること。
「5団体」であって「5回」ではありません。同じ自治体に3回寄附しても1団体と数えます。逆に、6つの自治体に1回ずつなら6団体なので使えません。
確定申告をすると、申請は無効になります
国税庁は、このことを冒頭に太字で置いています。
同上(■「ふるさと納税ワンストップ特例」の申請書を提出された方へ)
確定申告を行う方は、ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となるため、ワンストップ特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算する必要があります。
ここが実務でいちばん事故が起きるところです。
年内はワンストップ特例で完結するつもりだった。ところが年が明けてから、医療費が10万円を超えていたことに気づいて医療費控除の申告をした。その瞬間、ワンストップ特例の申請はすべて無効になります。
そして本人にその自覚がないと、確定申告書にふるさと納税を書かないまま提出してしまいます。ワンストップは無効、申告書にも記載なし。結果、ふるさと納税の控除がまるごと消えます。
確定申告をする理由は、あとから発生します
医療費控除、住宅ローン控除の初年度、副業の所得、不動産所得、株の譲渡損失の繰越、年の途中で退職して年末調整をしていない。どれも、ふるさと納税をした時点では予定していなかったことが起こりえます。「今年は申告しない」と決めていても、状況が変われば前提が崩れます。
国税庁の書き方も念入りです。「ふるさと納税の有無にかかわらず、確定申告をする方(医療費控除や雑損控除を受けるなどのために確定申告や個人住民税の申告をする方などを含みます)が…寄附金控除の適用を受けるためには、ふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含めて確定申告をする必要があります」としています。
書き漏らすと、控除が消えます
確定申告書に書く場所は2か所あります。片方だけでは足りません。
同上 注意事項
確定申告書第二表の「寄附金控除に関する事項」の「寄附先の名称等」欄および「寄附金」欄にふるさと納税先団体名およびふるさと納税として寄附された金額を記載するとともに、「住民税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄にふるさと納税として寄附された金額も必ず記載してください。
所得税の確定申告書は、個人住民税の申告書も兼ねていますので、「住民税に関する事項」の…欄などが記載されていない場合には、個人住民税の賦課決定の際に控除されないこともありますのでご注意ください。
「寄附金控除に関する事項」だけ書いて「住民税に関する事項」を書き忘れると、所得税は控除されるのに住民税は控除されないという状態になりえます。
上で見たとおり、ふるさと納税の控除は大部分が住民税側(②と③)で戻ってきます。そちらが落ちると、実質的にはほとんど戻りません。会計ソフトや作成コーナーを使っていれば自動で転記されますが、手書きで作るときは要注意です。
上限は2つあります
「限度額」としてよく語られるのは③の上限ですが、国税庁の記載には上限が2か所出てきます。
- ①の所得控除——「所得控除の対象となる寄附金の額は、総所得金額等の40%が上限です」
- ③の住民税・特例分——「①および②により控除できなかった額を、③により全額控除(所得割額の20%を限度)します」
実務で先に当たるのはほぼ③です。この20%を超えた部分は、自己負担が2,000円では済みません。いわゆる「限度額」はここから逆算した金額を指しています。
そして限度額はその年の所得で決まります。年末に寄附するとき、まだその年の所得は確定していません。前年の源泉徴収票をもとにしたシミュレーションは、あくまで見込みです。年の途中で収入が下がった方、退職した方は、限度額も下がっている可能性があります。
間違えて申告してしまったら
救済の道もあります。
同上 手続き
ワンストップ特例の申請をした方が、誤って寄附金控除の適用を受けずに確定申告をした場合は、更正の請求により寄附金控除の適用を受けることができます(注2)。
(注2)寄附金控除を適用しても最終的な所得税等の額に異動がない場合は、更正の請求をすることができませんので、この場合は、お住まいの市区町村にご相談ください。
気づいた時点で更正の請求をすれば、取り戻せます。ただし注2に例外があって、所得税の額が変わらない場合は更正の請求ができません。この場合は税務署ではなく市区町村に相談することになります。
更正の請求には期限があります。放置していい話ではないので、心当たりがあれば早めに確認してください。
出典
- 国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
申告する理由がひとつでもあるなら、先にご相談ください。
副業がある、医療費控除を受けたい、住宅ローン控除の初年度。どれかに当たるなら、ワンストップ特例は使えません。ふるさと納税の分もまとめて申告書に入れます。書き漏らしがいちばん多いところなので、任せていただくのが確実です。初回30分は無料です。