副業
雑所得は3つに分かれます。
副業の収入が300万円を超えると書類の保存、1,000万円を超えると収支内訳書
副業の原稿料、シェアリングエコノミーの収入、年金。これらはみな「雑所得」ですが、確定申告書の中では3つに分けて計算します。
そして令和4年分から、副業などの業務に係る雑所得には、収入の規模に応じた義務が付きました。300万円と1,000万円。この2つの線を、国税庁のタックスアンサーNo.1500で確認します。
この記事の要点
雑所得は「公的年金等」「業務に係るもの」「その他」の3区分で計算します。副業などの業務に係る雑所得は、前々年の収入が300万円超なら領収書等の保存義務、1,000万円超なら収支内訳書の添付が必要。300万円以下なら現金主義の特例が選べます。雑所得の赤字は他の所得と通算できません。国税庁タックスアンサーNo.1500をもとに整理しました。
雑所得とは:9つの所得に当たらないもの
所得税の所得は10種類に分かれています。雑所得は、そのうち利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時の9つのどれにも当たらない所得です。「その他」の受け皿にあたります。
国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
例として挙がっているのは、公的年金、個人間の貸付けの利子、副業の原稿料やシェアリングエコノミーの収入です。会社員の副業収入の多くは、事業と言えるほどの規模と継続性がなければ、ここに入ります。事業所得との分かれ目は別の記事で書きました。
3つの区分:公的年金等・業務・その他
雑所得の金額は、次の3つを別々に計算して合計します。
国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」
(1) 公的年金等
収入金額 - 公的年金等控除額 = 公的年金等の雑所得
(2)業務に係るもの
総収入金額 – 必要経費 = 業務に係る雑所得
(注)業務に係るものとは、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものをいいます。
(3)(1)、(2)以外のもの
総収入金額 - 必要経費 = その他の雑所得
| 区分 | 計算 | 例 |
|---|---|---|
| 公的年金等 | 収入金額 − 公的年金等控除額 | 国民年金・厚生年金、企業年金など |
| 業務に係る雑所得 | 総収入金額 − 必要経費 | 副業の原稿料、ネット販売、シェアリングエコノミーなど「営利を目的とした継続的なもの」 |
| その他の雑所得 | 総収入金額 − 必要経費 | 個人年金、非営業用貸金の利子、暗号資産の売却益など |
この3区分は、確定申告書の記載欄がそれぞれ分かれています。特に「業務に係る雑所得」は、次に書く300万円・1,000万円のルールの対象になる区分ですので、副業収入はここに書くのだと覚えておいてください。「業務」とは、営利を目的とした継続的なものです。一度きりの臨時収入は「その他」です。
前々年の収入が300万円超:領収書などの保存義務
令和4年分以後、業務に係る雑所得がある方で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類を保存しなければなりません。
国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」
令和4年分以後の所得税において、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類を保存する必要があります。
現金預金取引等関係書類とは、業務に関して作成・受領した請求書や領収書などのうち、現金の受け払いや預貯金の入出金の際に作られたものです。自分が発行した請求書の控えも含みます。要するに、お金の動きの証拠になる書類を残す義務です。
判定に使うのは「前々年分」の収入です。今年の収入ではありません。2年前の副業収入が300万円を超えていたなら、今年は書類を保存する年です。逆に、今年初めて300万円を超えても、今年の保存義務はありません(2年後に義務が生じます)。ただし、いずれ必要になるものですから、超えた年から保存しておくのが実務的です。
前々年の収入が1,000万円超:収支内訳書の添付
前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える方は、確定申告書に、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)を添付する必要があります。
国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」
業務に係る雑所得を有しており、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える方が確定申告書を提出する場合には、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)の添付が必要になります。
収支内訳書は、白色申告の事業所得の方が付ける書類と同じ形式です。収入と経費の内訳を科目ごとに書きます。これを付けるということは、経費の集計を科目別にしておく必要があるということです。収入が1,000万円を超える規模なら、雑所得のままでいるより、帳簿をつけて事業所得として青色申告するほうが有利なことがほとんどです。雑所得には青色申告特別控除も、赤字の繰越しもありません。
300万円以下なら現金主義の特例が選べる
前々年分の収入金額が300万円以下の方は、業務に係る雑所得の収入と経費を、その年に実際に入金した金額と支払った金額で計算できます。これが現金主義の特例です。
国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」
その年の前々年分の収入金額が300万円以下である方は、業務に係る雑所得の金額の計算上総収入金額および必要経費に算入すべき金額は、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができます(いわゆる現金主義の特例)。ただし、この特例を受けるには、確定申告書にこの特例を受ける旨を記載しなければなりません。
原則は発生主義で、12月に納品して翌年1月に入金した売上は12月の収入です。現金主義なら1月の収入にできます。売掛金や未払金を管理しなくてよいので、小規模な副業では手間が減ります。ただし、確定申告書にこの特例を受ける旨を記載することが条件です。書き忘れると原則(発生主義)で計算したものとして扱われます。
雑所得の赤字は、ほかの所得と通算できない
雑所得の計算で赤字が出ても、その赤字を給与所得などほかの所得から差し引くことはできません。
国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」
雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできません。
ここが事業所得との最大の違いです。事業所得の赤字は給与所得と通算でき、源泉徴収された所得税が還付されます。雑所得の赤字は、その年に切り捨てられるだけです。副業を始めた年に経費がかさんで赤字になった場合、雑所得なら何の効果もありません。「副業の赤字で給与の税金を取り戻す」という話は、事業所得として認められることが前提です。
なお、雑所得の3区分の中では通算できます。業務に係る雑所得の赤字を、公的年金等の雑所得から引くことは可能です。
源泉徴収と、申告できない金融類似商品
公的年金や原稿料・講演料は、支払いのときに源泉徴収されます。確定申告で精算しますので、源泉徴収されたぶんが払いすぎなら還付されます。
一方、定期積金の給付補てん金や抵当証券の利息などの金融類似商品の収益は、一律20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、地方税5%)で源泉徴収されて課税が終わります(源泉分離課税)。これらは確定申告をすることができません。
国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」
定期積金の給付補てん金、抵当証券の利息など、いわゆる金融類似商品の収益については、その支払の際に一律20.315パーセント(所得税および復興特別所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率で源泉徴収が行われます。これらの所得については、源泉分離課税が適用されますので、確定申告を行うことはできません。
令和9年1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税の税率が1.1%に引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が併せて源泉徴収されることになっています。税率の合計は変わりませんが、内訳が変わります。
よくある質問
雑所得とはどんな所得ですか
所得税の所得は10種類に分かれています。雑所得は、そのうち利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時の9つのどれにも当たらない所得です。「その他」の受け皿にあたります。→ 本文で読む
雑所得の3つの区分とは何ですか
この3区分は、確定申告書の記載欄がそれぞれ分かれています。特に「業務に係る雑所得」は、次に書く300万円・1,000万円のルールの対象になる区分ですので、副業収入はここに書くのだと覚えておいてください。「業務」とは、営利を目的とした継続的なものです。一度きりの臨時収入は「その他」です。→ 本文で読む
副業の収入が300万円を超えると何が必要になりますか
令和4年分以後、業務に係る雑所得がある方で、 その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える 方は、現金預金取引等関係書類を保存しなければなりません。 現金預金取引等関係書類とは、業務に関して作成・受領した請求書や領収書などのうち、現金の受け払いや預貯金の入出金の際に作られたものです。自分が発行した請求書の控えも含みます。要するに、 お金の動きの証拠になる書類 を残す義務です。→ 本文で読む
副業の収入が1,000万円を超えると確定申告で何が変わりますか
前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が 1,000万円を超える 方は、確定申告書に、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)を添付する必要があります。 収支内訳書は、白色申告の事業所得の方が付ける書類と同じ形式です。収入と経費の内訳を科目ごとに書きます。これを付けるということは、経費の集計を科目別にしておく必要があるということです。 収入が1,000万円を超える規模なら、雑所得のままでいるより、帳簿をつけて事業所得として青色申告するほうが有利なことがほとんどです。 雑所得には青色申告特別控除も、赤字の繰越しもありません。→ 本文で読む
雑所得の現金主義の特例とは何ですか
前々年分の収入金額が 300万円以下 の方は、業務に係る雑所得の収入と経費を、その年に実際に入金した金額と支払った金額で計算できます。これが現金主義の特例です。 原則は発生主義で、12月に納品して翌年1月に入金した売上は12月の収入です。現金主義なら1月の収入にできます。売掛金や未払金を管理しなくてよいので、小規模な副業では手間が減ります。ただし、 確定申告書にこの特例を受ける旨を記載 することが条件です。書き忘れると原則(発生主義)で計算したものとして扱われます。→ 本文で読む
副業が赤字のとき、給与所得と相殺できますか
雑所得の計算で赤字が出ても、その赤字を給与所得などほかの所得から差し引くことはできません。 ここが事業所得との最大の違いです。事業所得の赤字は給与所得と通算でき、源泉徴収された所得税が還付されます。雑所得の赤字は、その年に切り捨てられるだけです。副業を始めた年に経費がかさんで赤字になった場合、雑所得なら何の効果もありません。「副業の赤字で給与の税金を取り戻す」という話は、事業所得として認められることが前提です。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1500 雑所得」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
副業の収入が増えてきた方は、事業所得にするかどうかも含めてご相談ください。
雑所得のまま申告するか、帳簿をつけて事業所得にするか。収入の規模と手間、税額の違いを並べてお示しします。
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