税制改正
食料品の消費税が1%に。
令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間
令和8年9月15日、政府は「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」を閣議決定しました。消費税率が下がるのは、昭和64年(1989年)の導入以来はじめてです。
この記事は、9月14日に公表された報道をもとに書いたものを、閣議決定された大綱の本文に差し替えて全面的に書き直しています。とくに簡易課税の扱いは、大綱で手当てが入り、前の記事に書いた内容と結論が変わりました。
この記事の要点
令和8年9月15日に閣議決定された大綱で、軽減税率の対象になっている飲食料品の消費税率が、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、1%(国税0.78%+地方消費税0.22%相当)になることが決まりました。対象になる飲食料品の範囲は8%のときから変わりません。新聞は対象外、外食と酒類は10%のままです。予約販売と通信販売には経過措置があります。大綱の本文をもとに整理しました。
決まったこと:令和9年4月1日から2年間、1%
大綱の本文は、税率と期間をこう書いています。
「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(令和8年9月15日 閣議決定)第二 一1
現下の物価の上昇に鑑み、令和9年4月1日から令和11 年3月31 日までの間に事業者が国内において行う飲食料品(現行の軽減税率の適用対象となっている飲食料品をいう。以下同じ。)の譲渡(以下「特例対象課税資産の譲渡」という。)及び保税地域から引き取られる飲食料品(以下「特例対象課税貨物」という。)について、消費税の税率を0.78%とする特例を創設する(地方消費税率と合わせて1%。以下「特例税率」という。)。
| 内容 | |
|---|---|
| 期間 | 令和9年4月1日 〜 令和11年3月31日(2年間) |
| 税率 | 1%(消費税0.78% + 地方消費税0.22%相当) |
| 対象 | 現行の軽減税率(8%)の対象になっている飲食料品の譲渡と、保税地域から引き取る飲食料品 |
| 名前 | 大綱ではこの1%を「特例税率」、対象の売上を「特例対象課税資産の譲渡」と呼んでいます |
いまの8%も、内訳は消費税6.24%+地方消費税1.76%です。同じように、1%も国と地方に分かれています。申告書に書くのは0.78%で計算した国税分で、地方消費税はそこから計算します。「1%」という数字だけ見て会計ソフトの税率を1%に設定すると、内訳がずれます。ソフトの更新を待つほうが確実です。
対象になるもの・ならないもの
対象は「現行の軽減税率の適用対象となっている飲食料品」です。概要資料は、範囲が変わらないことをはっきり書いています。
同 概要資料
※1税率1%の対象となる飲食料品の範囲は、税率8%時から変更はない
※2税率8%の軽減税率が適用されている「週2回以上発行される新聞の定期購読分」については、今般の税率引下げの対象外
| 取引 | いま | 令和9年4月1日から |
|---|---|---|
| スーパー・コンビニ・EC等での飲食料品の販売 | 8% | 1% |
| テイクアウト・宅配(軽減税率の対象になるもの) | 8% | 1% |
| 週2回以上発行される新聞の定期購読 | 8% | 8%のまま(対象外) |
| 外食(店内飲食) | 10% | 10%のまま |
| 酒類 | 10% | 10%のまま |
| 飲食料品以外の商品・サービス | 10% | 10%のまま |
いま8%か10%かで迷っている商品は、令和9年4月からは1%か10%かで迷うことになります。判定の基準そのものは変わりませんが、間違えたときの差が2ポイントから9ポイントに広がります。
新聞が取り残される点に注意してください
軽減税率8%の対象は「飲食料品」と「週2回以上発行される新聞の定期購読分」の2つです。今回1%になるのは前者だけで、新聞は8%のままです。令和9年4月からは、1%・8%・10%の3つの税率が同時に存在します。新聞を扱う事業者は、税率の欄が3種類になります。
予約販売と通信販売には経過措置がある
先に代金をもらっている取引まで1%に直すのは実務上むずかしいため、一定の予約販売・通信販売は特例税率の対象から外す(=8%のまま)とされています。
大綱 第二 一2
(1)令和9年1月1日前に締結した定期供給契約(不特定かつ多数の者に定期的に継続して供給する契約をいい、特例税率を前提とするものを除く。)に基づき同年4月1日前に対価の領収をしている同日以後に行われる飲食料品の譲渡(当該対価を領収している部分に限る。)
(2)通信販売の方法により令和9年1月1日前にその販売条件の提示(特例税率を前提とするものを除く。)が行われ同年4月1日前に申込みを受けた同日以後に行われる飲食料品の譲渡
概要資料は、定期供給契約の例として「1年分の代金を先払いしておけば、旬の食材が毎月届く」形を挙げています。
| 契約・条件提示 | 対価の領収・申込み | 令和9年4月以後の引渡し | |
|---|---|---|---|
| 定期供給契約 | 令和9年1月1日より前 | 令和9年4月1日より前に領収 | 8%のまま(領収済みの部分に限る) |
| 通信販売 | 令和9年1月1日より前に条件提示 | 令和9年4月1日より前に申込み | 8%のまま |
いずれも「特例税率を前提とするものを除く」とあります。令和9年1月1日以後に結ぶ契約や、1%を前提に条件を示した契約は、この経過措置に当たりません。年末年始に新しい定期便の募集をかける予定があるなら、どちらの税率で案内するかを先に決めておく必要があります。
売る側がやること(別の記事にまとめました)
大綱には、事業者向けの手当てが4つ入っています。分量があるので、食品を売る事業者がやることという別の記事にまとめました。見出しだけ挙げると次のとおりです。
- 本則課税に移りやすくする特例 … 届出の期限を「課税期間の末日」まで後ろ倒し、簡易課税の2年縛りも解除
- 簡易課税の特例 … 飲食料品の売上については、業種区分にかかわらず仕入控除税額を売上税額と同額にする(納める税額が出ない)。2割特例・3割特例も同じ
- 中間申告の特例 … 前年の税額をもとにした中間納税が過大にならないよう、1%で計算し直した額を書ける
- 総額表示義務の特例 … 税率変更の前後、最大で各2か月間、8%または1%の総額表示でよい(誤認防止の措置が条件)
残る1%は「就業者負担軽減支援金」で戻す
税率をゼロにせず1%を残したうえで、その1%相当分を給付で返す、という組み立てです。給付の名前は就業者負担軽減支援金で、令和9年4月に導入されます。
大綱 前文
令和11 年度の本格導入までの「つなぎ」として、まずは、来年4月から、2年間に限った飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げと飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲で実施する支援金制度を組み合わせて行い、その後の支援金制度の本格導入に円滑に接続していくこととする。
支援金は、市町村が認定して個人あてに年1回支給します。対象は中低所得の現役勤労者で、金額は所得と扶養している子どもの数で変わります。具体的な金額と所得の線引きは、まだ決まっていません。仕組みの詳細は就業者負担軽減支援金の記事に書きました。
「食料品の消費税がゼロになる」という言い方を見かけますが、正確には税率は1%で、給付を受けられる人にとって実質ゼロです。給付の対象にならない人にとっては、1%はそのまま負担として残ります。
これからの流れ:法案は臨時国会へ
大綱は閣議決定された政府の方針ですが、法律ではありません。大綱自身が「必要な法制上の措置等を可及的速やかに講ずるため」に定めるものだと書いています。
| 時期 | できごと | 状態 |
|---|---|---|
| 令和8年7月29日 | 社会保障国民会議「中間とりまとめ」 | 済 |
| 令和8年8月5日 | 「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針を閣議決定 | 済 |
| 令和8年9月15日 | 大綱を閣議決定 | 済(この記事の時点) |
| 令和8年秋 | 臨時国会に法案を提出・審議 | 予定 |
| 令和9年1月1日 | 定期供給契約・通信販売の経過措置の基準日 | — |
| 令和9年2月1日〜3月31日 | 総額表示の特例(1%での表示が可能な期間) | — |
| 令和9年4月1日 | 飲食料品が1%に。支援金制度も導入 | 法案成立が前提 |
| 令和11年3月31日 | 税率1%の期限 | — |
| 令和11年度〜 | 支援金を本格導入 | — |
大綱の段階で条文の骨格まで示されていますので、ここから大きく変わる可能性は高くありませんが、国会で修正が入ることはありえます。最終的には成立した法律と、国税庁が出す通達・Q&Aで確認してください。
農林漁業者・食品事業者・外食事業者への支援
税率が下がると、売上にかかる消費税が減る一方で、仕入や経費にかかる消費税(多くは10%)は変わりません。本則課税なら差額は還付されますが、簡易課税や免税の事業者は還付を受けられません。大綱は、ここに支援を置いています。
大綱 第二 三
特に本則課税に移行することが困難な簡易課税事業者・免税事業者である農林漁業者については、第一次産品の生産・販売を担う特殊性に鑑み、売上げから回収できない仕入税額が大きくなることで経営継続が困難とならないよう、個別の売上高を踏まえた金額を給付する仕組みを導入することとし、現場の納得感のある対応に万全を期す。
食品事業者と外食事業者には、資金繰り支援と省力化の支援。外食事業者には、テイクアウトなどへの多角化の支援。そして、事業者にとって見逃せないのが次の一文です。
大綱 第二 三3
簡易課税事業者・免税事業者である農林漁業者、食品事業者、外食事業者が本則課税事業者に移行する際の相談対応や、税理士費用等の経費に対する支援を行う。
本則課税に移るときの税理士費用に対する支援が明記されています。中身は「予算編成過程において支援内容を具体化する」とされており、この記事の時点では決まっていません。レジシステムの移行・改修についても、中小企業等への支援を行うと書かれています。
9月14日の記事から訂正したこと
この記事は、9月14日に与党案の報道をもとに書いたものを、大綱の本文に差し替えて書き直しました。結論が変わったところが1つあります。
簡易課税についての記述を訂正しました
前の記事では「簡易課税のままだと不利になりうるので、本則課税に戻す届出を令和8年12月31日までに出す必要がある」と書きました。大綱では、この2つが手当てされています。
1つは、簡易課税でも飲食料品の売上については納める税額が出ない特例が設けられたこと。もう1つは、届出の期限が「課税期間の末日」まで後ろ倒しされ、2年縛りも解除されることです。年内に決めなければならない、という前提ではなくなりました。
ただし、仕入や経費にかかった10%の消費税の還付を受けたいなら、本則課税に移る必要があります。どちらが有利かは事業の中身しだいです。詳しくは事業者向けの記事に書きました。
速報の段階で書いたものを、一次資料が出た時点で直す。この記事にかぎらず、当事務所のサイトではそうしています。前の版をお読みになって動かれた方がいらっしゃいましたら、上の点をご確認ください。
よくある質問
食料品の消費税はいつから何パーセントになりますか
いまの8%も、内訳は消費税6.24%+地方消費税1.76%です。同じように、1%も国と地方に分かれています。申告書に書くのは0.78%で計算した国税分で、地方消費税はそこから計算します。 「1%」という数字だけ見て会計ソフトの税率を1%に設定すると、内訳がずれます。 ソフトの更新を待つほうが確実です。→ 本文で読む
消費税1%の対象になる食料品の範囲は変わりますか
対象は「現行の軽減税率の適用対象となっている飲食料品」です。概要資料は、範囲が変わらないことをはっきり書いています。 いま8%か10%かで迷っている商品は、令和9年4月からは 1%か10%かで迷う ことになります。判定の基準そのものは変わりませんが、間違えたときの差が2ポイントから9ポイントに広がります。→ 本文で読む
定期便や通信販売で先に代金を払った分の消費税はどうなりますか
先に代金をもらっている取引まで1%に直すのは実務上むずかしいため、一定の予約販売・通信販売は 特例税率の対象から外す (=8%のまま)とされています。 概要資料は、定期供給契約の例として「1年分の代金を先払いしておけば、旬の食材が毎月届く」形を挙げています。→ 本文で読む
食料品の消費税は実質ゼロになるのですか
税率をゼロにせず1%を残したうえで、その1%相当分を給付で返す、という組み立てです。給付の名前は 就業者負担軽減支援金 で、令和9年4月に導入されます。 支援金は、市町村が認定して 個人あてに年1回 支給します。対象は中低所得の現役勤労者で、金額は所得と扶養している子どもの数で変わります。 具体的な金額と所得の線引きは、まだ決まっていません。 仕組みの詳細は 就業者負担軽減支援金の記事 に書きました。→ 本文で読む
大綱が決まれば消費税1%は確定ですか
大綱は閣議決定された政府の方針ですが、法律ではありません。大綱自身が「必要な法制上の措置等を可及的速やかに講ずるため」に定めるものだと書いています。 大綱の段階で条文の骨格まで示されていますので、ここから大きく変わる可能性は高くありませんが、 国会で修正が入ることはありえます。 最終的には成立した法律と、国税庁が出す通達・Q&Aで確認してください。→ 本文で読む
本則課税に移るときの税理士費用に支援はありますか
税率が下がると、売上にかかる消費税が減る一方で、仕入や経費にかかる消費税(多くは10%)は変わりません。本則課税なら差額は還付されますが、簡易課税や免税の事業者は還付を受けられません。大綱は、ここに支援を置いています。→ 本文で読む
出典
- 内閣官房「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(令和8年9月15日 閣議決定)本文
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/pdf/sankou4.pdf(PDF) - 同 概要資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/pdf/sankou5.pdf(PDF) - 内閣官房「「飲食料品に係る消費税率の引下げ」及び「給付付き税額控除」について」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/index.html - 財務省「令和9年度及び令和10年度の飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/20260915shouhizei.html
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
食品を扱う事業者の方は、令和9年3月までの準備が要ります。
届出の特例、簡易課税の特例、レジと値札の切替え。何を、いつまでに、どの順でやるかを、事業の中身に合わせて整理してお渡しします。
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