源泉徴収
勤続5年以下の退職金は、
300万円を超える部分に「2分の1」がありません(短期退職手当等)
退職金の税金が軽いのは、退職所得控除を引いたうえで、さらに2分の1にしてから税率を掛けるからです。
この2分の1に、2つの例外があります。1つは役員の特定役員退職手当等。もう1つが、今回の短期退職手当等です。従業員でも、勤続5年以下なら制限がかかります。ただし役員とは扱いが違い、300万円までは2分の1が残ります。
この記事の要点
令和4年1月1日以後に支払う退職金から、役員等以外で勤続年数5年以下の人の退職金(短期退職手当等)は、収入金額から退職所得控除額を引いた残りのうち300万円を超える部分について2分の1課税が使えません。国税庁の計算例では、勤続4年2か月・退職金800万円で退職所得450万円。役員の特定役員退職手当等との違いも整理しました。国税庁タックスアンサーNo.2740をもとに整理しました。
短期退職手当等とは:役員等以外で勤続5年以下
国税庁 タックスアンサー No.2740「勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)」
短期退職手当等とは、短期勤続年数(役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下であるものをいい、この勤続年数については、役員等として勤務した期間がある場合には、その期間を含めて計算します。)に対応する退職手当等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないものをいいます。
ポイントは2つです。
- 役員等以外として勤務した期間で判定する。ただし役員等として勤務した期間があれば、それも含めて年数を数える
- 特定役員退職手当等に当たらないもの。役員の退職金部分は、そちらで処理されます
この制度は、令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等から適用されています。
300万円までは2分の1が残る
国税庁 タックスアンサー No.2740「勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)」
短期退職手当等に係る退職所得の計算においては、収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち、300万円を超える部分の金額については「2分の1課税」を適用しないこととされています。
ここが役員との大きな違いです。役員(特定役員退職手当等)は全額について2分の1がなくなりますが、従業員(短期退職手当等)は300万円を超えた部分だけです。
| 収入金額 − 退職所得控除額 | 2分の1課税 |
|---|---|
| 300万円以下の部分 | あり |
| 300万円を超える部分 | なし |
計算方法:2つの式
国税庁 タックスアンサー No.2740「勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)」
(1) 「収入金額-退職所得控除額」≦300万円の場合
退職所得の金額 = (収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2
(2) 「収入金額-退職所得控除額」>300万円の場合
退職所得の金額 = 150万円(※1) + {収入金額 - (300万円 + 退職所得控除額)}(※2)
※1 300万円以下の部分の退職所得の金額
※2 300万円を超える部分の退職所得の金額
(2)の式の「150万円」は、300万円の2分の1です。300万円までの部分を2分の1にした固定額、と考えると分かりやすいです。そこに、300万円を超える部分をそのまま足します。
計算した退職所得の金額に1,000円未満の端数があるときは、切り捨てます。
国税庁の計算例:勤続4年2か月・800万円で450万円
国税庁 タックスアンサー No.2740「勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)」
(例)使用人として4年2か月勤務し、退職したケース
使用人退職金:800万円
使用人勤続期間:4年2か月
勤続年数:5年(短期退職手当等に該当)
退職所得控除額:40万円 × 5年 = 200万円
収入金額-退職所得控除額:800万円 -(40万円 × 5年)= 600万円
「収入金額-退職所得控除額」が300万円を超えることから、上記(2)の算式により退職所得の金額を計算します。
退職所得の金額=150万円+{800万円 -(300万円 + 200万円)} = 450万円
退職所得の金額は450万円となります。
| 手順 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 勤続年数 | 4年2か月 → 端数切上げ | 5年 |
| 退職所得控除額 | 40万円 × 5年 | 200万円 |
| 控除後の残額 | 800万円 − 200万円 | 600万円(300万円超) |
| 退職所得 | 150万円 + {800万円 −(300万円+200万円)} | 450万円 |
もし通常の2分の1課税なら、600万円÷2=300万円でした。150万円の差が出ています。
勤続年数は1年未満の端数を切り上げます。4年2か月は5年です。5年と1か月なら6年になり、短期退職手当等から外れます。役員の場合と同じ数え方です。
役員の場合(特定役員退職手当等)との違い
| 短期退職手当等 | 特定役員退職手当等 | |
|---|---|---|
| 対象 | 役員等以外で勤続5年以下 | 役員等として勤続5年以下 |
| 2分の1課税 | 300万円までは残る | 全額なし |
| 適用開始 | 令和4年1月1日以後の支払い | 短期退職手当等より前から |
役員のほうが厳しい扱いです。詳しくは特定役員退職手当等の記事に書きました。
同じ年に、短期退職手当等と、それ以外の退職手当等(一般退職手当等や特定役員退職手当等)の両方の支払いがある場合の計算は、コード2741に説明があります。従業員から役員になった方が退職する場合などが該当します。
実務で気をつけること
中途入社の従業員が数年で退職するケース。退職金制度がある会社では、勤続3〜5年での退職は珍しくありません。金額が大きくなければ300万円の枠に収まりますが、控除後の残額が300万円を超えるなら計算式が変わります。
役員期間を含めて数える点。従業員から役員に上がった人の「使用人としての退職金」を計算するとき、勤続年数には役員だった期間も含めます。使用人期間だけで数えないでください。
小規模企業共済やiDeCoとの関係。これらの一時金も退職所得です。同じ年に複数の退職所得がある場合は、合算して計算します。受け取る年をずらすことで税額が変わることがありますので、支給の前にご相談ください。
よくある質問
短期退職手当等とは何ですか
この制度は、 令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等 から適用されています。→ 本文で読む
勤続5年以下の退職金でも2分の1課税は使えますか
ここが役員との大きな違いです。役員(特定役員退職手当等)は 全額について 2分の1がなくなりますが、従業員(短期退職手当等)は 300万円を超えた部分だけ です。→ 本文で読む
短期退職手当等の退職所得はどう計算しますか
(2)の式の「150万円」は、300万円の2分の1です。300万円までの部分を2分の1にした固定額、と考えると分かりやすいです。そこに、300万円を超える部分をそのまま足します。→ 本文で読む
勤続4年2か月で退職金800万円のとき退職所得はいくらですか
もし通常の2分の1課税なら、600万円÷2=300万円でした。150万円の差が出ています。 勤続年数は 1年未満の端数を切り上げ ます。4年2か月は5年です。 5年と1か月なら6年になり、短期退職手当等から外れます。 役員の場合と同じ数え方です。→ 本文で読む
役員と従業員で勤続5年以下の退職金の扱いは違いますか
同じ年に、短期退職手当等と、それ以外の退職手当等(一般退職手当等や特定役員退職手当等)の両方の支払いがある場合の計算は、コード2741に説明があります。従業員から役員になった方が退職する場合などが該当します。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)(令和4年1月1日以後)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2740.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
退職金の源泉徴収は、勤続年数の数え方から確認します。
短期退職手当等に当たるか、特定役員退職手当等に当たるか、両方あるのか。退職所得の受給に関する申告書と勤続期間の資料をお預かりすれば、税額を計算します。
あわせて読む
同じテーマの記事
源泉徴収・年末調整
役員社宅の家賃はいくら取ればよいか。賃貸料相当額の計算
会社が借りた住宅を役員に貸すとき、役員から「賃貸料相当額」以上の家賃を受け取っていれば給与とし…
源泉徴収・年末調整
税理士報酬の源泉徴収は税込か税抜か。消費税が分けてあれば税抜でよい
税理士や弁護士への報酬の源泉徴収は、原則として消費税込みの金額が対象です。
源泉徴収・年末調整
個人に払う報酬で源泉徴収が要るのは8種類
個人(居住者)への報酬のうち源泉徴収の対象は、原稿料・講演料、弁護士や司法書士など特定の資格者…
源泉徴収・年末調整
税理士・弁護士に払う報酬の源泉徴収。100万円を超えると税率が変わります
個人の弁護士・税理士などへの報酬は、100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分…