節税
社会保険料控除は、
家族の分を払えば
自分から引けます
所得控除のなかで、金額に上限がなく、しかも工夫の余地があるものが社会保険料控除です。
国税庁は「自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合」と書いています。自分の分だけではありません。ここを使っていない方が、実際にはかなりいます。
控除できるのは「払った全額」
国税庁「No.1130 社会保険料控除」
納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができます。これを社会保険料控除といいます。
控除できる金額は、その年に実際に支払った金額または給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。
上限がありません。生命保険料控除が最高12万円、地震保険料控除が最高5万円で頭打ちなのに対して、こちらは払った分だけ全部引けます。
国民年金と国民健康保険を納めている個人事業主なら、年に数十万円から百万円を超えることもあります。所得控除のなかで、金額としてはいちばん大きくなりやすい項目です。
家族の分を払えば、自分から引けます
ここがこの記事の中心です。条文が「自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料」と書いているとおり、家族の保険料を自分が払えば、自分の所得から引けます。
効いてくる場面を挙げます。
- 20歳になった子の国民年金。学生でも20歳から国民年金の納付義務があります。子には所得がないので、子の側で控除しても意味がありません。親が払えば、親の所得から引けます。
- 配偶者の国民年金・国民健康保険。配偶者に所得がほとんどなければ、控除しきれません。所得の大きいほうから払うほうが有利です
- 親の介護保険料・後期高齢者医療保険料。生計を一にしていれば対象です。ただし年金から天引き(特別徴収)されている分は、その本人が払ったものとして扱われるため対象になりません。口座振替や納付書で自分が払った分が対象です
効果はその方の税率で決まります。子の国民年金を1年分(約21万円)親が払った場合、親の所得税率が20%なら住民税と合わせておよそ6万円負担が減ります。
「生計を一にする」は同居とは違います
下宿している学生の子、仕送りしている親。同居していなくても、生活費を送っていれば「生計を一にする」に当たります。扶養控除に入れているかどうかも要件ではありません。所得が58万円を超えて扶養から外れた子でも、その子の保険料を親が払えば親の控除になります。
国民年金の前納という手
控除できるのは「その年に実際に支払った金額」です。つまり、いつ払うかで、どの年の控除になるかが変わります。
国民年金には前納の制度があり、2年分をまとめて納めることができます。前納すると保険料そのものが割引されるうえ、払った年にまとめて控除する選択もできます。
使いどころは、今年だけ所得が大きく出た年です。前納して控除を今年に寄せれば、税率の高い年にぶつけられます。逆に、今年の所得が小さいなら急いで払う意味は薄くなります。
なお前納した保険料の控除の受け方には、払った年に全額とする方法と、各年分に分けて控除する方法があります。どちらを選ぶかは、年ごとの所得の見通し次第です。
過去のぶんをまとめて払った場合
未納だった年の保険料を、あとからまとめて納めることがあります。この場合も払った年の控除になります。
過年度分を2年、3年ぶんまとめて納めれば、その年の控除額が大きく膨らみます。所得が出た年に納めれば、そのぶん効きます。
ただし、控除しきれないほど大きな金額になると、使い切れずに捨てることになります。所得控除は繰り越せません。その年の所得を超える控除は、消えます。まとめて納めるなら、その年の所得と見比べてからにしてください。
どこまでが社会保険料か
国税庁は14項目を挙げています。よく出てくるものを抜き出します。
同上 社会保険料の範囲
1 健康保険、国民年金、厚生年金保険および船員保険の保険料で被保険者として負担するもの
2 国民健康保険の保険料または国民健康保険税
3 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料(後期高齢者医療)
4 介護保険法の規定による介護保険料
5 雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
6 国民年金基金の加入員として負担する掛金
…
10 労働者災害補償保険の特別加入者の規定により負担する保険料
2つ、間違えやすいものがあります。
国民年金基金は社会保険料控除です。iDeCoや小規模企業共済と混同されがちですが、あちらは小規模企業共済等掛金控除という別の欄です。申告書の書く場所が違います。
労災の特別加入も対象です。一人親方が任意で加入する労災保険の特別加入。これは事業の経費ではなく、社会保険料控除として所得から引きます。経費に入れてしまっている方が実際にいます。
使うときの注意
証明書の添付が要るものがあります
国税庁は「国民年金の保険料および国民年金基金の掛金に係る社会保険料控除の適用については、その保険料または掛金の金額を証する書類を、確定申告書または年末調整の際に提出する『給与所得者の保険料控除申告書』に添付するか、これらの申告書を提出する際に提示する必要があります」としています。
年末に届く「社会保険料控除証明書」がこれです。国民健康保険料には証明書の添付は求められていませんが、金額は自分で把握しておく必要があります。
最後に、当たり前ですが大事なことを。家族の分を払うなら、実際に自分が払ってください。口座から引き落とすなら自分の口座から、納付書なら自分が納める。形だけ「払ったことにする」のは通りません。お金の流れが説明できることが前提です。
出典
- 国税庁「No.1130 社会保険料控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
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