不動産
家賃はいつの収入か。契約で決めた支払日が基準です。
未収でも計上し、敷金は返さないと決まった日に収入になります
12月分の家賃が翌年1月に振り込まれた。入居者が3か月滞納している。退去時に敷金から原状回復費を引いた。こうした場面で「今年の収入はいくらか」を決めるルールが、収入計上時期です。
原則は契約で決めた支払日。入金日ではありません。国税庁のタックスアンサーNo.1376で、家賃・礼金・敷金それぞれの計上時期を確認します。
この記事の要点
家賃・地代・共益費は、契約で支払日が決まっていればその日、決まっていなければ実際に受け取った日の収入です。滞納していても支払日が来れば収入に計上します。礼金・権利金は引渡しの日(引渡し不要なら契約の効力発生日)、敷金・保証金は預り金ですが、返さないことが確定した日に収入になります。国税庁タックスアンサーNo.1376をもとに整理しました。
家賃・地代・共益費:契約で決めた支払日
家賃・地代・共益費などは、契約や慣習で支払日が定められている場合はその支払日、定められていない場合は実際に支払を受けた日の収入です。請求があったときに支払う定めなら、請求の日です。
国税庁 タックスアンサー No.1376「不動産所得の収入計上時期」
(1) 契約や慣習などにより支払日が定められている場合は、その定められた支払日
(2) 支払日が定められていない場合は、実際に支払を受けた日
ただし、請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日
賃貸借契約書には、ほぼ必ず「翌月分を当月末日までに支払う」といった支払日の定めがあります。この場合、その支払日がその家賃の収入計上日です。入金が遅れても早まっても、計上日は変わりません。
前払いの契約で「1月分の家賃を12月末に支払う」となっている場合、12月末が支払日ですから、1月分の家賃は前年の12月の収入になります。年末に翌年1月分が入金されているときに「来年の分だから来年の収入」とすると、契約上の支払日と食い違います。契約書の支払日の条項を確認してください。
滞納していても、支払日が来れば収入
支払日基準の帰結として、入居者が家賃を滞納していても、契約の支払日が来ていれば、その家賃はその年の収入に計上します。もらっていないお金が収入になるということです。
実際に入金されていない分は、未収賃貸料として帳簿に残します。翌年に回収すれば、その時点で未収が消えるだけで、翌年の収入にはなりません。回収できないことが確定すれば、その時点で貸倒れの処理を検討しますが、貸倒れとして経費にできる範囲には条件があります。
「入金ベースで申告」は原則ではありません
通帳に入った金額を集計して収入にしている方が多いのですが、それが正しくなるのは支払日と入金日が毎回一致している場合だけです。年末に滞納があるとき、年をまたぐ入金があるとき、前払い契約のとき。この3つの場面では、入金ベースと支払日ベースがずれます。
礼金・権利金:引渡しの日、または契約の効力発生日
家屋や土地を貸すときに一時に受け取る権利金や礼金は、貸す資産の引渡しを必要とするものは引渡しの日、引渡しを必要としないものは契約の効力発生の日の収入です。名義書換料・承諾料・頭金などの名目で受け取るものも同じです。
国税庁 タックスアンサー No.1376「不動産所得の収入計上時期」
家屋または土地を賃貸することにより一時に受け取る権利金や礼金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、引渡しを必要としないものについては、契約の効力発生の日の収入に計上します。
このほか、名義書換料、承諾料、頭金などの名目で受け取るものについても同様です。
アパートの礼金なら、部屋の引渡し(鍵の受け渡し)の日です。12月に契約して礼金を受け取り、入居(引渡し)が翌年1月なら、礼金は翌年の収入になります。契約日と入金日で判断すると間違えます。
敷金・保証金:返さないことが確定した日
敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入ではありません。ただし、返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日に、その金額を収入に計上します。
国税庁 タックスアンサー No.1376「不動産所得の収入計上時期」
敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入にはなりませんが、返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日にその金額を収入に計上する必要があります。
「返還を要しないことが確定した日」は、契約の内容で変わります。
| 契約の内容 | 返還を要しないことが確定する日 | 収入計上 |
|---|---|---|
| 敷金のうち一定額を償却する(返さない)と契約時に決まっている | 契約時(引渡し時) | その年に償却分を収入 |
| 退去時に原状回復費を差し引いて残りを返す | 退去時に差引額が決まった日 | 退去した年に差引分を収入 |
| 全額を返す契約 | 確定しない | 収入にならない(預り金のまま) |
「敷引き」「償却」という言葉が契約書にあれば、その分は最初から返さないお金です。退去時まで預り金のままにしておくと、収入の計上が遅れます。逆に、退去時の原状回復費との相殺分は、退去した年の収入です。
争いがある場合:判決・和解の日
賃貸借契約があるかないかで争いになり、判決や和解で貸主が係争期間中の賃料相当額を受け取ることになった場合は、判決や和解のあった日の収入です。争いの間、収入を計上しなくてよいということです。
国税庁 タックスアンサー No.1376「不動産所得の収入計上時期」
賃貸借契約の存否の係争等(未払賃貸料の請求に関する係争を除きます。)に係る判決、和解等により不動産の所有者等が受け取ることになった係争期間中の賃貸料相当額については、その判決、和解等のあった日
ただし「未払賃貸料の請求に関する係争を除きます」とあります。契約があることに争いはなく、単に払ってくれないという滞納の争いは、ここには入りません。滞納は、契約の支払日基準のままです。また、賃料の額に争いがあって供託された金額は、原則どおり支払日(または受取日)で計上します。
年末の集計で確認すること
不動産所得の収入を確定するとき、確認するのは次の4点です。
- 契約書の支払日 … 前払いか後払いか。年末年始をまたぐ家賃がどちらの年に入るか
- 滞納の有無 … 未入金でも支払日が来た分は収入。未収賃貸料として残す
- 年内の新規契約 … 礼金は引渡しの日。敷金の償却分は契約時
- 年内の退去 … 敷金から差し引いた原状回復費相当額は、その年の収入
通帳の入金合計と、この4点で確定した収入が一致しないことは普通にあります。一致しないのが正しい、という場面のほうが多いくらいです。
よくある質問
家賃はいつの年の収入として申告しますか
家賃・地代・共益費などは、契約や慣習で 支払日が定められている場合はその支払日 、定められていない場合は実際に支払を受けた日の収入です。請求があったときに支払う定めなら、請求の日です。→ 本文で読む
滞納されている家賃も収入に計上しますか
支払日基準の帰結として、入居者が家賃を滞納していても、契約の支払日が来ていれば、その家賃はその年の収入に計上します。 もらっていないお金が収入になる ということです。 実際に入金されていない分は、未収賃貸料として帳簿に残します。翌年に回収すれば、その時点で未収が消えるだけで、翌年の収入にはなりません。回収できないことが確定すれば、その時点で貸倒れの処理を検討しますが、貸倒れとして経費にできる範囲には条件があります。→ 本文で読む
礼金や権利金はいつの収入になりますか
家屋や土地を貸すときに一時に受け取る権利金や礼金は、貸す資産の 引渡しを必要とするものは引渡しの日 、引渡しを必要としないものは 契約の効力発生の日 の収入です。名義書換料・承諾料・頭金などの名目で受け取るものも同じです。→ 本文で読む
敷金や保証金は収入になりますか
敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入ではありません。ただし、 返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日 に、その金額を収入に計上します。 「敷引き」「償却」という言葉が契約書にあれば、その分は最初から返さないお金です。退去時まで預り金のままにしておくと、収入の計上が遅れます。逆に、退去時の原状回復費との相殺分は、退去した年の収入です。→ 本文で読む
家賃について裁判中の場合、収入はいつ計上しますか
賃貸借契約があるかないかで争いになり、判決や和解で貸主が係争期間中の賃料相当額を受け取ることになった場合は、 判決や和解のあった日 の収入です。争いの間、収入を計上しなくてよいということです。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1376 不動産所得の収入計上時期」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1376.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
年末の家賃の締めは、契約書と入金の両方で確認します。
支払日ベースの収入、滞納分、敷金の償却。賃貸借契約書と通帳をお預かりして、その年の収入を確定します。