申告
所得税の税率は5%から45%の7段階。
速算表の「控除額」の意味と、700万円で974,000円になる計算
「所得が900万円を超えると税率が33%になる」と聞いて、900万円を1円でも超えたら全部に33%がかかると思っている方がいます。そうではありません。
所得税は超過累進税率で、超えた部分にだけ高い税率がかかります。速算表の「控除額」は、それを1回の計算で済ませるための数字です。国税庁のタックスアンサーNo.2260の表と計算例で、仕組みを確認します。
この記事の要点
課税される所得金額に応じて5%・10%・20%・23%・33%・40%・45%の7段階。速算表の控除額は、超過累進税率を1回の掛け算で計算するための調整額です。課税所得700万円なら700万円×23%−636,000円=974,000円。これに復興特別所得税2.1%が加わります。国税庁タックスアンサーNo.2260の速算表をそのまま掲載しました。
速算表:7段階の税率と控除額
所得税の税率は、分離課税のものを除くと、5%から45%の7段階です。課税される所得金額(1,000円未満切捨て)に対する税額は、次の速算表で求めます。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5パーセントから45パーセントの7段階に区分されています。
課税される所得金額(1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。)に対する所得税の金額は、次の「所得税の速算表」を使用すると簡単に求められます。
税額=課税される所得金額×税率−控除額、です。表の行を1つ選んで、掛けて、引く。それだけです。
「控除額」の意味:超えた部分にだけ高い税率
速算表の「控除額」は、何かを控除してもらえる制度ではありません。超過累進税率を1回の掛け算で計算するための調整額です。
本来の計算は、所得を段階ごとに切り分けて、それぞれの税率を掛けて足します。1,949,000円までの部分は5%、1,950,000円から3,299,000円までの部分は10%、というように。これを毎回やるのは面倒なので、「全額に上の税率を掛けてから、下の段階で掛けすぎた分を引く」形にしたのが速算表です。引く金額が「控除額」です。
したがって、課税所得が9,000,000円を1円超えても、33%がかかるのは超えた1円だけです。8,999,000円までの部分は、それぞれの段階の税率のままです。「税率の壁を超えると手取りが減る」ということは、所得税の仕組み上は起きません。
計算例:課税所得700万円で974,000円
No.2260には、課税される所得金額が7,000,000円の場合の計算例が載っています。
国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
(課税される所得金額が7,000,000円の場合)
求める税額は次のようになります。
7,000,000円×0.23 - 636,000円= 974,000円
7,000,000円は「6,950,000円から8,999,000円まで」の行に入りますので、税率23%、控除額636,000円です。700万円の23%は161万円ですが、そこから636,000円を引いて974,000円。実効的な税率は約14%になります。「税率23%」と「実際に納める割合14%」の差が、超過累進の効果です。
「課税される所得金額」とは何か
速算表に当てはめるのは、収入でも所得でもなく、課税される所得金額です。収入から必要経費(給与なら給与所得控除)を引いたものが「所得金額」、そこから基礎控除・社会保険料控除・扶養控除などの所得控除を引いたものが「課税される所得金額」です。
| 段階 | 計算 |
|---|---|
| 収入金額 | 売上、給与の額面など |
| 所得金額 | 収入金額 − 必要経費(給与所得控除など) |
| 課税される所得金額 | 所得金額 − 所得控除(基礎控除・社会保険料控除・扶養控除など)。1,000円未満切捨て |
| 所得税額 | 課税される所得金額 × 税率 − 控除額 |
年収700万円の会社員の課税所得は700万円ではありません。給与所得控除と各種の所得控除を引いた後の金額で、700万円よりかなり小さくなります。「年収900万円を超えたから税率33%」というのも、この意味で違います。
復興特別所得税2.1%と、令和9年からの防衛特別所得税
速算表で求めた所得税額に、復興特別所得税が加わります。平成25年から令和19年までの各年分は、基準所得税額の2.1%です。974,000円の例なら、その2.1%が上乗せされます。
国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
令和9年1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税の税率が1.1パーセントに引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1パーセント相当額)が併せて源泉徴収されます。
令和9年からは、復興特別所得税が1.1%に下がり、代わりに防衛特別所得税1%が加わります。合計は2.1%のままで、内訳が変わる形です。
もう一つ、令和7年分からは、基準所得金額が3億3,000万円を超える場合に、その超える部分の22.5%相当額が通常の所得税・復興特別所得税を上回るときは、上回る部分が加算される特例があります。ごく高額の所得者向けの規定で、コード2270に説明があります。
税率表をどう使うか
税率表を知っておく意味は、いま自分がどの段階にいるかを把握することにあります。所得控除を1万円増やしたときに減る所得税は、その段階の税率×1万円です。20%の段階にいる人なら2,000円、33%の段階なら3,300円。これに住民税の減少分が加わります。
小規模企業共済やiDeCoの掛金、ふるさと納税の効果は、この段階で決まります。同じ掛金でも、税率の高い人ほど効きます。また、個人の税率が高い段階にあるなら、法人にして税率を分散するという選択肢が出てきます。これは法人化の分岐点の記事に書きました。
分離課税の所得には、この表は使いません
土地建物の譲渡所得、株式の譲渡所得、退職所得などは分離課税で、それぞれ別の税率です。速算表を当てはめるのは、給与・事業・不動産・雑などを合計した総所得金額に対する部分だけです。
よくある質問
所得税の税率は何段階ですか
所得税の税率は、分離課税のものを除くと、 5%から45%の7段階 です。課税される所得金額(1,000円未満切捨て)に対する税額は、次の速算表で求めます。 税額=課税される所得金額×税率−控除額、です。表の行を1つ選んで、掛けて、引く。それだけです。→ 本文で読む
所得税の速算表の控除額とは何ですか
速算表の「控除額」は、何かを控除してもらえる制度ではありません。 超過累進税率を1回の掛け算で計算するための調整額 です。 本来の計算は、所得を段階ごとに切り分けて、それぞれの税率を掛けて足します。1,949,000円までの部分は5%、1,950,000円から3,299,000円までの部分は10%、というように。これを毎回やるのは面倒なので、「全額に上の税率を掛けてから、下の段階で掛けすぎた分を引く」形にしたのが速算表です。引く金額が「控除額」です。→ 本文で読む
課税所得700万円の所得税はいくらですか
No.2260には、課税される所得金額が7,000,000円の場合の計算例が載っています。 7,000,000円は「6,950,000円から8,999,000円まで」の行に入りますので、税率23%、控除額636,000円です。700万円の23%は161万円ですが、そこから636,000円を引いて974,000円。実効的な税率は約14%になります。「税率23%」と「実際に納める割合14%」の差が、超過累進の効果です。→ 本文で読む
所得税の税率を掛ける「課税される所得金額」とは何ですか
速算表に当てはめるのは、収入でも所得でもなく、 課税される所得金額 です。収入から必要経費(給与なら給与所得控除)を引いたものが「所得金額」、そこから基礎控除・社会保険料控除・扶養控除などの所得控除を引いたものが「課税される所得金額」です。→ 本文で読む
復興特別所得税は所得税の何パーセントですか
速算表で求めた所得税額に、復興特別所得税が加わります。平成25年から令和19年までの各年分は、基準所得税額の 2.1% です。974,000円の例なら、その2.1%が上乗せされます。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
所得がいくらなら税金がいくらになるか、その場で計算します。
控除を増やす、法人にする、所得を分散する。どの方法が効くかは、いまどの税率の段階にいるかで変わります。源泉徴収票や前年の申告書をお持ちください。
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