贈与
親からお金を借りるときの贈与税。
「ある時払いの催促なし」は借入ではなく贈与です
住宅の頭金、開業資金、急な出費。親から借りる場面は多くあります。借りたお金には贈与税はかかりません。ただし、それが本当に借りたお金であれば、です。
国税庁は、親子間の貸し借りを贈与と見る基準を、タックスアンサーNo.4420で示しています。短い文章ですが、実務で問題になる点がすべて入っています。
この記事の要点
親子や祖父母と孫の間の金銭の貸し借りは、返済能力や返済状況から見て本当の貸借と認められれば贈与になりません。無利子なら利子相当額が贈与と扱われる場合があり、「ある時払いの催促なし」「出世払い」や、実質は贈与なのに形だけ貸借にしたものは、借入金そのものが贈与です。国税庁タックスアンサーNo.4420をもとに、贈与と見られないための整理をしました。
本当の貸借なら、借入金は贈与にならない
親と子、祖父母と孫のように特殊な関係にある人の間の金銭の貸借でも、借入金の返済能力や返済状況から見て真に金銭の貸借であると認められる場合には、借入金そのものは贈与になりません。
国税庁 タックスアンサー No.4420「親から金銭を借りた場合」
親と子、祖父母と孫など特殊の関係がある人相互間における金銭の貸借は、その貸借が、借入金の返済能力や返済状況などからみて真に金銭の貸借であると認められる場合には、借入金そのものは贈与にはなりません。
判断の材料として挙がっているのは「返済能力」と「返済状況」です。借りた人にそもそも返せる収入があるか、そして実際に返しているか。契約書の有無だけでなく、お金が実際に戻っているかが見られます。契約書を作って一度も返していなければ、貸借とは認められにくいということです。
無利子だと、利子相当額が贈与と扱われることがある
借入金が無利子などの場合、利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額が贈与として扱われる場合があります。
国税庁 タックスアンサー No.4420「親から金銭を借りた場合」
しかし、その借入金が無利子などの場合には利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります。
「場合があります」という書き方です。無利子なら必ず贈与税がかかるわけではありません。利子相当額が贈与税の基礎控除の範囲に収まる程度であれば、実際に課税されることは少ないです。しかし借入額が大きく期間が長いと、利子相当額も大きくなります。親子間でも利息を付けておけば、この論点は消えます。
「ある時払いの催促なし」「出世払い」は、借入金そのものが贈与
ここが本題です。実質的に贈与なのに形だけ貸借にしている場合や、「ある時払いの催促なし」「出世払い」のような貸借は、借入金そのものが贈与として扱われます。利子相当額ではなく、元本の全額です。
国税庁 タックスアンサー No.4420「親から金銭を借りた場合」
なお、実質的に贈与であるにもかかわらず形式上貸借としている場合や「ある時払いの催促なし」または「出世払い」というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われます。
「返せるときに返してくれればいい」。親心としては自然な言葉ですが、税務上は返済の約束がないということであり、貸借ではなく贈与です。返済期限も返済額も決まっていない貸し借りは、この類型に入ります。
形だけ貸借にしたものも贈与
契約書があっても、中身が伴わなければ「形式上貸借としている」に当たります。次のような場合が典型です。
- 借りた人の収入からは、到底返せない額を借りている(返済能力がない)
- 契約書の返済予定どおりに、実際には返していない
- 返済しているように見えて、親が別の形でその分を渡している(返済の原資を親が出している)
- 親が高齢で、返済期間が親の平均余命を大きく超えている
税務署は、贈与税の調査や相続税の調査で、親子間の資金の動きを通帳で追います。「借入」と説明したときに、契約書・返済の記録・返済能力の3つが揃っていなければ、贈与と認定されます。
贈与と見られないために揃えること
| 揃えるもの | 内容 |
|---|---|
| 金銭消費貸借契約書 | 貸主・借主・金額・貸付日・返済期限・返済方法・利息を書く。日付を入れて双方が署名する |
| 現実的な返済計画 | 借主の収入で返せる額と期間。親の年齢からみて完済できる期間 |
| 返済の記録 | 借主の口座から親の口座へ、契約どおりに振り込む。現金の手渡しは記録が残らない |
| 利息 | 付けておけば「無利子」の論点が消える。利率は世間並みでよい |
いちばん大事なのは実際に返済することです。契約書はあとから作れますが、返済の記録は作れません。振込の履歴が、貸借であることの最も強い証拠になります。
借入でなく贈与にする選択肢
ここまで「贈与と見られないように」書いてきましたが、最初から贈与にするという選択もあります。贈与税には基礎控除があり、その範囲内なら贈与税はかかりません。数年に分けて贈与すれば、ある程度の額を無税で移せます。住宅取得資金の贈与には、別に非課税の特例もあります。
借入にすれば、親には貸付金という財産が残り、親の相続のときに相続財産になります。贈与にすれば、親の財産は減ります(ただし相続開始前の一定期間の贈与は相続財産に加算されます)。どちらが有利かは、金額と親の年齢と家族構成で変わります。借りるか、もらうか。決める前に一度、全体を試算してください。
よくある質問
親からお金を借りると贈与税がかかりますか
親と子、祖父母と孫のように特殊な関係にある人の間の金銭の貸借でも、借入金の返済能力や返済状況から見て 真に金銭の貸借であると認められる 場合には、借入金そのものは贈与になりません。→ 本文で読む
親から無利子で借りると贈与税がかかりますか
借入金が無利子などの場合、利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額が贈与として扱われる場合があります。 「場合があります」という書き方です。無利子なら必ず贈与税がかかるわけではありません。利子相当額が贈与税の基礎控除の範囲に収まる程度であれば、実際に課税されることは少ないです。しかし借入額が大きく期間が長いと、利子相当額も大きくなります。親子間でも利息を付けておけば、この論点は消えます。→ 本文で読む
親から「出世払い」で借りたお金は贈与になりますか
ここが本題です。実質的に贈与なのに形だけ貸借にしている場合や、「ある時払いの催促なし」「出世払い」のような貸借は、 借入金そのものが贈与 として扱われます。利子相当額ではなく、元本の全額です。→ 本文で読む
親からの借入を贈与と見られないためには何が必要ですか
いちばん大事なのは 実際に返済すること です。契約書はあとから作れますが、返済の記録は作れません。振込の履歴が、貸借であることの最も強い証拠になります。→ 本文で読む
親からお金をもらう場合、借入と贈与のどちらがよいですか
ここまで「贈与と見られないように」書いてきましたが、最初から贈与にするという選択もあります。贈与税には基礎控除があり、その範囲内なら贈与税はかかりません。数年に分けて贈与すれば、ある程度の額を無税で移せます。住宅取得資金の贈与には、別に非課税の特例もあります。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.4420 親から金銭を借りた場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4420.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
親からの借入を予定している方は、契約の前にご相談ください。
返済の期間と金額の設定、利息の扱い、契約書の内容。税務署から贈与と見られない形を、借りる前に整えます。