不動産
不動産の貸付けを始めたときの届出。
青色申告は開業から2か月以内、償却方法の届出は翌年3月15日まで
相続したアパートの家賃が入り始めた。転勤で自宅を貸した。マンションを買って貸した。不動産の貸付けが始まると、税務署に出す書類があります。
出さなくても罰則のないものが多いのですが、青色申告の承認申請だけは期限を過ぎるとその年は使えません。国税庁のタックスアンサーNo.1399に沿って、4つの届出を期限の順に整理します。
この記事の要点
事業的規模の貸付けなら開業届を確定申告期限まで、その年から青色申告にするなら開業から2か月以内(1月15日以前の開業なら3月15日まで)に承認申請書を提出。事業的規模で親族に給与を払うなら専従者給与の届出も。償却方法の届出は翌年3月15日までで、建物は定額法のみ、平成28年4月以後の建物附属設備・構築物も定額法のみです。国税庁タックスアンサーNo.1399をもとに整理しました。
開業届:事業的規模なら、確定申告期限まで
事業的規模の不動産貸付けを始めたときは、開業の日の属する年分の確定申告期限までに「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
国税庁 タックスアンサー No.1399「新たに不動産の貸付けを始めたときの届出など」
事業的規模の不動産貸付けを開始したときは、開業の日の属する年分の確定申告期限までに「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出することが必要です。
「事業的規模」という条件が付いています。おおむね5棟10室以上が目安で、マンションを1室貸しているだけなら事業的規模ではありませんので、開業届は不要です。事業的規模の判定は別の記事に書きました。
期限は「確定申告期限まで」ですから、貸付けを始めた翌年の3月15日です。急ぐ届出ではありませんが、次の青色申告の承認申請と一緒に出してしまうのが実務です。
青色申告の承認申請:開業から2か月以内
貸付けを始めた年分から青色申告をするには、開業の日から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を提出して承認を受けます。その年の1月15日以前に開業した場合は、3月15日までです。
国税庁 タックスアンサー No.1399「新たに不動産の貸付けを始めたときの届出など」
不動産の貸付けを始めた年分から青色申告をしようとする場合は、開業の日から2か月以内(その年の1月15日以前に開業した場合は3月15日まで)に「所得税の青色申告承認申請書」を提出して承認を受ける必要があります。
ここは事業的規模かどうかを問いません。マンション1室の貸付けでも青色申告はできます。事業的規模でなければ青色申告特別控除は10万円ですが、赤字の繰越しなど、青色申告の他の利点は使えます。
期限を過ぎると、その年は白色申告です。「開業の日から2か月」は短く、家賃が入り始めて落ち着いたころには過ぎています。貸付けの契約をした時点で、承認申請を出しておいてください。
「開業の日」はいつか
不動産の貸付けの開業日は、一般に、貸付けを開始した日(賃貸借契約の効力が生じた日や引渡しの日)です。物件を買った日ではありません。ただし、相続で引き継いだ場合は相続開始の日から貸付けが始まっているとされますので、相続の直後に承認申請の期限が来ることになります。相続の場合の期限は別の定めがあり、相続開始の時期によって変わりますので、個別に確認してください。
専従者給与の届出:事業的規模で親族に給与を払うなら
不動産貸付けを事業的規模で営んでいて、その貸付業に専ら従事する親族に給与を払い、それを必要経費にしたい場合は、青色申告の承認申請のほかに「青色事業専従者給与に関する届出書」を出します。期限は、経費にしようとする年の3月15日まで(1月16日以後に開業した人や新たに専従者ができた人は、その日から2か月以内)です。
国税庁 タックスアンサー No.1399「新たに不動産の貸付けを始めたときの届出など」
不動産貸付けを事業的規模で営んでいる人が、その貸付業に専ら従事する親族のうち一定の人に給与を支払うこととした場合には、青色申告の承認申請のほかに、青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2か月以内)に「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出する必要があります。
事業的規模でない場合、配偶者に管理を手伝ってもらっていても給与を経費にはできません。また、事業的規模であっても、届出を出していなければ経費になりません。専従者給与の要件は別の記事に書きました。
償却方法の届出:翌年3月15日まで。建物は定額法のみ
減価償却の方法を選ぶ人は「減価償却資産の償却方法の届出書」を、開業した年の翌年3月15日までに提出します。出さなければ法定の償却方法(一般に定額法)になります。
国税庁 タックスアンサー No.1399「新たに不動産の貸付けを始めたときの届出など」
平成10年4月1日以後に取得(売買に限らず、相続、遺贈または贈与により取得した場合も含みます。)した建物については、旧定額法または定額法のみとなり、旧定率法または定率法を選択することはできません。
また、平成28年4月1日以後に取得(売買に限らず、相続、遺贈または贈与により取得した場合も含みます。)した建物附属設備および構築物についても、定額法のみとなり、定率法を選択することはできません。
建物は平成10年4月以後の取得なら定額法しか選べません。建物附属設備(エレベーター、給排水設備など)と構築物(塀、駐車場の舗装など)も、平成28年4月以後の取得なら定額法のみです。賃貸物件の減価償却資産のほとんどは、いまや定額法しか選べません。届出を出す意味があるのは、器具備品(エアコンなど)や車両で定率法を選びたい場合くらいです。
「相続、遺贈または贈与により取得した場合も含みます」とあるとおり、相続で引き継いだ建物も、相続した日を取得日として判定します。被相続人が定率法で償却していた建物でも、相続人は定額法になります。
4つの届出を期限順に
| 届出 | 誰が | 期限 |
|---|---|---|
| 所得税の青色申告承認申請書 | その年から青色申告にしたい人(規模を問わない) | 開業から2か月以内(1月15日以前の開業は3月15日) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 事業的規模で親族に給与を払う人 | その年の3月15日(開業などが1月16日以後なら、その日から2か月以内) |
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業的規模の人 | 開業した年分の確定申告期限(翌年3月15日) |
| 減価償却資産の償却方法の届出書 | 法定以外の償却方法を選ぶ人 | 開業した年の翌年3月15日 |
提出先は、いずれも納税地(通常は住所地)を所轄する税務署長です。物件の所在地の税務署ではありません。
転勤で自宅を貸す方へ
転勤で自宅を貸す場合も、不動産所得が生じ、届出の対象になります。事業的規模ではないので開業届と専従者給与の届出は関係ありませんが、青色申告の承認申請は出す価値があります。自宅を貸す初年度は、仲介手数料や修繕費で赤字になることがあり、青色申告なら赤字を翌年以降に繰り越せるからです。
転勤中の貸付けは、戻ってきたときに住宅ローン控除を再開できるかどうか、将来売るときに3,000万円控除が使えるかどうか、という別の論点も伴います。貸し始める前に、全体を確認しておくことをお勧めします。
よくある質問
不動産の貸付けを始めたら開業届は必要ですか
事業的規模 の不動産貸付けを始めたときは、開業の日の属する年分の確定申告期限までに「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。 「事業的規模」という条件が付いています。おおむね5棟10室以上が目安で、マンションを1室貸しているだけなら事業的規模ではありませんので、開業届は不要です。事業的規模の判定は 別の記事 に書きました。→ 本文で読む
不動産所得で青色申告をするには、いつまでに申請しますか
貸付けを始めた年分から青色申告をするには、 開業の日から2か月以内 に「所得税の青色申告承認申請書」を提出して承認を受けます。その年の1月15日以前に開業した場合は、3月15日までです。→ 本文で読む
アパート経営で配偶者に給与を払って経費にできますか
不動産貸付けを 事業的規模 で営んでいて、その貸付業に専ら従事する親族に給与を払い、それを必要経費にしたい場合は、青色申告の承認申請のほかに「青色事業専従者給与に関する届出書」を出します。期限は、経費にしようとする年の3月15日まで(1月16日以後に開業した人や新たに専従者ができた人は、その日から2か月以内)です。→ 本文で読む
賃貸用の建物の減価償却は定率法を選べますか
減価償却の方法を選ぶ人は「減価償却資産の償却方法の届出書」を、 開業した年の翌年3月15日まで に提出します。出さなければ法定の償却方法(一般に定額法)になります。 建物は平成10年4月以後の取得なら定額法しか選べません。建物附属設備(エレベーター、給排水設備など)と構築物(塀、駐車場の舗装など)も、平成28年4月以後の取得なら定額法のみです。 賃貸物件の減価償却資産のほとんどは、いまや定額法しか選べません。 届出を出す意味があるのは、器具備品(エアコンなど)や車両で定率法を選びたい場合くらいです。→ 本文で読む
不動産の貸付けを始めたときの届出の期限は何ですか
提出先は、いずれも納税地(通常は住所地)を所轄する税務署長です。物件の所在地の税務署ではありません。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1399 新たに不動産の貸付けを始めたときの届出など」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1399.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
貸付けを始めた年の届出は、まとめてお出しします。
事業的規模かどうかの判定、青色申告の承認申請、必要なら専従者給与の届出。契約書と物件の情報をいただければ、期限内に一式そろえます。