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消費税

簡易課税と本則課税、
どちらが得か。
計算して比べます

簡易課税は売上さえ集計すれば納税額が出ます。事務は圧倒的に楽です。

ですが楽なほうが得とは限りません。分かれ目は一つ、実際に払った消費税がみなし仕入率より多いか少ないかです。そして一度選ぶと2年は戻れません。計算のしかたと、判断の順番を書きます。

公開 最終更新

この記事の要点

簡易課税は事務が楽ですが、必ず得とは限りません。実際の経費率とみなし仕入率を比べれば、どちらが有利かは計算で出せます。設備投資をした年に還付を受けられない点、2年縛りで戻れない点まで、判断の順番を整理します。

分かれ目は一つだけ

比べるのは、この二つです。

本則課税売上の消費税 - 実際に払った消費税
簡易課税売上の消費税 - 売上の消費税 × みなし仕入率

どちらも「売上の消費税」から引きます。違うのは引く金額の作り方だけです。だから答えは単純で——

判定はこれだけです

実際の課税仕入れの割合が、みなし仕入率より低ければ簡易課税が有利。高ければ本則課税が有利。

たとえば第3種(建設業・製造業など)のみなし仕入率は70%です。実際に消費税のかかる支出が売上の70%より少なければ、簡易課税のほうが納税額は小さくなります。

実際に計算してみる

売上1,100万円(税込・すべて10%)の一人親方で比べます。みなし仕入率は第3種の70%とします。

課税仕入れ
(税込・消費税のかかる支出)
本則課税簡易課税
330万円(売上の30%)70万円30万円簡易が 40万円 有利
550万円(50%)50万円30万円簡易が 20万円 有利
770万円(70%)30万円30万円同じ
880万円(80%)20万円30万円本則が 10万円 有利
1,100万円(100%)0円30万円本則が 30万円 有利

売上の消費税は100万円。簡易課税はどの行でも 100万円-100万円×70%=30万円で変わりません。本則課税は課税仕入れの額に応じて動きます。

簡易課税の列がずっと30万円のままなのが要点です。実際にいくら使ったかを見ないので、経費が増えても納税額は変わりません。

逆転する経費率

上の表でいえば、逆転するのは課税仕入れが売上の70%になったところです。これはみなし仕入率そのものです。

事業区分みなし仕入率この割合を超えたら本則課税が有利
第1種(卸売業)90%課税仕入れが売上の90%超
第2種(小売業など)80%80%超
第3種(建設業・製造業など)70%70%超
第4種(飲食店業など)60%60%超
第5種(サービス業など)50%50%超
第6種(不動産業)40%40%超

「経費率」ではなく「課税仕入れの割合」です

ここで比べるのは消費税のかかる支出だけです。給与、社会保険料、保険料、税金は入りません。

人を雇っている事業は、経費率が高くても課税仕入れの割合は低くなります。人件費が大きい業種ほど、簡易課税が有利になりやすいということです。逆に材料や外注が多い一人親方は、本則課税が有利になることがあります。

還付が受けられない

もう一つ、金額の比較とは別の論点があります。

本則課税では、払った消費税が預かった消費税を上回れば、差額が還付されます。大きな設備投資をした年、建物を建てた年、開業して売上より支出が多い年などです。

簡易課税では還付は起きません。売上の消費税にみなし仕入率をかけて引くだけなので、引く額が預かった額を超えることがないからです。

投資の予定があるなら、先に確かめてください

簡易課税を選んでいる年に高額な設備を買うと、本則課税なら受けられたはずの還付を丸ごと失います。そして2年縛りがあるので、その年だけ本則に戻すこともできません。

賃貸物件の取得、店舗の改装、機械の入替え。2年先までの投資予定を並べてから選んでください。

簡易課税を選ぶと2年は戻れません

国税庁「No.6505 簡易課税制度」

簡易課税制度の適用を受けている事業者は、事業を廃止した場合を除き、「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出することはできません。

いったん選んだら、最低2年は簡易課税のままです。詳しくは届出と2年縛りの記事に書きました。

つまり判断は1年分の損得ではなく、2年分で見る必要があります。今年は簡易が有利でも、来年に大きな投資があるなら話が変わります。

判断の順番

1基準期間の課税売上高が5,000万円以下か。超えていれば簡易課税は使えません(届出を出していても適用されません)
2ご自身の事業区分とみなし仕入率を確認する。2種類以上の事業をしている場合は分けて計算します
3直近の決算で、課税仕入れが売上の何%かを出す。給与や保険料を除いた、消費税のかかる支出だけで計算します
42年先までの設備投資の予定を並べる。還付が見込まれる年があれば、簡易課税は選びません
5それでも簡易が有利なら、その年の前年末までに届出。期限を過ぎると1年待ちです

3までは去年の数字があれば計算できます。難しいのは4です。投資の予定は数字になっていないことが多いので、ここだけは話しながら詰める必要があります。

そして1年ごとに見直す価値があります。2年縛りが明けたあとも、事業の中身が変われば有利不利は入れ替わります。「一度決めたらそのまま」にしないでください。

よくある質問

簡易課税と本則課税を実際に計算するとどうなりますか?

売上1,100万円(税込・すべて10%)の一人親方で比べます。みなし仕入率は第3種の70%とします。 売上の消費税は100万円。簡易課税はどの行でも 100万円-100万円×70%=30万円で変わりません。本則課税は課税仕入れの額に応じて動きます。→ 本文で読む

経費率がいくらで有利・不利が逆転しますか?

上の表でいえば、逆転するのは 課税仕入れが売上の70%になったところ です。これはみなし仕入率そのものです。→ 本文で読む

簡易課税だと消費税の還付は受けられますか?

本則課税では、 払った消費税が預かった消費税を上回れば、差額が還付されます。 大きな設備投資をした年、建物を建てた年、開業して売上より支出が多い年などです。 簡易課税では 還付は起きません。 売上の消費税にみなし仕入率をかけて引くだけなので、引く額が預かった額を超えることがないからです。→ 本文で読む

簡易課税を選ぶと何年は戻れませんか?

いったん選んだら、 最低2年は簡易課税のままです。 詳しくは 届出と2年縛りの記事 に書きました。 つまり判断は 1年分の損得ではなく、2年分で見る 必要があります。今年は簡易が有利でも、来年に大きな投資があるなら話が変わります。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.6505 簡易課税制度」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm
  2. 国税庁「No.6401 仕入控除税額の計算方法」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6401.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

両方で計算して、金額を並べてお出しします。

昨年の決算書があれば、本則課税と簡易課税それぞれの納税額を計算できます。設備投資の予定があればそれも入れます。届出の期限から逆算してご連絡するので、決める前にご相談ください。初回30分は無料です。