源泉徴収
個人に払う報酬で源泉徴収が要るのは8種類。
原稿料・講演料・士業・外交員・出演料・ホステス報酬・契約金・賞金
フリーランスのデザイナーに払ったデザイン料、講師に払った謝礼、司法書士に払った登記費用。会社がこうした支払いをするとき、源泉徴収が要るかどうかで迷います。
源泉徴収の対象になる報酬は、法律で列挙されています。列挙されていないものは対象外です。国税庁のタックスアンサーNo.2792に沿って、8つの区分と判定の注意点を整理します。
この記事の要点
個人(居住者)への報酬のうち源泉徴収の対象は、原稿料・講演料、弁護士や司法書士など特定の資格者への報酬、診療報酬、プロスポーツ選手・モデル・外交員の報酬、芸能の出演料、ホステス等の報酬、契約金、広告宣伝の賞金の8区分。謝礼や車代の名目でも実態が報酬なら対象。法人への支払いは馬主の競馬賞金以外は対象外。国税庁タックスアンサーNo.2792をもとに整理しました。
対象は「個人」への支払い。法人は原則として対象外
報酬・料金の源泉徴収は、支払いを受ける者が居住者(個人)か内国法人かで範囲が異なります。個人への支払いには8つの区分が定められていますが、法人への支払いで源泉徴収が要るのは、馬主である法人に払う競馬の賞金だけです。
国税庁 タックスアンサー No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲は、その報酬・料金等の支払を受ける者が、居住者であるか内国法人であるかによって異なります。
したがって、最初の判定は「支払先が個人か法人か」です。デザイン会社(株式会社)に払うデザイン料は源泉徴収不要、個人のデザイナーに払えば源泉徴収が要る(原稿料等の区分に含まれる場合)、ということになります。請求書の発行者名を見てください。
源泉徴収の対象になる8区分
| 区分 | No.2792の記載 | 実務での例 |
|---|---|---|
| 1 | 原稿料や講演料など | ライター、講師、デザイナー、イラストレーター、翻訳者など |
| 2 | 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金 | 税理士、社労士、司法書士、土地家屋調査士など |
| 3 | 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が支払う診療報酬 | 医療機関向け |
| 4 | プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金 | 外交員、モデル、集金人 |
| 5 | 映画、演劇その他芸能、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金 | 出演料、司会、音楽演奏 |
| 6 | バンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金 | 飲食業向け |
| 7 | プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金 | 専属契約の契約金 |
| 8 | 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金 | 懸賞・キャンペーンの賞金 |
中小企業で日常的に出てくるのは1と2です。1の「原稿料や講演料など」には、デザイン料・イラスト料・作曲料・翻訳料・講演料・技芸の指導料などが含まれます(詳細は「源泉徴収のあらまし」に列挙されています)。個人のデザイナーやライターへの支払いは、ほぼここに入ります。
なお、1について「懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよい」という例外があります。
逆に、8区分に入らないものは源泉徴収の対象外です。個人のプログラマーへのシステム開発の報酬、個人の大工への工事代金、個人の運送業者への運賃などは、列挙されていませんので原則として対象外です。ただし、その支払いが実態として「給与」であれば、報酬ではなく給与として源泉徴収が要ります(外注費か給与かの記事)。
謝礼・車代の名目でも実態で判断
国税庁 タックスアンサー No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われていても、その実態が報酬・料金等と同じであれば源泉徴収の対象になります。
講師に「謝礼」として渡す、「車代」として渡す。名目を変えても、講演の対価であれば講演料として源泉徴収の対象です。「謝礼だから源泉は要らない」は通りません。金銭でなく物品や経済的利益で支払う場合も、報酬に含まれます。
交通費・宿泊費を直接払えば対象外
国税庁 タックスアンサー No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
報酬・料金等の支払者が、直接交通機関、ホテル、旅館等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています。
講師を遠方から呼ぶとき、会社が新幹線の切符とホテルを手配して直接払えば、その分は報酬に含めず、源泉徴収の対象になりません。一方、講師に「交通費込み」で報酬を渡すと、交通費相当額も含めた全額が源泉徴収の対象です。講師の側の手取りに差が出ますので、遠方の講師には直接手配のほうが親切です。
個人か法人か分からない団体への支払い
国税庁 タックスアンサー No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
支払を受ける者が研究会、劇団などの団体で、個人か法人かが明らかでない場合は、その支払を受ける者が、法人税を納める義務があることまたは定款、規約、日常の活動状況などから、団体として独立して存在していることを明らかにした場合は法人として取り扱い、そうでなければ個人として取り扱います。
「○○研究会」「劇団○○」のような、法人格のはっきりしない団体に払う場合は、団体側が法人として独立していることを示せなければ個人扱いです。個人扱いなら、内容に応じて源泉徴収が要ります。請求書に法人番号やインボイス登録番号(Tから始まる番号)があれば法人かどうかの判断材料になります。
消費税を区分すれば税抜で計算できる
国税庁 タックスアンサー No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
報酬・料金等の額の中に消費税および地方消費税の額(以下「消費税等の額」といいます。)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。ただし、請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません(注)。
(注) 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始後も、上記の取扱いは変更ありません。
原則は税込、請求書で区分されていれば税抜でよい。インボイス制度が始まっても変わりません。計算例は別の記事に書きました。
よく迷う支払いの整理
| 支払い | 源泉徴収 | 理由 |
|---|---|---|
| 個人デザイナーへのロゴ制作費 | 要る | 区分1(デザイン料) |
| デザイン会社(法人)へのロゴ制作費 | 要らない | 法人への支払い |
| 個人の講師への講演謝礼 | 要る | 区分1。「謝礼」でも実態は講演料 |
| 司法書士への登記報酬 | 要る | 区分2。ただし登録免許税など実費部分は除く |
| 個人プログラマーへの開発委託費 | 原則要らない | 8区分に列挙されていない |
| 個人の大工への工事代金 | 原則要らない | 8区分に列挙されていない(給与と判定されれば別) |
| キャンペーンの当選者への賞金(個人) | 要る | 区分8(広告宣伝のための賞金) |
判定に迷う支払いは、支払う前に確認してください。源泉徴収を忘れた場合、納付する義務は支払者にあり、後から相手に返してもらえるとは限りません。
よくある質問
法人に払う報酬にも源泉徴収は必要ですか
報酬・料金の源泉徴収は、支払いを受ける者が居住者(個人)か内国法人かで範囲が異なります。個人への支払いには8つの区分が定められていますが、 法人への支払いで源泉徴収が要るのは、馬主である法人に払う競馬の賞金だけ です。→ 本文で読む
源泉徴収が必要な報酬にはどんなものがありますか
中小企業で日常的に出てくるのは1と2です。1の「原稿料や講演料など」には、デザイン料・イラスト料・作曲料・翻訳料・講演料・技芸の指導料などが含まれます(詳細は「源泉徴収のあらまし」に列挙されています)。個人のデザイナーやライターへの支払いは、ほぼここに入ります。→ 本文で読む
講師への謝礼や車代は源泉徴収の対象になりますか
講師に「謝礼」として渡す、「車代」として渡す。名目を変えても、講演の対価であれば講演料として源泉徴収の対象です。 「謝礼だから源泉は要らない」は通りません。 金銭でなく物品や経済的利益で支払う場合も、報酬に含まれます。→ 本文で読む
講師の交通費や宿泊費は源泉徴収の対象になりますか
講師を遠方から呼ぶとき、会社が新幹線の切符とホテルを手配して直接払えば、その分は報酬に含めず、源泉徴収の対象になりません。一方、講師に「交通費込み」で報酬を渡すと、交通費相当額も含めた全額が源泉徴収の対象です。講師の側の手取りに差が出ますので、遠方の講師には直接手配のほうが親切です。→ 本文で読む
個人のプログラマーへの開発費は源泉徴収が必要ですか
判定に迷う支払いは、支払う前に確認してください。源泉徴収を忘れた場合、納付する義務は支払者にあり、後から相手に返してもらえるとは限りません。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
外注先への支払いを一覧にして、源泉徴収の要否を判定します。
支払先が個人か法人か、業務の内容は8区分のどれに当たるか。1年分の支払先を確認して、漏れがあれば納付と支払調書まで対応します。
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