不動産
中古物件の耐用年数。
簡便法は買った年にしか使えません
中古の物件を買うと、法定耐用年数より短い年数で償却できることがあります。築22年超の木造なら4年。同じ建物価格でも、1年あたりの減価償却費が5倍以上変わります。
ただしこの簡便法には、国税庁がはっきり書いている制約があります。なかでも重いのが、買った年にしか算定できないという一文です。
原則は「見積り」、困難なら「簡便法」
順番を間違えている説明をよく見かけるので、先に確認しておきます。国税庁の書き方はこうです。
国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」概要
中古資産…を取得して事業の用に供した場合には、その中古資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によることができます。
ただし、その使用可能期間の年数を見積もることが困難である場合には、簡便法により算定した年数によることができます。
原則は実際に何年使えるかを見積もることで、簡便法はそれが難しいときの代替です。実務では見積りが困難な場合がほとんどなので簡便法を使いますが、簡便法が第一選択なのではないという建て付けは押さえておいてください。
簡便法の計算
同上 計算方法・計算式
1 法定耐用年数の全部を経過した資産
その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数
2 法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に、経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数
なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。
木造住宅の法定耐用年数は22年です。当てはめると、こうなります。
| 築年数 | 計算 | 耐用年数 | 建物1,000万円の年間償却費 |
|---|---|---|---|
| 22年超(全部経過) | 22 × 20% = 4.4 | 4年 | 250万円 |
| 15年 | (22−15) + 15×20% = 7 + 3 = 10 | 10年 | 100万円 |
| 10年 | (22−10) + 10×20% = 12 + 2 = 14 | 14年 | 約71万円 |
| 新築 | — | 22年 | 約45万円 |
国税庁も具体例を出しています。
同上 具体例
法定耐用年数が30年で、経過年数が10年の中古資産の簡便法による見積耐用年数
1 30年 - 10年 = 20年
2 10年 × 20% = 2年
3 耐用年数 20年 + 2年 = 22年
買った年にしか算定できません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。同じページの注書きです。
同上(注)
中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度においてすることができるものですから、その事業年度において耐用年数の算定をしなかったときは、その後の事業年度において耐用年数の算定をすることはできません。
買って賃貸を始めた年に簡便法で計算しておかなければ、翌年以降にさかのぼって使うことはできません。「法定耐用年数の22年で申告していたけれど、4年でよかったと気づいた」——このとき、後から変えることはできない、と国税庁は書いています。
これは制度の設計として厳しい部分です。初年度の申告のしかたが、その物件を持っている間ずっと効き続けます。
買った年の申告が、いちばん大事です
中古物件を買った年は、登記費用や不動産取得税、仲介手数料をどう扱うか、建物と土地をどう按分するか、そして耐用年数をどうするか。判断が集中します。そしてそのうちいくつかは、その年にしか決められません。買った年だけでも見ておく価値があるのは、このためです。
資本的支出が大きいと使えません
もうひとつ、購入直後にリフォームをする方が引っかかりやすい制約です。
同上 概要
その中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の取得価額の50%に相当する金額を超える場合は、簡便法による耐用年数の算定はできません。
(注)その中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の再取得価額(中古資産と同じ新品のものを取得する場合のその取得価額をいいます。)の50パーセントに相当する金額を超える場合には、法定耐用年数によることになります。
2段構えになっています。整理するとこうです。
| リフォーム(資本的支出)の規模 | 使える耐用年数 |
|---|---|
| 取得価額の50%以下 | 簡便法が使える |
| 取得価額の50%超、再取得価額の50%以下 | 簡便法は使えない。使用可能期間の見積りによる |
| 再取得価額の50%超 | 法定耐用年数による |
築古の物件を安く買って大規模にリフォームする、という買い方をすると、ここに当たることがあります。建物800万円で買って、500万円かけて直した——資本的支出が取得価額の50%(400万円)を超えるので、簡便法は使えません。
ここで効いてくるのが、修繕費と資本的支出の区分です。同じ500万円でも、原状回復にあたる部分は修繕費であって資本的支出ではありません。工事の中身を分けられるかどうかが、耐用年数にまで波及します。
相続や贈与で引き継いだ場合
簡便法は「取得して事業の用に供した場合」の規定です。相続や贈与で引き継いだ物件には使えません。
相続で取得した減価償却資産は、前の所有者の取得価額・耐用年数・未償却残高をそのまま引き継ぎます。親が新築で建てて10年使ったアパートを相続したなら、こちらも22年の耐用年数の続きから償却することになります。築10年だから14年、とはなりません。
ここは間違えやすいところです。「中古だから短くできる」と思って計算し直してしまうと、後で直すことになります。
短くすれば得、とも限りません
最後に、方向を逆から見ておきます。耐用年数を短くすると、毎年の経費は大きくなります。ただし総額は変わりません。変わるのは、いつ経費になるかだけです。
短くすることで起きることを、3つ挙げます。
- 4年で終わったあと、経費が消えます。5年目からは減価償却費がゼロになり、同じ家賃収入に対して所得が跳ね上がります。ローンの元本返済は続いているのに経費だけ無くなる、という状態になります
- 売ったときの譲渡所得が大きくなります。償却を進めたぶん帳簿価額が下がるので、同じ値段で売っても譲渡益が大きく出ます
- 所得が赤字になっても、使い切れないことがあります。他の所得と損益通算できますが、通算しきれなければ繰り越すことになります。ただし土地取得のための借入金利子に対応する部分の損失は、通算の対象から外れます
短くするのが有利なのは、その4年間に他の所得が大きく、かつ償却が終わったあとの出口が描けている場合です。持ち続けるのか、売るのか、次を買うのか。耐用年数の話は、実は出口戦略の話です。
出典
- 国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm - 国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1379.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
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