消費税
出張の日当と通勤手当は、インボイスがなくても消費税を控除できます。
海外出張は対象外です
従業員に払う出張の日当や通勤手当は、給与の一種のようでいて、消費税では課税仕入れとして扱われます。しかも、インボイスを受け取れない支払いなのに、帳簿の記載だけで控除できます。
ここを「給与だから対象外」と処理している会社は、控除できる消費税を毎年捨てています。反対に、海外出張の旅費まで課税仕入れにしている会社は、控除しすぎです。国税庁のタックスアンサーNo.6459で、線を確認します。
この記事の要点
国内出張の旅費・宿泊費・日当のうち通常必要な部分は課税仕入れになり、帳簿の記載だけで仕入税額控除ができます。通勤手当は所得税の非課税限度額を超えていても全額が課税仕入れです。海外出張の旅費は原則として課税仕入れになりません。国税庁タックスアンサーNo.6459をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
国内出張の旅費・宿泊費・日当は課税仕入れ
国内の出張や転勤のために役員や従業員に支給した出張旅費・宿泊費・日当は、そのうちその旅行について通常必要であると認められる部分が課税仕入れになります。会社が交通機関やホテルに直接払った場合だけでなく、従業員に定額で支給した日当も含まれます。
国税庁 タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
国内の出張または転勤のために、役員または使用人に対して支給した出張旅費、宿泊費、日当については、支給した金額のうちその旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れになります。
日当は、従業員が実際に何にいくら使ったかを問わずに定額で払うものです。従業員の側では所得税が非課税になり、会社の側では消費税の課税仕入れになります。領収書のない支出なのに控除できる、消費税の中では珍しい取扱いです。
「通常必要であると認められる部分」とは
課税仕入れになるのは「通常必要であると認められる部分」に限られます。所得税で旅費が非課税になる範囲と同じ考え方で、その旅行の目的・期間・行き先に照らして相当な金額かどうかで判断します。
目安になるのは、会社の旅費規程です。役職ごとの日当の額、宿泊費の上限、交通手段の基準を定めていて、それが世間の相場から大きく外れていなければ、規程にもとづいて払った額は「通常必要」と扱われるのが実務です。逆に、規程がなく役員だけに高額の日当を払っている場合は、所得税でも消費税でも「通常必要」の範囲を超えるとされる恐れがあります。
旅費規程は、所得税・社会保険・消費税の3つに同時に効きます
規程にもとづく日当は、従業員の所得税が非課税、社会保険の報酬にも入らず、会社では課税仕入れとして消費税を控除できます。規程がないと、この3つがすべて逆に転びます。一人会社でも作る価値があります。ただし、出張の実態(行き先・日程・目的)を記録していなければ規程だけあっても意味がありません。
海外出張の旅費は課税仕入れにならない
海外への出張や転勤のために支給した旅費・宿泊費・日当は、原則として課税仕入れになりません。国内での消費ではないからです。
国税庁 タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
ただし、海外への出張または転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当は原則として課税仕入れになりません。
会計ソフトで「旅費交通費」を一律に課税仕入れに設定していると、海外出張の分まで控除してしまいます。海外出張が多い会社は、国内と海外で補助科目や税区分を分けてください。国際線の航空券は免税(輸出免税)で消費税がかかっていませんし、現地の宿泊費・食事代は日本の消費税の対象外です。
なお、国内の空港までの交通費や、国内の空港での支出は国内取引ですので、課税仕入れになります。海外出張の全部が対象外なのではなく、「海外への出張のために支給した」旅費が対象外、という整理です。実務では、国内区間と海外区間を分けて記録しておくのが確実です。
通勤手当は、所得税の非課税限度を超えても全額が課税仕入れ
従業員に支給する通勤手当(定期券の現物支給を含む)のうち、通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上の非課税限度額を超えていても、その全額が課税仕入れになります。
国税庁 タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
事業者が使用人等に支給する通勤手当(通勤定期等の現物による支給を含む。)のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、その全額が課税仕入れになります。
所得税では通勤手当の非課税に月額の上限があり、それを超えた部分は給与として課税されます。しかし消費税では、その上限とは関係なく、通勤に通常必要な範囲であれば全額が課税仕入れです。所得税で課税になった部分を、消費税でも「給与だから不課税」にしてしまうのが、よくある間違いです。
ただし「通勤のために通常必要とする範囲内」という限定はあります。実際の通勤経路の定期代を大きく超える手当や、通勤の実態のない役員への手当は、範囲を超えます。
| 支給 | 消費税の取扱い(No.6459) | 備考 |
|---|---|---|
| 国内出張の交通費・宿泊費・日当 | 課税仕入れ | 通常必要と認められる部分に限る |
| 海外出張の交通費・宿泊費・日当 | 課税仕入れにならない | 原則。国内区間は別に考える |
| 通勤手当(現金・定期券) | 全額が課税仕入れ | 所得税の非課税限度を超えていても |
| 給与・賞与そのもの | 不課税 | 労務の対価は課税仕入れでない |
インボイスがなくても、帳簿の記載だけで控除できる
出張旅費や通勤手当は、従業員に払うものなので、インボイス(適格請求書)を受け取れません。それでも、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます。
国税庁 タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
これら課税仕入れとなる金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存により仕入税額控除が可能とされています。
帳簿には、通常の記載事項(相手方の氏名、取引年月日、内容、金額)に加えて、帳簿のみの保存で控除を受ける取引であることが分かる記載(「出張旅費等特例」など)が必要です。会計ソフトによっては、税区分に「帳簿のみ保存」の区分が用意されています。摘要欄に「○○出張 日当」「△月分 通勤手当」と書いておけば、後から見ても分かります。
従業員が立て替えた新幹線代やホテル代を、領収書と引き換えに実費で精算する場合も、この特例の対象です。国税庁のインボイスQ&A(問107-2)は、社員への支給には概算払のほか実費精算も含まれるとして、その旅行に通常必要であると認められる部分は帳簿のみの保存で控除できるとしています(消費税法施行令49条1項1号ニ、同施行規則15条の4第2号)。
国税庁「インボイス制度に関するQ&A」問107-2(実費精算の出張旅費等)
この社員に対する支給には、概算払によるもののほか、実費精算されるものも含まれますので、実費精算に係るものであっても、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、帳簿のみの保存で仕入税額控除を行うことができます。
押さえておく点は3つです。
- 対象は「通常必要と認められる部分」まで … この範囲は所得税基本通達9-3(非課税とされる旅費の範囲)で判定します。つまり従業員の所得税が非課税になる範囲内です(Q&A問107)。それを超える部分は従業員への給与にあたり、課税仕入れになりません
- 会社が用務先に直接払ったのと同視できる場合は特例の対象外 … 実費精算でも、実質的に会社がホテルや交通機関へ直接対価を払っていると同視できる場合は、通常の課税仕入れと同じく、帳簿に加えて従業員から回収したインボイス(適格請求書)の保存が要ります。宛名が従業員名の適格簡易請求書でも、従業員名簿等(名簿がなければ従業員が作成した立替金精算書)とあわせて保存すれば、会社の仕入税額控除に使えます(Q&A問94-2)。この場合でも、3万円未満の公共交通機関の運賃なら公共交通機関特例で帳簿のみの保存で足ります
- 領収書は捨てない … 帳簿のみの保存で控除できる場合でも、実費精算の証拠として従業員から回収した領収書は、精算の根拠・所得税の非課税判定の資料として保存しておくのが安全です
公共交通機関特例など、帳簿だけで済むほかの取引は帳簿だけで済む取引の記事にまとめています。
仕訳で間違えやすいところ
この論点で実際に起きているミスを並べます。
- 通勤手当を給与と一緒に「不課税」にしている … 給与計算ソフトから会計ソフトに連携するとき、通勤手当も給与の一部として不課税で取り込まれることがあります。通勤手当だけ課税仕入れに直す必要があります
- 日当を「給与」として不課税にしている … 旅費規程にもとづく日当は課税仕入れです
- 海外出張の旅費を課税仕入れにしている … 旅費交通費を一律に課税にしていると起きます
- 出張先での取引先との飲食を旅費に入れている … これは交際費であり、旅費ではありません。消費税の区分は課税仕入れで同じですが、法人税の扱いが違います
金額としては1件ずつ小さいですが、通勤手当は毎月、全員分です。年間で見ると控除漏れの額は無視できません。税区分は、給与関係の科目を一つずつ確認するのが早道です。
よくある質問
出張の日当は消費税の課税仕入れになりますか
国内の出張や転勤のために役員や従業員に支給した出張旅費・宿泊費・日当は、そのうち その旅行について通常必要であると認められる部分 が課税仕入れになります。会社が交通機関やホテルに直接払った場合だけでなく、従業員に定額で支給した日当も含まれます。→ 本文で読む
出張旅費のうち課税仕入れになる「通常必要な部分」とは何ですか
課税仕入れになるのは「通常必要であると認められる部分」に限られます。所得税で旅費が非課税になる範囲と同じ考え方で、その旅行の目的・期間・行き先に照らして相当な金額かどうかで判断します。→ 本文で読む
海外出張の旅費は消費税を控除できますか
海外への出張や転勤のために支給した旅費・宿泊費・日当は、 原則として課税仕入れになりません 。国内での消費ではないからです。 会計ソフトで「旅費交通費」を一律に課税仕入れに設定していると、海外出張の分まで控除してしまいます。海外出張が多い会社は、国内と海外で補助科目や税区分を分けてください。国際線の航空券は免税(輸出免税)で消費税がかかっていませんし、現地の宿泊費・食事代は日本の消費税の対象外です。→ 本文で読む
通勤手当は消費税の課税仕入れになりますか
従業員に支給する通勤手当(定期券の現物支給を含む)のうち、通勤のために通常必要とする範囲内のものは、 所得税法上の非課税限度額を超えていても、その全額が課税仕入れ になります。 所得税では通勤手当の非課税に月額の上限があり、それを超えた部分は給与として課税されます。しかし消費税では、その上限とは関係なく、通勤に通常必要な範囲であれば全額が課税仕入れです。 所得税で課税になった部分を、消費税でも「給与だから不課税」にしてしまう のが、よくある間違いです。→ 本文で読む
出張旅費や通勤手当はインボイスがなくても控除できますか
出張旅費や通勤手当は、従業員に払うものなので、インボイス(適格請求書)を受け取れません。それでも、 一定の事項を記載した帳簿のみの保存 で仕入税額控除ができます。 帳簿には、通常の記載事項(相手方の氏名、取引年月日、内容、金額)に加えて、帳簿のみの保存で控除を受ける取引であることが分かる記載(「出張旅費等特例」など)が必要です。会計ソフトによっては、税区分に「帳簿のみ保存」の区分が用意されています。摘要欄に「○○出張 日当」「△月分 通勤手当」と書いておけば、後から見ても分かります。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm - 国税庁「インボイス制度に関するQ&A」問107・問107-2・問94-2
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_invoice_mokuji.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
旅費規程の作り方から、税区分の設定までご相談ください。
日当を経費にするには旅費規程が要ります。所得税・社会保険・消費税の三方から見て問題のない規程と、会計ソフトの税区分の設定を、まとめて整えます。
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