法人
役員社宅の家賃はいくら取ればよいか。
固定資産税の課税標準額から計算する「賃貸料相当額」
役員の自宅を会社名義で借りて社宅にする。中小企業でよく使われる方法ですが、役員から受け取る家賃が少なすぎると、差額が役員の給与になります。役員給与ですから、定期同額給与の枠から外れて損金にもなりません。
いくら受け取れば給与にならないのか。その基準が賃貸料相当額で、計算式は国税庁のタックスアンサーNo.2600に書かれています。「家賃の半分」という言い方をよく聞きますが、それは小規模でない住宅の場合の話です。
この記事の要点
会社が借りた住宅を役員に貸すとき、役員から「賃貸料相当額」以上の家賃を受け取っていれば給与として課税されません。小規模な住宅(木造なら132㎡以下など)は建物の課税標準額×0.2%+12円×床面積/3.3㎡+敷地の課税標準額×0.22%。それ以外は会社が払う家賃の50%との比較になります。国税庁タックスアンサーNo.2600をもとに整理しました。
役員から賃貸料相当額を受け取っていれば、給与にならない
会社が役員に社宅を貸す場合、役員から1か月あたり一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取っていれば、給与として課税されません。逆に言えば、無償で貸したり、賃貸料相当額より安い家賃しか受け取っていなかったりすると、その差額が役員の給与になります。
国税庁 タックスアンサー No.2600「役員に社宅などを貸したとき」
役員に対して社宅を貸与する場合は、役員から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)を受け取っていれば、給与として課税されません。
役員の給与になると、源泉徴収の対象になり、社会保険料の計算にも影響します。さらに法人税では、毎月同額でない役員給与は損金になりません。社宅の差額は毎月変わらないことが多いので定期同額給与に含めて処理できる場合もありますが、届出や支給額の設計を最初からしておく必要があります。後から「差額が給与だった」と指摘されると、損金不算入と源泉漏れの両方が同時に来ます。
小規模な住宅かどうかで計算式が変わる
賃貸料相当額の計算は、貸す社宅が「小規模な住宅」か「それ以外」かで分かれます。小規模な住宅とは、建物の法定耐用年数が30年以下なら床面積132平方メートル以下、30年超なら99平方メートル以下の住宅です。
国税庁 タックスアンサー No.2600「役員に社宅などを貸したとき」
小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。
木造や軽量鉄骨造の住宅は法定耐用年数が30年以下ですので132平方メートルが線です。鉄筋コンクリート造のマンションは30年を超えますので99平方メートルが線になります。マンションの場合は共用部分をあん分した面積を専有面積に足して判定します。専有面積が99平方メートルぎりぎりだと、共用部分を足して超えることがあります。
中小企業の役員社宅は、この「小規模な住宅」に収まることがほとんどです。そして小規模な住宅の賃貸料相当額は、次に書くとおり家賃の50%とは無関係の計算です。
小規模な住宅の賃貸料相当額:3つの合計
小規模な住宅の賃貸料相当額は、次の(1)から(3)の合計です。会社が家主にいくら払っているかは、計算に出てきません。
国税庁 タックスアンサー No.2600「役員に社宅などを貸したとき」
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント
| 項目 | 計算 | 必要な資料 |
|---|---|---|
| (1)建物 | その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2% | 建物の固定資産税評価証明書など |
| (2)床面積 | 12円 × 建物の総床面積(㎡) ÷ 3.3㎡ | 登記簿・契約書の面積 |
| (3)敷地 | その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22% | 土地の固定資産税評価証明書など |
この式で出る金額は、市場家賃に比べてかなり小さくなるのが普通です。固定資産税の課税標準額は取引価格より低く、しかもそれに0.2%や0.22%を掛けるだけだからです。役員が受ける経済的利益に対して課税額が小さくなるので、役員社宅が「有利」と言われるのはここに理由があります。
ただし、(1)と(3)は「その年度の」課税標準額です。固定資産税の評価替えで課税標準額が変われば、賃貸料相当額も変わります。一度計算して終わりではなく、評価替えの年には見直してください。
小規模でない住宅:自社所有なら12分の1、借上げなら家賃の50%との比較
床面積が小規模な住宅の線を超える場合は、社宅が会社の所有か、他から借りたものかで計算が分かれます。
自社所有の場合は、次のイとロの合計の12分の1が賃貸料相当額です。
国税庁 タックスアンサー No.2600「役員に社宅などを貸したとき」
イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12パーセント
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12パーセントではなく、10パーセントを乗じます。
ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6パーセント
イとロは年額に相当するので、12で割って月額にします。建物は法定耐用年数が30年以下なら12%、30年超なら10%です。
他から借りた住宅を貸す場合は、会社が家主に払う家賃の50%と、上の自社所有の式で計算した金額とを比べて、多いほうが賃貸料相当額です。
国税庁 タックスアンサー No.2600「役員に社宅などを貸したとき」
会社が家主に支払う家賃の50パーセントの金額と、上記(1)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
「役員社宅は家賃の半分を取ればよい」という話は、この小規模でない借上げ社宅の場合に出てくる数字です。しかもそれは下限であって、固定資産税ベースの計算のほうが大きければそちらになります。小規模な住宅であれば50%という数字はそもそも出てきません。どちらに当たるかを、まず床面積で判定してください。
豪華社宅には算式が使えない
いわゆる豪華社宅は、上の算式が使えず、通常支払うべき使用料に相当する額(つまり市場家賃)が賃貸料相当額になります。
国税庁 タックスアンサー No.2600「役員に社宅などを貸したとき」
いわゆる豪華社宅であるかどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
240平方メートルを超えると、家賃の額や内装などを総合して判定されます。240平方メートル以下でも、プールのような設備や、役員個人の好みを強く反映した設備があれば豪華社宅です。面積だけで安全とは言えないことに注意してください。
給与として課税されるのはどの部分か
課税されるのは、賃貸料相当額と実際に受け取っている家賃との差額です。無償なら賃貸料相当額の全額が給与です。
国税庁 タックスアンサー No.2600「役員に社宅などを貸したとき」
(1)役員に無償で貸与する場合
賃貸料相当額が、給与として課税されます。
(2)役員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合
賃貸料相当額と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
(3)現金で支給される住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担
社宅の貸与とは認められないので、給与として課税されます。
(3)が、いちばん多い失敗です。役員個人が家主と契約している住宅の家賃を、会社が払う。これは社宅ではなく住宅手当ですから、払った額の全額が給与になります。社宅にするには、契約の借主を会社にすることが出発点です。既に個人名義で借りているなら、家主の了解を得て契約を会社名義に切り替えてください。
課税標準額はどこで分かるか
小規模な住宅の計算に必要な「固定資産税の課税標準額」は、自社所有なら毎年届く固定資産税の課税明細書に載っています。借上げ社宅の場合、課税明細書は家主の手元にあります。
家主に写しをもらうか、市区町村で固定資産評価証明書を取る方法があります。賃借人は、賃貸借契約書を示せば借りている物件の評価証明書を取れる自治体が多いです。手続きは自治体で異なりますので、本店所在地ではなく物件の所在する市区町村に確認してください。
課税標準額が取れないときに「家賃の50%」で済ませるのは危険です
小規模な住宅で固定資産税ベースの計算をせず、家賃の50%を受け取っている会社があります。50%は小規模でない住宅の下限ですから、小規模な住宅で50%を取っていれば賃貸料相当額を上回っていることが多く、課税上の問題は起きにくいです。しかしそれは役員が本来より多く払っているということでもあります。課税標準額を取って計算すれば、役員の負担はもっと小さくできます。
よくある質問
役員に社宅を貸したとき、家賃を受け取っていれば給与になりませんか
会社が役員に社宅を貸す場合、役員から1か月あたり一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取っていれば、給与として課税されません。逆に言えば、無償で貸したり、賃貸料相当額より安い家賃しか受け取っていなかったりすると、その差額が役員の給与になります。→ 本文で読む
役員社宅の「小規模な住宅」とは何平方メートル以下ですか
賃貸料相当額の計算は、貸す社宅が「小規模な住宅」か「それ以外」かで分かれます。小規模な住宅とは、 建物の法定耐用年数が30年以下なら床面積132平方メートル以下、30年超なら99平方メートル以下 の住宅です。→ 本文で読む
小規模な役員社宅の賃貸料相当額はどう計算しますか
小規模な住宅の賃貸料相当額は、次の(1)から(3)の合計です。会社が家主にいくら払っているかは、計算に出てきません。 この式で出る金額は、市場家賃に比べてかなり小さくなるのが普通です。固定資産税の課税標準額は取引価格より低く、しかもそれに0.2%や0.22%を掛けるだけだからです。 役員が受ける経済的利益に対して課税額が小さくなるので、役員社宅が「有利」と言われるのはここに理由があります。→ 本文で読む
借上げの役員社宅は、家賃の50%を受け取ればよいのですか
床面積が小規模な住宅の線を超える場合は、社宅が会社の所有か、他から借りたものかで計算が分かれます。 イとロは年額に相当するので、12で割って月額にします。建物は法定耐用年数が30年以下なら12%、30年超なら10%です。→ 本文で読む
豪華社宅とはどんな住宅ですか
いわゆる豪華社宅は、上の算式が使えず、通常支払うべき使用料に相当する額(つまり市場家賃)が賃貸料相当額になります。 240平方メートルを超えると、家賃の額や内装などを総合して判定されます。240平方メートル以下でも、プールのような設備や、役員個人の好みを強く反映した設備があれば豪華社宅です。面積だけで安全とは言えないことに注意してください。→ 本文で読む
役員が個人で契約している家賃を会社が払うと、どうなりますか
課税されるのは、賃貸料相当額と実際に受け取っている家賃との 差額 です。無償なら賃貸料相当額の全額が給与です。 (3)が、いちばん多い失敗です。 役員個人が家主と契約している住宅の家賃を、会社が払う 。これは社宅ではなく住宅手当ですから、払った額の全額が給与になります。社宅にするには、 契約の借主を会社にする ことが出発点です。既に個人名義で借りているなら、家主の了解を得て契約を会社名義に切り替えてください。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2600.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
役員社宅の賃貸料相当額は、固定資産税の資料があればその場で計算できます。
家主から課税標準額の証明を取る方法、契約を会社名義に切り替える手順、役員報酬とのバランスまで、まとめてご相談ください。
あわせて読む
同じテーマの記事
源泉徴収・年末調整
源泉所得税の納期の特例。年2回にできるのは給与と士業の報酬だけ
給与の支給人員が常時10人未満なら、源泉所得税を半年分まとめて納められます。
源泉徴収・年末調整
税理士報酬の源泉徴収は税込か税抜か。消費税が分けてあれば税抜でよい
税理士や弁護士への報酬の源泉徴収は、原則として消費税込みの金額が対象です。
源泉徴収・年末調整
役員を5年以下で退職すると、退職金の「2分の1」がなくなります
退職所得は通常「(収入−退職所得控除)×1/2」ですが、役員等としての勤続年数が5年以下の人が…
源泉徴収・年末調整
個人に払う報酬で源泉徴収が要るのは8種類
個人(居住者)への報酬のうち源泉徴収の対象は、原稿料・講演料、弁護士や司法書士など特定の資格者…