税制改正
令和9年分から青色申告特別控除が最大75万円に。
10万円が0円になる人もいます
令和8年3月に成立した税制改正で、青色申告特別控除の区分が組み替えられました。適用は令和9年分(2027年)の所得税からです。
上がる人は最大75万円。下がる人は10万円まで落ち、条件によっては0円になります。そして不動産所得にだけ、別の例外が置かれました。国税庁が公表している資料を読みながら、順に整理します。
何がどう変わるのか
国税庁が令和8年4月に公表した資料に、改正の前後を並べた表があります。まずこれを見るのが早いです。
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| 前々年(2年前)の収入金額 | 改正前【簡易簿記】 | 改正後【簡易簿記】 | 改正後【複式簿記+e-Tax】 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円超 | 10万円 | 0円(控除対象外)※1 | 65万円 又は 75万円※1※2 |
| 1,000万円以下 | 10万円 | 10万円 | 65万円 又は 75万円 |
表の列が【簡易簿記】と【複式簿記+e-Tax】の2つしかないところが、この改正の要点です。複式簿記で帳簿をつけていても、紙で申告していれば「複式簿記+e-Tax」には当たりません。いまの55万円という区分は、この表のどこにも居場所がありません。
上がる人:最大75万円になる
複式簿記で記帳し、期限内にe-Taxで申告すれば65万円。ここまでは今と同じ要件です。
75万円になるのは、そこにもう一段の要件が加わったときです。国税庁は、こう書いています。
国税庁「令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?」(※2)
改正後の65万円控除の要件(複式簿記+e-Tax)に加えて、請求書データ等との自動連携や訂正削除履歴の記録など一定の要件を満たす優良な電子帳簿を作成及び保存している場合には、最大75万円の控除を受けることができます。
「請求書データ等との自動連携」という言葉が入っているところが実務的には重いです。銀行口座やクレジットカード、請求書のデータを会計ソフトに自動で取り込む形にしておくこと、そして訂正や削除の履歴が残る設定にしておくことが求められます。
会計ソフトを使っていれば機能としては備わっていることが多いのですが、設定が正しく入っているかどうかは別の話です。手入力で運用していると、機能があっても要件を満たさないことがあります。
届出書について、現行制度で分かっていること
いまの65万円控除には2つのルートがあり、①仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存する、②e-Taxで期限内に提出する、のどちらかを満たせば足ります。このうち①のルートを選ぶ場合には、届出書が必要だと国税庁が明記しています。
「令和4年分以後の青色申告特別控除(65万円)の適用を受けるためには、その年分の事業における仕訳帳および総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付けおよび保存を行い、一定の事項を記載した届出書を提出する必要があります」(国税庁「No.2072 青色申告特別控除」)
令和9年からの75万円は、優良な電子帳簿が要件に加わる形です。したがって同様に届出書が必要になると考えるのが自然ですが、改正後の取扱いを示した資料は確認できていないため、この記事では断定しません。準備を始めるなら、届出が要るものとして見ておくほうが安全です。
下がる人:55万円の区分がなくなる
いま、複式簿記で記帳して紙で申告している方は55万円の控除を受けています。改正後の表には、その区分がありません。e-Taxを使わないのであれば、複式簿記でつけていても10万円です。
55万円から10万円へ。45万円ぶん減ります。所得税・住民税・国民健康保険料を合わせると、年間で十数万円の差になる方が多いはずです。
やることは、e-Taxへの移行と会計ソフトでの記帳です。難しい話ではありませんが、電子証明書やマイナンバーカードの準備、ソフトの初期設定など、初回だけは手間がかかります。
控除が0円になる人がいます
表の左上、前々年の収入が1,000万円を超えていて、簡易簿記のままの方です。改正前は10万円の控除がありましたが、改正後は0円(控除対象外)と明記されています。「減る」ではなく「なくなる」です。
判定に使うのは前々年(2年前)の収入金額で、その年の収入ではありません。令和9年分の申告なら令和7年分の収入で見ることになります。つまり、いま手元にある数字ですでに決まっています。
この区分に当たる方が取るべき道は一つで、複式簿記に移行してe-Taxで申告することです。0円と65万円のあいだには、それだけの開きがあります。
不動産所得だけに置かれた例外
ここが、あまり書かれていないところです。同じ資料の※1に、不動産所得についてだけの例外があります。
国税庁「令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?」(※1)
不動産所得に関しては、収入区分が1,000万円超である場合、事業的規模の方のみ控除対象外となり、業務的規模の方は、改正前と同様に最大10万円の控除を受けることができます。
なお、業務的規模の方は、複式簿記に移行したとしても、控除額は簡易簿記の場合と同様に最大10万円となります。
読み取れることは2つあります。
- 不動産所得で業務的規模(事業的規模に届いていない)の方は、前々年の収入が1,000万円を超えていても控除が0円になることはなく、これまでどおり最大10万円が使えます
- ただしその方は、複式簿記に移行しても控除額は最大10万円のままです。65万円も75万円も取れません
つまり賃貸オーナーの方にとって、この改正でいちばん効いてくるのは電子化ではなく、そもそも事業的規模に当たるかどうかです。5棟10室という基準の話が、控除額に直結してきます。
事業的規模かどうかを先に確かめてください
「令和9年から最大75万円」という見出しだけを見て会計ソフトの複式簿記に切り替えても、業務的規模のままなら控除額は10万円で変わりません。手間だけが増えます。判定の基準は不動産所得の「事業的規模」(5棟10室)とはにまとめました。
令和8年分は今のまま。準備をするなら今年です
適用は令和9年分の所得税からです。令和8年分(2026年分)の申告、つまり令和9年3月に出す申告は、現行の制度のままです。
言い換えると、形を整える時間が1年あります。e-Taxの利用開始手続き、会計ソフトの導入と設定、複式簿記への移行。どれも年明けに慌ててやることではありません。
とくに、これまで紙で申告してきた方は、電子証明書の取得やマイナンバーカードの準備に時間がかかることがあります。3月に入ってから動き出すと、その年に間に合わないこともあります。
出典
- 国税庁「令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?」(令和8年4月)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0026004-012.pdf(PDF) - 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
この改正で、ご自身がどちらに動くか。
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