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建設業

一人親方への支払いは外注費か給与か。
国税庁が示した5つの判定項目

一人親方に払ったお金を外注費として処理していたら、税務調査で給与だと言われた。建設業でいちばんよく起きるやり直しがこれです。

この論点には、国税庁が正面から出した通達があります。平成21年12月17日付の法令解釈通達で、そこに5つの判定項目が並んでいます。今日はその原文を読みます。

公開 最終更新

この論点には、専用の通達があります

外注費か給与かという話は、どの業種にもあります。ただ建設業については、国税庁がこの職種のためだけの通達を出しています。

平成21年12月17日付、課個5-5「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」。それまで昭和28年から使われてきた4本の通達をまとめて廃止し、置き換えたものです。趣旨にはこう書かれています。

課個5-5(趣旨)

大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得が所得税法第27条に規定する事業所得に該当するか同法第28条に規定する給与所得に該当するかについては、これまで、昭和28年8月17日付直所5-20…ほかにより取り扱ってきたところであるが、大工、左官、とび職等の就労形態が多様化したことなどから所要の整備を図るものである。

「就労形態が多様化した」。つまり昔の基準では割り切れなくなったから作り直したということです。裏を返せば、いまの現場は判定が難しいと国税庁自身が認めている、とも読めます。

対象になる職種

通達は最初に、誰の話なのかを定義しています。

課個5-5 1 定義

この通達において、「大工、左官、とび職等」とは、日本標準職業分類(総務省)の「大工」、「左官」、「とび職」、「窯業・土石製品製造従事者」、「板金従事者」、「屋根ふき従事者」、「生産関連作業従事者」、「植木職、造園師」、「畳職」に分類する者その他これらに類する者をいう。

板金、屋根ふき、造園、畳まで入っています。「その他これらに類する者」とあるので、内装や設備、電気工事といった職種も、この考え方の射程に入ると見るのが自然です。

原則は契約の性質で決まる

判定の原則は、通達の2に書かれています。

課個5-5 2 大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得区分

事業所得とは、自己の計算において独立して行われる事業から生ずる所得をいい、例えば、請負契約又はこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価は事業所得に該当する。また、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく役務の提供の対価は、事業所得に該当せず、給与所得に該当する。

請負なら事業所得、雇用なら給与所得。ここまでは素直です。問題は、現場の実態がそのどちらとも言い切れないときにどうするか。通達は続けてこう書いています。

同上

この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。

明らかでないときに見る5つの項目

ここが通達の核心です。原文をそのまま引きます。

課個5-5 2(1)〜(5)

(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。

(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。

(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。

(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。

(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。

読み方を、ひとつずつ足しておきます。

(1)代替性

その人が休んだとき、代わりの職人を自分で手配して出せるか。出せるなら請負に寄ります。「あなたでなければ困る、休むなら連絡しろ」という運用は、雇用に寄ります。

(2)時間的拘束

日当いくら、という払い方はここで効いてきます。報酬が時間を単位として計算されているかを、通達が名指ししているからです。ただし括弧書きに注目してください。「業務の性質上当然に存在する拘束を除く」。現場が朝8時に開いて夕方5時に閉まるから合わせている、という程度の拘束は勘定に入れない、という意味です。

(3)指揮監督

ここにも同じ括弧書きがあります。「業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く」。工程の順番を伝えることや、仕上がりの仕様を指示することは、請負でも当然あります。問題になるのは、作業の具体的なやり方まで細かく指示しているかどうかです。

(4)危険負担

いちばん見落とされる項目です。引き渡し前に台風で壊れたとき、そこまでの手間賃を請求できるか。請求できないなら請負——完成させて初めて対価が発生するのが請負だからです。逆に、何があっても働いた日数ぶんはもらえるなら、それは雇用の性質です。

(5)材料と用具

ここも括弧書きが効きます。「くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く」。つまり電動工具を自分で持っているかどうかは、決め手にはなりません。見られているのは、足場や大型機械、主要な材料を誰が負担しているかです。

5つのうち何個で決まる、という話ではありません

通達は「総合勘案して判定する」としています。3つ当てはまれば事業所得、といった点数式ではありません。また、この5項目が出てくるのは「区分が明らかでないとき」です。契約と実態からはっきり請負だと言えるなら、そもそもここまで降りてきません。

外注費か給与かで、何がそんなに変わるのか

支払う側にとっては、3つがまとめて動きます。

外注費として処理給与と認定された場合
源泉徴収不要必要。遡って納付し、不納付加算税と延滞税がつく
消費税の仕入税額控除できるできない(給与は課税仕入れではない)
社会保険加入義務なし加入義務が生じうる

とくに重いのが真ん中です。消費税は給与に対しては仕入税額控除ができません。年間1,000万円を外注費として処理していたなら、控除していた消費税額がそのまま追徴の対象になります。金額の桁が変わるのはここです。

受け取る側、つまり一人親方にとっても他人事ではありません。給与所得だと実額の経費が引けず、青色申告特別控除も使えません。道具代も交通費も、給与所得控除に含まれているものとして扱われます。

実際に見られるのは、書類より運用です

「業務委託契約書」という表題をつけただけでは、何も担保になりません。通達が挙げている5項目は、どれも実際にどう動いているかを問うものです。

調査で実際に見られやすいのは、こういうものです。

  • 請求書があるか。親方側が金額を計算して出しているか、元請が一方的に決めて振り込んでいるか
  • 払い方の単位。「一式いくら」か「日当×日数」か
  • 出面帳やタイムカードで管理していないか
  • 道具と材料の請求書が誰宛てになっているか
  • 元請の朝礼や安全書類で、従業員と同じ扱いになっていないか

ここを整えるのは、書類を作り直すことではなく、請負として実際に回すことです。逆に、実態が雇用なら、無理に外注費で通そうとするより給与として整理したほうが、あとの傷は小さくて済みます。

そして、どちらに寄せるかはこれから決められることです。すでに始まっている取引でも、契約と運用を組み直せば来期からは変えられます。過去の年について直すかどうかは、金額と年数を見て別に判断します。

出典

  1. 国税庁「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」課個5-5、平成21年12月17日
    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/091217/01.htm
  2. 国税庁「No.6505 簡易課税制度」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

契約書と、実際のやり方の両方を見せてください。

外注費で通るかどうかは、契約書の文面だけでは決まりません。現場での段取り、道具と材料の負担、請求のしかた。そこまで見て判断します。すでに指摘を受けている方も、これから人に出す方も、まずお聞かせください。初回30分は無料です。