相続
分譲マンションの相続税評価。
令和6年から、築年数・階数・敷地持分で「区分所有補正率」がかかります
タワーマンションの高層階を買えば相続税が大きく下がる。そう言われた時代は、令和5年で終わりました。
令和6年1月1日以後の相続・贈与から、分譲マンションの評価に区分所有補正率が導入され、市場価格との乖離が大きい物件ほど評価額が引き上げられます。国税庁のタックスアンサーNo.4667に、算式と計算例が示されています。少し複雑ですが、順に追えば計算できます。
この記事の要点
令和6年1月1日以後の相続・贈与では、分譲マンション(居住用の区分所有財産)は、建物の固定資産税評価額と敷地利用権の路線価評価に「区分所有補正率」を掛けて評価します。補正率は築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度から計算した評価乖離率をもとに決まり、評価水準が0.6未満なら評価乖離率×0.6。国税庁の計算例では400万円の建物が490万3,200円に。国税庁タックスアンサーNo.4667をもとに整理しました。
対象:令和6年以後に取得した「居住用の区分所有財産」
令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した「居住用の区分所有財産」、いわゆる分譲マンションの一室は、法令解釈通達「居住用の区分所有財産の評価について」によって評価します。
国税庁 タックスアンサー No.4667「居住用の区分所有財産の評価」
「居住の用に供する専有部分」とは、一室の専有部分について、構造上、主として居住の用途に供することができるものをいい、原則として、登記簿上の建物の種類に「居宅」を含むものがこれに該当します。
対象は、区分所有建物(分譲マンション)の中の、登記簿上の種類に「居宅」を含む専有部分です。一室ごとに、建物部分(区分所有権)と土地部分(敷地利用権)を評価します。
算式:従来の評価額×区分所有補正率
国税庁 タックスアンサー No.4667「居住用の区分所有財産の評価」
価額 = 区分所有権の価額(①)+ 敷地利用権の価額(②)
① 本通達適用前の区分所有権の価額※ × 区分所有補正率
※ 家屋の固定資産税評価額 × 1.0
② 本通達適用前の敷地利用権の価額※ × 区分所有補正率
※ 路線価を基とした1平方メートル当たりの価額 × 地積 × 敷地権の割合(共有持ち分の割合)
従来の評価(建物は固定資産税評価額、土地は路線価×敷地全体の地積×敷地権割合)を出し、それぞれに同じ区分所有補正率を掛けます。補正率が1を超えれば評価額が上がり、1未満なら下がります。
マンションを貸している場合の貸家・貸家建付地の評価や、小規模宅地等の特例は、この補正後の価額をもとに行います。
評価乖離率:築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4要素
区分所有補正率は、まず「評価乖離率」を計算するところから始まります。評価乖離率は、市場価格が従来の評価額の何倍になっているかの推計値で、4つの要素から算出します。
国税庁 タックスアンサー No.4667「居住用の区分所有財産の評価」
評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
A・・・一棟の区分所有建物の築年数 × △0.033
B・・・一棟の区分所有建物の総階数指数 × 0.239(小数点以下第4位切捨て)
C・・・一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階 × 0.018
D・・・一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度 × △1.195(小数点以下第4位切上げ)
| 要素 | 計算 | 意味 |
|---|---|---|
| A 築年数 | 築年数(1年未満は1年)× △0.033 | 古いほど乖離率が下がる |
| B 総階数指数 | 総階数÷33(1を超えれば1、地階を除く)× 0.239 | 高い建物ほど乖離率が上がる |
| C 所在階 | 専有部分の所在階 × 0.018 | 高層階ほど乖離率が上がる |
| D 敷地持分狭小度 | 敷地利用権の面積÷専有部分の床面積 × △1.195 | 敷地持分が小さい(タワー型)ほど乖離率が上がる |
敷地利用権の面積は、敷地全体の面積×敷地権の割合です。総階数指数は総階数を33で割った値で、33階以上はすべて1になります。
評価水準と区分所有補正率
評価乖離率が出たら、その逆数(1÷評価乖離率)が「評価水準」です。従来の評価額が市場価格の何割かを表します。区分所有補正率は、評価水準の大きさで3つに分かれます。
| 評価水準 | 区分所有補正率 | 評価額 |
|---|---|---|
| 0.6未満 | 評価乖離率 × 0.6 | 上がる(市場価格の6割まで引き上げ) |
| 0.6以上1以下 | 補正なし | 従来どおり |
| 1超 | 評価乖離率 | 下がる(市場価格まで引き下げ) |
従来の評価額が市場価格の6割を下回っているマンションは、6割の水準まで評価を引き上げる。6割以上なら手を付けない。市場価格を上回っていれば市場価格まで下げる。これが補正の趣旨です。タワーマンションの高層階は評価水準が0.6を大きく下回っていたので、評価が上がります。
国税庁の計算例:築27年・11階建て3階・評価水準0.489
No.4667の計算例を追います。築27年、総階数11階、所在階3階、敷地面積3,500.00㎡、敷地権割合1,050,000分の6,300、専有部分の床面積60.00㎡というマンションです。
国税庁 タックスアンサー No.4667「居住用の区分所有財産の評価」(計算例)
A = 27年 × △0.033 = △0.891
総階数指数 = 11階 ÷ 33 = 0.333 B = 0.333 × 0.239 = 0.079
C = 3階 × 0.018 = 0.054
敷地持分狭小度 = 21.00㎡ ÷ 60.00㎡= 0.350 D = 0.350 × △1.195 = △0.419
評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220 = 2.043
評価水準 = 1 ÷ 2.043 = 0.4894762604…
評価水準(0.4894762604…) < 0.6
区分所有補正率 = 評価乖離率 × 0.6 = 2.043 × 0.6 = 1.2258
敷地利用権の面積は3,500.00㎡×6,300/1,050,000=21.00㎡です。評価乖離率2.043は、市場価格が従来の評価額の約2倍ということで、評価水準は0.489。0.6未満なので、補正率は2.043×0.6=1.2258になります。
| 補正前の価額 | ×補正率 | 補正後の価額 | |
|---|---|---|---|
| 区分所有権(建物) | 4,000,000円 | 1.2258 | 4,903,200円 |
| 敷地利用権(土地) | 10,500,000円 | 1.2258 | 12,870,900円 |
築27年の11階建て、3階の部屋というごく普通のマンションでも、評価は2割強上がっています。タワーマンションだけの話ではないことが、この例から分かります。
適用がないもの:テナント・一棟賃貸・2階建て以下・二世帯
国税庁 タックスアンサー No.4667「居住用の区分所有財産の評価」
(1)構造上、主として居住の用途に供することができるもの以外のもの(事業用のテナント物件など)
(2)区分建物の登記がされていないもの(一棟所有の賃貸マンションなど)
(3)地階(登記簿上「地下」と記載されているものをいいます。以下同じです。)を除く総階数が2以下のもの(総階数2以下の低層の集合住宅など)
(4)一棟の区分所有建物に存する居住の用に供する専有部分一室の数が3以下であって、そのすべてを区分所有者またはその親族の居住の用に供するもの(いわゆる二世帯住宅など)
(5)たな卸商品等に該当するもの
一棟まるごと持っている賃貸マンションは区分建物の登記がないので対象外で、従来どおり建物は固定資産税評価額、敷地は貸家建付地で評価します。2階建て以下の低層の集合住宅、区分登記した二世帯住宅も対象外です。借地権付き分譲マンションの底地(貸宅地)の評価にも、この通達は適用されません。
評価が上がりやすいマンション、変わらないマンション
4つの要素から、評価が上がりやすいのは築浅・高層・高層階・敷地持分が小さいマンションです。都心のタワーマンションは全部に当てはまります。逆に、築古・低層・低層階・敷地がゆったりしているマンションは、評価水準が0.6以上になって補正がかからないことがあります。
上の計算例のように、築27年の11階建てでも補正がかかりました。「うちは古いから関係ない」とは言えません。登記簿と固定資産税の課税明細があれば計算できますので、相続の前に一度、補正後の評価額を出しておくことをお勧めします。
評価乖離率がゼロまたはマイナスの場合
築年数が非常に古いなどの理由で評価乖離率がゼロ以下になる場合は、区分所有権と敷地利用権の価額を評価しない(ゼロとする)扱いになっています(敷地利用権については一部例外があります)。実際にはまれですが、算式上そういう結果になることがある、ということです。
よくある質問
分譲マンションの相続税評価は令和6年から何が変わりましたか
令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した「居住用の区分所有財産」、いわゆる分譲マンションの一室は、法令解釈通達「居住用の区分所有財産の評価について」によって評価します。 対象は、区分所有建物(分譲マンション)の中の、登記簿上の種類に「居宅」を含む専有部分です。一室ごとに、建物部分(区分所有権)と土地部分(敷地利用権)を評価します。→ 本文で読む
分譲マンションの相続税評価額はどう計算しますか
従来の評価(建物は固定資産税評価額、土地は路線価×敷地全体の地積×敷地権割合)を出し、それぞれに 同じ区分所有補正率 を掛けます。補正率が1を超えれば評価額が上がり、1未満なら下がります。→ 本文で読む
マンションの評価乖離率はどう計算しますか
区分所有補正率は、まず「評価乖離率」を計算するところから始まります。評価乖離率は、市場価格が従来の評価額の何倍になっているかの推計値で、4つの要素から算出します。 敷地利用権の面積は、敷地全体の面積×敷地権の割合です。総階数指数は総階数を33で割った値で、33階以上はすべて1になります。→ 本文で読む
区分所有補正率はどう決まりますか
評価乖離率が出たら、その逆数(1÷評価乖離率)が「評価水準」です。従来の評価額が市場価格の何割かを表します。区分所有補正率は、評価水準の大きさで3つに分かれます。 従来の評価額が市場価格の6割を下回っているマンションは、6割の水準まで評価を引き上げる。6割以上なら手を付けない。市場価格を上回っていれば市場価格まで下げる。これが補正の趣旨です。タワーマンションの高層階は評価水準が0.6を大きく下回っていたので、評価が上がります。→ 本文で読む
区分所有補正率が適用されないマンションはありますか
一棟まるごと持っている賃貸マンションは区分建物の登記がないので対象外で、従来どおり建物は固定資産税評価額、敷地は貸家建付地で評価します。2階建て以下の低層の集合住宅、区分登記した二世帯住宅も対象外です。借地権付き分譲マンションの底地(貸宅地)の評価にも、この通達は適用されません。→ 本文で読む
どんなマンションが相続税評価が上がりやすいですか
4つの要素から、評価が上がりやすいのは 築浅・高層・高層階・敷地持分が小さい マンションです。都心のタワーマンションは全部に当てはまります。逆に、 築古・低層・低層階・敷地がゆったりしている マンションは、評価水準が0.6以上になって補正がかからないことがあります。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4667.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
お持ちのマンションの相続税評価を試算します。
登記簿(築年・総階数・所在階・敷地権割合)と固定資産税の課税明細があれば、区分所有補正率を計算して、補正前と補正後の評価額をお示しします。