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インボイス

インボイスの経過措置。
8割、5割、
そして令和11年10月

インボイスの登録をしていない相手から仕入れると、消費税が引けない。そう理解している方が多いのですが、いますぐ全額が引けなくなるわけではありません。

国税庁は経過措置を置いています。80%、そのあと50%。終わるのは令和11年9月30日です。いま何割引けるのか、いつ何が変わるのかを整理します。

公開 最終更新

なぜ経過措置があるのか

インボイス制度の下では、原則としてこうなります。

国税庁「No.6498」仕入税額控除の要件(買手の留意点)

適格請求書等保存方式においては、免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る消費税額を控除することができなくなりますが、一定の要件を満たす場合には、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間は、仕入税額相当額の一定割合(80%・50%)を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。

制度が始まった瞬間に全額引けなくなると、免税事業者との取引が一斉に見直されます。その衝撃を和らげるために、6年かけて段階的に引き下げる設計になっています。

80%と50%、切り替わる時期

国税庁の記載にある期間と割合を整理すると、こうなります。

期間控除できる割合
令和5年10月1日〜80%
〜令和11年9月30日50%
令和11年10月1日以後控除できません(0%)

金額で見ると、影響がはっきりします。登録していない外注先に年間1,100万円(税込)を払っている場合で計算してみます。

控除割合控除できる消費税額本来との差
100%(登録している相手)100万円
80%80万円20万円の負担増
50%50万円50万円の負担増
0%0円100万円の負担増

同じ相手に同じ金額を払っていても、期間が進むにつれて手元から出ていく消費税が増えます。これは値上げでも増税でもなく、控除できる割合が下がることによる自動的な変化です。

令和6年10月から入った10億円の上限

経過措置には、あとから制限が加わっています。

同上

ただし、令和6年10月1日以降に開始する課税期間から、一の免税事業者等から行うその経過措置の対象となる課税仕入れの税込金額の合計額が年または事業年度で10億円を超える場合には、その超え…

読み方の要点は「一の免税事業者等から」という部分です。全体の合計ではなく、一者あたりで年10億円を見ます。

ひとり法人や個人事業主には縁のない規模ですが、制度としてはこういう網がかかっている、ということです。大口の取引がある場合は確認が要ります。

経過措置を使うための要件

経過措置は自動では適用されません。国税庁は「一定の要件を満たす場合には」と書いています。

実務上、押さえるべきは次の2つです。

  • 帳簿に、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載すること。「80%控除対象」といった記載が必要です。会計ソフトなら税区分の選択で対応します
  • 区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等を保存すること。相手が登録していなくても、請求書や領収書は要ります

ここを整えていないと、経過措置の割合すら引けません。「登録していない相手だから」と請求書をもらわずに済ませてしまうのが、いちばん損な形です。

令和11年10月以降

経過措置が終わると、登録していない相手からの仕入れはまったく控除できなくなります。

ここで起きることを、立場ごとに整理しておきます。

立場令和11年10月以降に起きること
登録していない事業者課税事業者の取引先から、単価の見直しか登録を求められやすくなる
登録していない相手に払う側払った消費税がまるごと自社の負担になる
お客様が一般の方中心の事業者相手は仕入税額控除をしないため、影響は小さい

3行目が重要です。経過措置の終了が全員に効くわけではありません。美容室や飲食店のように一般のお客様が中心なら、令和11年10月を過ぎても取引に大きな変化は起きにくいはずです。

いまから考えておくこと

期限まで時間があるように見えますが、準備が要るのは「登録するかどうか」ではなく「単価をどうするか」のほうです。

払う側から見れば、控除できない分は原価の増加です。50%の期間なら、税込110万円の外注に対して5万円ぶん余計に負担していることになります。これを誰が負担するのかは、価格の話です。

実務として先にやっておく価値があるのは、この2つです。

  1. 外注先・仕入先の登録状況を一覧にする。国税庁の公表サイトで登録番号を確認できます。把握していない事業者が、思ったより多いはずです
  2. 登録していない相手への年間支払額を集計する。そこに控除できない割合を掛ければ、いくらの負担かが出ます。金額が小さければ何もしなくていい、という判断もできます

そのうえで、単価の交渉が必要なほどの金額なのかを判断します。数字を出さずに「インボイス対応」と言い出すと、必要のない値下げ要求や取引の見直しにつながります。

相手に登録を強要することはできません

取引先に対して、登録しないことを理由に一方的に取引を打ち切る、著しく低い単価を強いるといった対応は、独占禁止法や下請法の問題になりえます。交渉として単価を話し合うことと、一方的に押し付けることは別です。公正取引委員会も、この点について注意喚起を出しています。

出典

  1. 国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

外注先の登録状況を、一度洗い出しませんか。

誰が登録していて、誰がしていないのか。把握できていない事業者が実際には多くあります。金額を集計すれば、控除できない額がいくらになるかが見えます。単価の交渉が必要かどうかも、そこから判断できます。初回30分は無料です。