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相続

生前贈与加算は
「7年」と言われますが、
いまはまだ3年です

「生前贈与の持ち戻しが3年から7年になった」という説明をよく見かけます。正確ではありません。

国税庁の資料には、相続開始日に応じた加算対象期間の表が載っています。それによれば令和8年12月31日以前に亡くなった場合は、いまも3年以内です。7年になるのは令和13年1月1日以後。表をそのまま引いて確認します。

公開 最終更新

この記事の要点

令和5年度改正で生前贈与の相続財産への加算期間が3年から7年に延びました。ただし段階的で、被相続人の相続開始日が令和8年12月31日以前なら加算対象期間は3年以内のままです。国税庁の表をそのまま示して整理します。

加算対象期間の表

まず国税庁の資料をそのまま引きます。

国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」

加算対象期間とは、相続税の課税価格に加算される暦年課税に係る贈与の対象期間をいいます。令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与により取得した財産については、その加算対象期間が相続開始前7年以内となります。具体的な被相続人の相続開始日に応じた加算対象期間は、次の表のとおりです。
被相続人の相続開始日加算対象期間
〜令和8年12月31日相続開始前3年以内
(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)
令和9年1月1日〜令和12年12月31日令和6年1月1日から死亡の日までの間
令和13年1月1日〜相続開始前7年以内
(死亡の日から遡って7年前の日から死亡の日までの間)

いまはどうなっているか

この記事を書いているのは令和8年です。表の一行目に当たります。

相続開始日に応じた生前贈与の加算対象期間 令和8年12月31日までに亡くなった場合の加算対象期間は相続開始前3年以内。令和9年1月1日から令和12年12月31日までは令和6年1月1日から死亡の日までの間。令和13年1月1日以後は相続開始前7年以内となります。 亡くなった日がいつかで、遡る年数が変わります 〜令和8年12月31日 3年 ← いまはここ 令和9年〜令和12年 令和6年1月1日から死亡の日まで 令和13年1月1日〜 7年 出典:国税庁No.4161の表。段階的に延びるため、しばらくは「3年」でも「7年」でもない期間が続きます。

← 図は横にスクロールできます

令和9年から令和12年までは「何年前まで」ではなく「令和6年1月1日から」という起点で決まります。年数で覚えると間違えます。

真ん中の期間の書き方に注目してください。「◯年以内」ではなく「令和6年1月1日から死亡の日までの間」です。改正の適用が令和6年1月1日以後の贈与からなので、それより前の贈与は7年ルールに乗りません。だから起点が固定されています。

「もう7年になった」と思って生前贈与をやめてしまうのは、いまの時点では早すぎます。逆に「ずっと3年のまま」と思っているのも違います。

110万円以下も加算されます

ここは誤解が多いところです。

国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」

加算対象期間内に贈与されたものであれば贈与税がかかったかどうかに関係なく加算します。
したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります。

年110万円以内におさめて贈与税がかからなかった分も、加算対象期間に入っていれば相続財産に足し戻されます。「贈与税を払っていないから関係ない」ではありません。

なお、加算された贈与財産にかかっていた贈与税額は、その人の相続税の計算上控除されます。二重には取られません。

加算しないもの

生前贈与でも、加算しなくてよいものが4つ挙げられています。

1贈与税の配偶者控除の適用を受けた(受けようとする)財産のうち、その控除額に相当する金額
2直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
3直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
4直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

ただし3と4については、国税庁の資料に注記があります。「贈与者死亡時の管理残額については、相続等により取得したものとみなして、相続税の課税価格に加算される場合があります。」使い切っていない残りは戻ってくることがある、ということです。

相続時精算課税という別の道

暦年課税とは別に、相続時精算課税という選び方があります。令和6年から使い勝手が変わりました。

国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」

その贈与税の額は、特定贈与者ごとに、1年間に贈与を受けた相続時精算課税適用財産の価額の合計額(課税価格)から、相続時精算課税に係る基礎控除額110万円(注1)を控除(注2)し、特別控除額(限度額2,500万円。前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)(注3)を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します。
贈与する人贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母など
もらう人贈与を受けた年の1月1日において18歳以上で、贈与者の直系卑属である推定相続人または孫
年110万円の基礎控除令和6年1月1日以後の贈与から。令和5年12月31日以前の贈与には、この控除はありません
特別控除累計2,500万円。期限内申告をした場合に限り控除できます
超えた部分一律20%
やめられるか選択した年分以降ずっと適用。暦年課税には戻せません

戻せないことと、失うもの

相続時精算課税は一度選ぶと取り消せません。そして、この制度で贈与を受けた宅地には小規模宅地等の特例が使えません。

令和6年から年110万円の基礎控除がついたことで使いやすくなったと言われますが、自宅の土地を動かす場合は、80%減額を失う代償と見比べる必要があります。

どう考えるか

整理すると、いま押さえるべきことは3つです。

1加算期間はいまのところ3年。令和9年から起点が固定され、令和13年から7年になります。年数だけで覚えないこと
2110万円以下の贈与も加算されます。贈与税がかからなかったことと、相続税に入らないことは別
3精算課税は戻せません。そして自宅の土地では小規模宅地等の特例を失います

生前贈与は「早く始めるほど効く」性質のものです。加算期間が延びていく方向にあるので、先延ばしにすると使える余地が減ります。ただし何を、誰に、どの制度で渡すかは、相続のときの特例と合わせて考えないと損をします。

贈与だけを見て決めないでください。出口の相続税まで並べて計算してから決める話です。

よくある質問

110万円以下の贈与も相続財産に加算されますか?

年110万円以内におさめて贈与税がかからなかった分も、 加算対象期間に入っていれば相続財産に足し戻されます。 「贈与税を払っていないから関係ない」ではありません。 なお、加算された贈与財産にかかっていた贈与税額は、その人の相続税の計算上控除されます。二重には取られません。→ 本文で読む

相続時精算課税とは何ですか?

暦年課税とは別に、 相続時精算課税 という選び方があります。令和6年から使い勝手が変わりました。→ 本文で読む

生前贈与をどう判断すればよいですか?

生前贈与は「早く始めるほど効く」性質のものです。加算期間が延びていく方向にあるので、 先延ばしにすると使える余地が減ります。 ただし何を、誰に、どの制度で渡すかは、相続のときの特例と合わせて考えないと損をします。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
  2. 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
  3. 国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

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