節税
生命保険料控除と
地震保険料控除。
上限は12万円と5万円
「保険に入れば節税になる」と言われます。間違いではありませんが、上限があります。
生命保険料控除は3つ合わせて最高12万円、地震保険料控除は最高5万円。所得控除なので、戻るのはその金額に税率を掛けたぶんです。実際にいくら戻るのかを、国税庁の表で確認します。
生命保険料控除は3つに分かれます
国税庁「No.1140 生命保険料控除」
納税者が生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを生命保険料控除といいます。
以下の計算により算出した各控除額の合計額が生命保険料控除額となります。なお、この合計額が120,000円を超える場合には、生命保険料控除額は120,000円となります。
3つの区分があり、それぞれ最高4万円。合計で最高12万円です。
| 区分 | 対象 | 上限 |
|---|---|---|
| 一般生命保険料 | 死亡保障などの生命保険 | 4万円 |
| 介護医療保険料 | 医療保険・がん保険・介護保険 | 4万円 |
| 個人年金保険料 | 税制適格特約の付いた個人年金 | 4万円 |
| 合計 | 12万円 | |
区分ごとに上限があるところが要点です。生命保険だけに年20万円払っていても、一般の区分で4万円が上限。3つの区分に分けて入っていて初めて12万円になります。
新契約の計算
同上 新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額
20,000円以下 …… 支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下 …… 支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下 …… 支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 …… 一律40,000円
読み取っておきたいのは、年8万円を超えて払っても、控除は4万円で止まるということです。
| 年間の支払保険料 | 控除額 | 1万円あたりの効き |
|---|---|---|
| 2万円 | 2万円(全額) | そのまま |
| 4万円 | 3万円 | 半分 |
| 8万円 | 4万円 | 4分の1 |
| 20万円 | 4万円 | ゼロ(8万円を超えた分は効きません) |
控除だけを目的にするなら、1区分あたり年8万円が上限ということになります。それ以上は税金の面では意味がありません。
平成23年以前の契約は計算が違います
同上 旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額
25,000円以下 …… 支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下 …… 支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下 …… 支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超 …… 一律50,000円
旧契約は1区分あたり最高5万円と、新契約より枠が大きいのが特徴です。ただし旧契約には「介護医療保険料」の区分がなく、一般と個人年金の2区分しかありません。
国税庁は「旧契約に基づくいわゆる第三分野とされる保険(医療保険や介護保険)の保険料も、旧生命保険料となります」としています。つまり平成23年以前の医療保険は、一般の区分に入ります。
新旧の両方に入っている場合は、区分ごとに有利なほうを選べます。ただし合計の上限は12万円のままです。古い契約を「控除の枠が大きいから」という理由だけで残している方は、保障の中身と合わせて一度見直す価値があります。
地震保険料控除は最高5万円
国税庁「No.1145 地震保険料控除」
(1) 地震保険料
50,000円以下 …… 支払金額の全額
50,000円超 …… 一律50,000円
(2) 旧長期損害保険料
10,000円以下 …… 支払金額の全額
10,000円超20,000円以下 …… 支払金額×1/2+5,000円
20,000円超 …… 15,000円
(1)・(2)両方がある場合 …… それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高50,000円)
地震保険料は5万円までなら全額が控除されます。生命保険料控除より効率がよい設計です。
注意点は火災保険料は対象外だということ。地震保険の部分だけが対象です。火災保険と地震保険をセットで契約している場合、控除証明書には地震部分の金額だけが書かれています。
平成18年以前の長期損害保険には経過措置があります
同上 旧長期損害保険に係る経過措置
(1)平成18年12月31日までに締結した契約
(2)満期返戻金等のあるもので保険期間または共済期間が10年以上の契約
(3)平成19年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの
古い積立型の火災保険が、この経過措置で控除の対象になっていることがあります。心当たりがあれば証券を確認してください。ただし国税庁は「一の損害保険契約等…に基づき、地震保険料および旧長期損害保険料の両方を支払っている場合には、納税者の選択によりいずれか一方の控除を受けることとなります」としています。両取りはできません。
結局いくら戻るのか
所得控除なので、戻るのは控除額 × 税率です。両方を満額使った場合で計算します。
| 課税所得 | 所得税+住民税 | 生保12万+地震5万=17万円の効果 |
|---|---|---|
| 300万円 | 20% | 約3.5万円 |
| 500万円 | 30% | 約5.2万円 |
| 800万円 | 33% | 約5.7万円 |
(住民税側の控除額は所得税と異なり上限が小さいため、実際の効果はこれより小さくなります。ここでは所得税の控除額に両方の税率を掛けた概算です。)
満額使っても年に3万円から6万円ほど。そのために年17万円の保険料を払っているわけですから、保険料そのものは戻ってきません。
保険で節税、を考える前に
この記事でお伝えしたいのは、枠が小さいということです。
比べてみてください。小規模企業共済は年84万円が全額控除、iDeCoも全額控除、社会保険料控除には上限がありません。それに対して生命保険料控除は12万円で頭打ちです。
節税の枠を広げたいなら、保険より先に使うべき制度があります。そして生命保険は本来、保障のために入るものです。
すでに枠が埋まっていないか、先に確認してください
「節税になるから」と勧められて追加で加入しても、その区分の枠がすでに8万円(旧契約なら10万円)に達していれば、税金は1円も減りません。年末に届く控除証明書を見れば、区分ごとの支払額が分かります。加入を決める前に、そこを確認してください。
出典
- 国税庁「No.1140 生命保険料控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm - 国税庁「No.1145 地震保険料控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
保険に入る前に、実際に戻る額を計算します。
控除の枠がすでに埋まっていれば、追加で入っても税金は1円も減りません。いま入っている保険の控除証明書を拝見すれば、枠が残っているかどうかがすぐ分かります。初回30分は無料です。