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不動産

不動産所得が赤字のとき。
土地を買った借入金の利子の分は、給与から引けません

借入金でアパートを買った初年度は、減価償却と支払利子で不動産所得が赤字になることがよくあります。その赤字を給与から引いて、源泉徴収された税金を取り戻す。これが不動産所得の損益通算です。

ただし、赤字の全部が引けるわけではありません。借入金のうち土地の分の利子は、制限の対象です。国税庁のタックスアンサーNo.1391で、引ける赤字と引けない赤字を分けます。

公開 最終更新

この記事の要点

不動産所得の赤字は給与など他の所得から引けます(損益通算)。ただし、土地の取得に充てた借入金の利子に相当する赤字と、別荘など趣味・保養目的の不動産の赤字は対象外。特定組合員や信託の受益者の赤字、国外中古建物の簡便法による減価償却の赤字は「なかったもの」とされます。国税庁タックスアンサーNo.1391をもとに整理しました。

原則:不動産所得の赤字は、他の所得から引ける

不動産所得は、総収入金額から必要経費を引いて計算します。その結果が赤字なら、給与所得や事業所得など他の黒字の所得から差し引くことができます。これが損益通算です。

国税庁 タックスアンサー No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

この結果、不動産所得の損失(赤字)の金額があるときは、他の黒字の所得金額から差し引くことができます(損益通算)。
ただし、不動産所得の金額の損失のうち、次に掲げる損失の金額は、損益通算の対象となりません。

会社員が賃貸物件を持つ場合、この仕組みで所得税の還付を受けられることがあります。ただし「ただし」以下が本題です。引けない赤字が2種類、なかったものとされる赤字が2種類あります。

土地の取得に充てた借入金の利子は、対象外

不動産所得の赤字のうち、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分は、損益通算の対象になりません。

国税庁 タックスアンサー No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

2 不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額

誤解しやすいので整理します。土地の借入利子は必要経費にはなります。不動産所得の計算では引けます。引けないのは、その結果として出た赤字のうち、土地の利子に相当する部分を他の所得から引くことです。

言い換えると、赤字の額と土地の利子の額を比べて、

  • 赤字 ≦ 土地の利子 … 赤字の全額が通算できない(赤字はなかったものと同じ)
  • 赤字 > 土地の利子 … 赤字から土地の利子を引いた残りだけ通算できる

という計算になります。建物の取得に充てた借入金の利子には、この制限はありません。建物の利子で出た赤字は、そのまま給与から引けます。

なぜ土地だけが制限されるのか

土地は減価償却しないので、借入金で土地を買えば、利子の分だけ毎年赤字が作れます。値上がりを待って売れば、その間の赤字で給与の税金を減らし、売却益は分離課税の低い税率で済む。そういう使い方を防ぐための制限です。建物は減価償却で費用化され、いずれ価値がなくなるものなので、制限されていません。

土地と建物を一括で買った場合の按分

アパートを土地付きで買い、借入金も一本の場合、借入金のうちいくらが土地の分かを決める必要があります。売買契約書に土地と建物の価額が分かれて書いてあれば、その比率で借入金を按分します。

契約書に区分がなければ、固定資産税評価額の比などで合理的に按分します。按分した「土地分の借入金」に、その年の利率を掛けたものが「土地等を取得するために要した負債の利子」です。借入金の返済が進めば、土地分の残高も減り、利子も減ります。

自己資金と借入金を併用した場合は、借入金をまず建物に充てたものとして計算できる取扱いがあります。土地分の借入金が小さくなるので、通算できる赤字が増えます。契約書と資金の流れを見て判断しますので、初年度の申告前に確認してください。

別荘など趣味・保養目的の不動産の赤字

もう一つ、主として趣味・娯楽・保養・鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けから生じた赤字も、損益通算の対象外です。

国税庁 タックスアンサー No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

1 別荘等のように主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係るもの

自分が使わない時期だけ別荘を貸している場合、その赤字は給与から引けません。「貸している」という形があっても、主たる目的が保養なら、生活に通常必要でない資産の貸付けと見られます。リゾートマンションも同じ扱いになりやすいので、赤字を前提に買う判断は避けてください。

組合・信託・国外中古建物の赤字は「なかったもの」

上の2つとは別に、赤字そのものが「生じなかったものとみなされる」場合があります。この場合、他の所得との損益通算だけでなく、他の不動産所得の黒字との内部通算もできません

赤字の種類No.1391の記載
特定組合員・信託の受益者の赤字不動産所得を生ずべき事業を行う民法組合等の特定組合員または信託の受益者である個人が、組合事業または信託から生じた不動産所得の損失については、生じなかったものとみなされ、他の不動産所得の黒字から差し引くことができませんし、損益通算の対象にもなりません
国外中古建物の簡便法による減価償却の赤字(令和3年以後)耐用年数を「簡便法」により計算した国外中古建物の減価償却費に相当する部分の金額については、生じなかったものとみなされます

特定組合員とは、組合の重要な業務の決定に関与せず、契約の交渉も自ら行わない個人組合員です。投資として出資しているだけの立場なら、ここに当たります。不動産投資の組合や信託に出資して赤字の分配を受けても、その赤字は使えません。

国外中古建物は、海外の築古の建物を簡便法の短い耐用年数で償却して大きな赤字を作る手法への対応です。令和3年分以後、簡便法による減価償却費に相当する赤字はなかったものとされ、国内の物件の黒字とも通算できません。

申告書のどこに書くか

土地の借入利子の制限は、確定申告書の「土地等を取得するために要した負債の利子の額」の欄に金額を記入することで反映されます。青色申告決算書(不動産所得用)や収支内訳書にも同じ欄があります。ここを空欄にすると、赤字の全額が通算されたことになり、後で否認されます。

不動産所得が赤字の年は、この欄の金額を必ず確認してください。土地分の借入金の按分計算は、初年度に一度きちんと作れば、翌年以降は残高を更新するだけです。

よくある質問

不動産所得が赤字のとき、給与所得から引けますか

不動産所得は、総収入金額から必要経費を引いて計算します。その結果が赤字なら、給与所得や事業所得など他の黒字の所得から差し引くことができます。これが損益通算です。 会社員が賃貸物件を持つ場合、この仕組みで所得税の還付を受けられることがあります。ただし「ただし」以下が本題です。引けない赤字が2種類、なかったものとされる赤字が2種類あります。→ 本文で読む

土地を買った借入金の利子は不動産所得の経費になりますか

不動産所得の赤字のうち、 土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分 は、損益通算の対象になりません。 誤解しやすいので整理します。土地の借入利子は 必要経費にはなります 。不動産所得の計算では引けます。引けないのは、その結果として出た赤字のうち、土地の利子に相当する部分を 他の所得から引くこと です。→ 本文で読む

土地と建物を一括で買った場合、借入金の利子はどう分けますか

アパートを土地付きで買い、借入金も一本の場合、借入金のうちいくらが土地の分かを決める必要があります。売買契約書に土地と建物の価額が分かれて書いてあれば、その比率で借入金を按分します。→ 本文で読む

別荘を貸して赤字になった場合、損益通算できますか

もう一つ、 主として趣味・娯楽・保養・鑑賞の目的で所有する不動産 の貸付けから生じた赤字も、損益通算の対象外です。 自分が使わない時期だけ別荘を貸している場合、その赤字は給与から引けません。「貸している」という形があっても、主たる目的が保養なら、生活に通常必要でない資産の貸付けと見られます。リゾートマンションも同じ扱いになりやすいので、赤字を前提に買う判断は避けてください。→ 本文で読む

不動産投資の組合から赤字が分配された場合、給与から引けますか

上の2つとは別に、赤字そのものが「生じなかったものとみなされる」場合があります。この場合、他の所得との損益通算だけでなく、 他の不動産所得の黒字との内部通算もできません 。 特定組合員とは、組合の重要な業務の決定に関与せず、契約の交渉も自ら行わない個人組合員です。投資として出資しているだけの立場なら、ここに当たります。不動産投資の組合や信託に出資して赤字の分配を受けても、その赤字は使えません。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

借入金の内訳を、土地と建物に分けてお持ちください。

売買契約書の土地・建物の価額と、借入金の額。この2つで、給与から引ける赤字の額が決まります。初年度の申告前にご相談ください。