源泉徴収
税理士報酬の源泉徴収は税込か税抜か。
請求書に消費税が分けて書いてあれば、税抜でよい
税理士や司法書士から請求書が届いたとき、源泉徴収する税額を「税込の金額で計算するのか、税抜で計算するのか」で迷う経理の方は多いです。
答えはどちらも正しい。ただし条件があります。請求書の書き方で決まりますので、国税庁のタックスアンサーNo.6929の計算例をそのまま使って整理します。
この記事の要点
税理士や弁護士への報酬の源泉徴収は、原則として消費税込みの金額が対象です。ただし請求書で報酬と消費税が明確に区分されていれば、税抜の報酬額だけを対象にできます。インボイス登録のない事業者の請求書でも同じです。国税庁タックスアンサーNo.6929の計算例(110,000円→11,231円、100,000円→10,210円)で確認します。
原則は税込の金額が源泉徴収の対象
弁護士や税理士などに報酬を払うときは、所得税と復興特別所得税を源泉徴収します。その対象になる金額は、原則として報酬として支払った金額の全部、つまり消費税込みの金額です。
国税庁 タックスアンサー No.6929「消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税」
この場合、源泉徴収の対象となる金額は、原則として、報酬・料金として支払った金額の全部、すなわち、消費税および地方消費税(以下「消費税等」といいます。)込みの金額が対象となります。
「原則」が税込であることは、意外に思われるかもしれません。消費税は預かって国に納めるだけのお金なのに、そこにまで源泉徴収がかかるのか、と。理屈としては、消費税も含めて「報酬として支払った金額」であるという整理です。ただし、この原則には実務的な例外が置かれています。
請求書で消費税が区分されていれば、税抜でよい
請求書に報酬の金額と消費税の額が明確に区分されている場合は、消費税を除いた報酬の金額だけを源泉徴収の対象にしても差し支えありません。
国税庁 タックスアンサー No.6929「消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税」
ただし、弁護士や税理士などからの請求書等に報酬・料金等の金額と消費税等の額とが明確に区分されている場合には、消費税等の額を除いた報酬・料金等の金額のみを源泉徴収の対象としても差し支えありません。
「差し支えありません」という表現ですから、税抜で計算するのは任意です。区分されていても税込で計算して間違いではありません。しかし、税抜のほうが源泉徴収税額は小さくなり、報酬を受け取る側の手取りが増えます。相手の側からすれば、税抜で計算してもらったほうが資金繰りは楽です。
条件は「明確に区分」です。「報酬 110,000円(税込)」と書いてあるだけでは区分されていません。「報酬 100,000円、消費税 10,000円、合計 110,000円」のように、報酬の額と消費税の額がそれぞれ書かれている必要があります。
計算例:110,000円と、100,000円+消費税10,000円
No.6929には、令和7年1月の税理士報酬を例にした計算が載っています。税率は10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)です。
国税庁 タックスアンサー No.6929「消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税」
例えば、令和7年1月中の税理士からの請求書に、税理士報酬110,000円とだけ記載されていた場合には、源泉徴収税額は110,000円の10.21パーセント相当額である11,231円(1円未満切捨て)となります。
これに対して、税理士からの請求書に、税理士報酬100,000円、消費税等10,000円と記載されており、報酬金額と消費税等の額とが区分されている場合には、源泉徴収税額は税理士報酬100,000円の10.21パーセント相当額である10,210円となります。
| 請求書の記載 | 源泉徴収の対象 | 源泉徴収税額(10.21%) |
|---|---|---|
| 税理士報酬 110,000円 とだけ記載 | 110,000円 | 11,231円(1円未満切捨て) |
| 税理士報酬 100,000円、消費税等 10,000円 | 100,000円 | 10,210円 |
差は1,021円です。1件あたりは小さいですが、毎月の顧問料や、年に何度もある司法書士の登記費用で積み上がります。なお、この10.21%は報酬が100万円以下の場合の税率で、100万円を超える部分は税率が変わります。それは別の記事に書きました。
1円未満の端数は切り捨てです
110,000円×10.21%=11,231.0円で、この例では端数が出ませんが、一般には切り捨てます。四捨五入や切り上げにすると納付額が1円ずれ、納付書と帳簿が合わなくなります。
インボイス登録のない事業者の請求書でも同じ
インボイス制度が始まってから、「登録していない事業者の請求書に書かれた消費税は、消費税として扱ってよいのか」という疑問が出ました。源泉徴収についてNo.6929は、登録のない事業者の請求書でも、報酬と消費税の額が明確に区分されていれば、報酬の額だけを源泉徴収の対象にしてよいとしています。
国税庁 タックスアンサー No.6929「消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税」
適格請求書発行事業者以外の事業者が発行する請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。
支払う側の仕入税額控除(インボイスがないので経過措置の割合しか控除できない)と、源泉徴収の計算は別の話です。控除の話はインボイスの有無で変わりますが、源泉徴収の対象額は請求書の区分だけで決まります。
支払う側と、請求する側それぞれの実務
支払う側(会社)は、届いた請求書を見て、消費税が区分されていれば税抜で、されていなければ税込で源泉徴収税額を計算します。会計ソフトに「源泉対象額」を入れる欄があれば、そこに税抜の報酬額を入れます。支払調書には、源泉徴収の対象にした金額と徴収税額を記載します。
請求する側(士業・個人事業者)は、請求書に報酬と消費税を分けて書けば、源泉徴収される額が減り、手取りが増えます。免税事業者でも、消費税相当額を区分して記載すること自体は妨げられていません。ただし相手が税抜で計算するかどうかは相手の任意ですので、税込で計算されても文句は言えません。
いずれにせよ、源泉徴収された税額は、受け取った側が確定申告で精算します。税込・税抜どちらで計算されても、最終的な税負担は変わりません。変わるのは、精算までの間の資金の流れだけです。
よくある質問
税理士報酬の源泉徴収は消費税込みの金額で計算しますか
弁護士や税理士などに報酬を払うときは、所得税と復興特別所得税を源泉徴収します。その対象になる金額は、原則として 報酬として支払った金額の全部 、つまり消費税込みの金額です。 「原則」が税込であることは、意外に思われるかもしれません。消費税は預かって国に納めるだけのお金なのに、そこにまで源泉徴収がかかるのか、と。理屈としては、消費税も含めて「報酬として支払った金額」であるという整理です。ただし、この原則には実務的な例外が置かれています。→ 本文で読む
請求書に消費税が分けて書いてあれば、源泉徴収は税抜で計算できますか
請求書に報酬の金額と消費税の額が 明確に区分されている 場合は、消費税を除いた報酬の金額だけを源泉徴収の対象にしても差し支えありません。 「差し支えありません」という表現ですから、税抜で計算するのは 任意 です。区分されていても税込で計算して間違いではありません。しかし、税抜のほうが源泉徴収税額は小さくなり、報酬を受け取る側の手取りが増えます。相手の側からすれば、税抜で計算してもらったほうが資金繰りは楽です。→ 本文で読む
税理士報酬110,000円の源泉徴収税額はいくらですか
No.6929には、令和7年1月の税理士報酬を例にした計算が載っています。税率は10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)です。 差は1,021円です。1件あたりは小さいですが、毎月の顧問料や、年に何度もある司法書士の登記費用で積み上がります。なお、この10.21%は報酬が100万円以下の場合の税率で、100万円を超える部分は税率が変わります。それは 別の記事 に書きました。→ 本文で読む
インボイス登録のない事業者の請求書でも、税抜で源泉徴収できますか
インボイス制度が始まってから、「登録していない事業者の請求書に書かれた消費税は、消費税として扱ってよいのか」という疑問が出ました。源泉徴収についてNo.6929は、 登録のない事業者の請求書でも、報酬と消費税の額が明確に区分されていれば、報酬の額だけを源泉徴収の対象にしてよい としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.6929 消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6929.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
士業への支払いの源泉徴収は、納期の特例と一緒に整理できます。
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