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経費

家族に払う給与を経費にする。
青色事業専従者給与の
要件と期限

配偶者に手伝ってもらっている。息子に現場に入ってもらっている。その給与を経費にできるかというと、原則としてできません。

ただし青色申告なら、届出をすることで経費にできます。そしてその届出には3月15日という期限があります。要件を、国税庁の記載で確認します。

公開 最終更新

原則は「経費にならない」

まず出発点です。

国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」概要

納税者と生計を一にしている配偶者その他の親族が納税者の経営する事業に従事している場合、納税者がこれらの人に給与を支払うことがあります。これらの給与は原則として必要経費にはなりませんが、次のような特別の取扱いが認められています。

身内への支払いで所得を分散できてしまうと、税率の低いところに寄せ放題になります。それを防ぐために、原則は払っても経費にならないという強い規定が置かれています。同じ理屈で、家族に払う地代家賃も経費になりません。

その例外が、青色申告者の「青色事業専従者給与」と、白色申告者の「事業専従者控除」です。

青色事業専従者給与の4つの要件

国税庁は要件を4つに分けて示しています。

同上 青色事業専従者給与

(1)青色事業専従者に支払われた給与であること。
 イ 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
 ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
 ハ その年を通じて6か月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。

(2)「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること。

(3)届出書に記載されている方法により支払われ、かつ、その記載されている金額の範囲内で支払われたものであること。

(4)青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。
 なお、過大とされる部分は必要経費とはなりません。

実務でつまずくのは、(1)ハと(4)です。

「専ら従事」の壁

年を通じて6か月を超えて、専らその事業に従事していること。ここが厳しい。

他に勤めに出ている配偶者は、原則として「専ら従事」に当たりません。学校に通っている子も同様です。週末だけ手伝っている、繁忙期だけ入っている、という形では要件を満たしません。

「相当な金額」の壁

届出に書いた金額の範囲内で払っていても、それが労務の対価として過大なら、過大な部分は経費になりません。

判断のよりどころになるのは、その仕事を他人に頼んだらいくら払うか、です。事務作業を週20時間お願いしているなら、同じ仕事をパートに頼んだときの相場が目安になります。「配偶者だから月50万円」という決め方には根拠がありません。

届出の期限は3月15日

同上

提出期限は、青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内)までです。

その年の3月15日までです。翌年の申告のときではありません。令和8年分の給与を経費にしたいなら、令和8年3月15日までに出しておく必要があります。

括弧書きにも救いがあります。年の途中で新たに専従者がいることとなった場合は、その日から2か月以内。結婚した、子が学校を卒業して事業に入った、といった場合はここに当たります。

そして届出には、氏名・職務の内容・給与の金額・支給期を書きます。あとから金額を上げたいときは、変更届出書を遅滞なく出す必要があります。届け出た金額を超えて払っても、超えた部分は経費になりません。そのため、実務では少し余裕を持たせた金額で届け出ておくことが多くあります。

白色の場合は86万円と50万円

青色申告をしていない場合は、届出のかわりに定額の控除があります。

同上 事業専従者控除

事業専従者控除額は、次のイまたはロの金額のいずれか低い金額です。
イ 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ事業専従者一人につき50万円
ロ この控除をする前の事業所得等の金額を事業専従者の数に1を足した数で割った金額

ロの計算を忘れがちです。所得が150万円で配偶者が専従者なら、150 ÷ 2 = 75万円。86万円ではなく75万円が上限になります。所得が小さいと、86万円まで取れません。

青色なら実際に払った金額(相当な範囲で)が経費になるのに対し、白色は最大86万円で頭打ち。家族に働いてもらっているなら、青色にする理由がここにもあります。

不動産所得は、事業的規模のときだけ

賃貸をしている方は、この注記を必ず確認してください。

同上(注2)

不動産所得の場合、青色申告者に係る青色事業専従者給与または白色申告者に係る事業専従者控除額については、不動産貸付けが事業として行われている場合は適用がありますが、それ以外の場合には適用がありません。

いわゆる事業的規模(5棟10室)に届いていなければ、専従者給与も専従者控除も使えません。青色申告特別控除が10万円にとどまるだけでなく、ここも落ちます。

賃貸オーナーにとって事業的規模の判定が重いのは、こうした制度がまとめて連動しているからです。

使う前に確かめておきたいこと

専従者給与は効果の大きい制度ですが、そのぶん副作用もあります。決める前に見ておきたい点を挙げます。

専従者になると、配偶者控除・扶養控除は使えません

国税庁は「青色申告者の事業専従者として給与の支払を受ける人または白色申告者の事業専従者である人は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれません」としています。給与を経費にするかわりに、控除のほうを失うということです。払う金額が小さいと、差引で不利になることがあります。

ほかに、実務上あらかじめ計算しておきたいのはこの3つです。

  • 受け取る側の税金と社会保険。給与として受け取る以上、その人に所得税・住民税がかかります。金額によっては社会保険の扶養からも外れます。世帯全体で見ないと判断できません
  • 源泉徴収と年末調整の手間。専従者に給与を払えば、源泉徴収と納付、年末調整、法定調書の提出が発生します。年1回の申告だけで済んでいた方には、新しい事務が増えます
  • 実態を残しておくこと。何の仕事を、どれくらいの時間しているのか。タイムカードや業務日報のような記録があると、「相当な金額」の説明が通りやすくなります。名前だけの専従者は、否認の対象になります

そのうえで、世帯全体の手取りが増えるかどうかを先に計算しておくのが順番です。制度が使えることと、使ったほうが得であることは別の話です。

出典

  1. 国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm
  2. 国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

いくらが「相当」かは、仕事の中身で決まります。

ご家族にどんな仕事をお願いしているか、どれくらいの時間かをお聞きすれば、無理のない金額をご提案できます。届出の作成と提出もお引き受けします。期限があるので、考えている段階でご相談ください。初回30分は無料です。