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法人

修繕費か資本的支出か。
20万円未満・3年周期・60万円・10%・30%という5つの基準

工事の請求書を前にして「これは経費か、資産か」と迷う。法人の決算でいちばん多い論点のひとつです。

国税庁は判定の基準を金額の順に並べて示しています。20万円、3年周期、60万円、取得価額の10%、30%。この順番で当てはめていけば、たいていの支出は片が付きます。国税庁のタックスアンサーNo.5402で確認します。

公開 最終更新

この記事の要点

修理や改良の支出は、維持管理や原状回復なら修繕費、使用可能期間を延ばしたり価値を増やすなら資本的支出です。避難階段の取付け、用途変更の模様替え、高性能な部品への交換は資本的支出。ただし20万円未満か3年以内の周期なら修繕費にできます。不明な場合は60万円未満か取得価額の10%以下で修繕費、継続適用なら30%基準も。災害で被災した資産には別の基準があります。国税庁タックスアンサーNo.5402をもとに整理しました。

原理:維持管理・原状回復なら修繕費

国税庁 タックスアンサー No.5402「修繕費とならないものの判定」

固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額は、修繕費として支出した時に損金算入が認められます。
ただし、その修理、改良等が固定資産の使用可能期間を延長させ、または価値を増加させるものである場合は、その延長および増加させる部分に対応する金額は、修繕費とはならず、資本的支出となります。

元に戻すのが修繕費、良くするのが資本的支出。これが原理です。そして国税庁は、判定は名目ではなく実質で行うと明記しています。請求書に「修繕費」と書いてあっても、中身が改良なら資本的支出です。

原則として資本的支出になる3つの例

国税庁 タックスアンサー No.5402「修繕費とならないものの判定」

1 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
2 用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
3 機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額
類型考え方
1 物理的に付け加えたなかったものが増えた避難階段の取付け、間仕切りの新設
2 用途変更の改造・改装使い道を変えた事務所を店舗に改装
3 高性能なものへの交換通常の取替えを超える部分だけ同等品なら修繕費、高性能品に替えた差額は資本的支出

3が実務では厄介です。全額が資本的支出になるのではなく、「通常の取替えの金額を超える部分」だけです。同等品に替えたらいくらかを見積もって、差額を資本的支出にします。

20万円未満、または3年以内の周期なら修繕費

上の3つに当たっても、金額が小さいか、周期的な修理なら修繕費にできます。

国税庁 タックスアンサー No.5402「修繕費とならないものの判定」

ただし、一つの修理や改良などの金額が20万円未満の場合またはおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかな修理、改良などである場合は、その支出した金額を修繕費とすることができます。
  • 1つの修理・改良が20万円未満 … 中身を問わず修繕費にできます
  • おおむね3年以内の周期 … 定期的に行っている修理なら、金額が大きくても修繕費。ただし「既往の実績その他の事情からみて明らか」であることが必要です

3年周期の基準を使うなら、過去に同じ修理を繰り返してきた記録が要ります。今回が初めての工事では使えません。

不明なときの基準:60万円未満か、取得価額の10%以下

修繕費か資本的支出か、中身を見ても判断できない支出があります。そのための形式基準が用意されています。

国税庁 タックスアンサー No.5402「修繕費とならないものの判定」

その支出した金額が60万円未満のときまたはその支出した金額がその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるときは修繕費とすることができます。
基準内容
60万円未満その支出額が60万円未満なら修繕費にできる
取得価額の10%以下前事業年度終了時の取得価額のおおむね10%以下なら修繕費にできる

10%の基準は、元の資産が大きいほど効きます。取得価額1億円の建物なら、1,000万円までの工事を修繕費にできる計算です。ただし「明らかでない金額がある場合」という前提付きです。明らかに資本的支出と分かる工事には使えません。

継続適用するなら30%と10%の少ないほう

国税庁 タックスアンサー No.5402「修繕費とならないものの判定」

法人が継続してその支出した金額の30パーセント相当額とその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額の10パーセント相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出としているときは、その処理が認められます。

支出額の30%と、取得価額の10%を比べて、少ないほうを修繕費、残りを資本的支出にする方法です。「継続して」とありますので、毎期この方法を使い続けることが条件です。

ただし、20万円未満・3年周期の取扱いと、60万円未満・10%以下の取扱いが適用できる支出は、そちらが優先されます。この30%基準は、それらに当てはまらなかった支出に使います。

災害で被害を受けた資産は別の基準

災害で被災した固定資産については、別の扱いが用意されています(評価損を計上した資産を除きます)。

国税庁 タックスアンサー No.5402「修繕費とならないものの判定」

1 被災資産につきその原状を回復するために支出した金額は修繕費とします。
2 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水または土砂崩れの防止などのために支出した金額については、法人が修繕費とする経理を行っている場合はその処理が認められます。

さらに、判定が明らかでない支出については、30%相当額を修繕費、残額を資本的支出とする経理も認められます(通常の30%基準のような10%との比較はありません)。

賃借している資産についても、補修義務がない場合でも、災害で被害を受けて原状回復の補修をし、その費用を修繕費として経理したときは認められます。

災害を機に新しい資産を取得した場合は別です

国税庁は「被災資産の復旧に代えて新規に資産を取得したり、災害の発生を契機としての貯水池や避難緑地などを設置したりする場合は、新たな資産の取得になりますので、修繕費としての処理は認められません」と明記しています。壊れたものを直すのが修繕費で、買い替えは資産の取得です。

当てはめる順番

実務では、次の順で見ていくと迷いません。

確認すること当てはまれば
1維持管理・原状回復か修繕費
2付加・用途変更・高性能化か資本的支出(ただし3〜4へ)
31つの修理が20万円未満か修繕費にできる
4おおむね3年以内の周期か修繕費にできる
5区分が明らかでない → 60万円未満か、取得価額の10%以下か修繕費にできる
6それでも不明 → 30%と10%の少ないほう(継続適用)その額を修繕費、残額を資本的支出

資本的支出になった場合は、その金額を資産に計上して減価償却します。元の資産と同じ耐用年数で償却する方法などがあり、処理は工事の内容によって変わります。賃貸物件での判定は別の記事に書きました。

よくある質問

修繕費と資本的支出はどう区別しますか

元に戻すのが修繕費、良くするのが資本的支出。これが原理です。そして国税庁は、判定は名目ではなく 実質 で行うと明記しています。請求書に「修繕費」と書いてあっても、中身が改良なら資本的支出です。→ 本文で読む

資本的支出になるのはどんな工事ですか

3が実務では厄介です。 全額が資本的支出になるのではなく、「通常の取替えの金額を超える部分」だけ です。同等品に替えたらいくらかを見積もって、差額を資本的支出にします。→ 本文で読む

20万円未満の工事は修繕費にできますか

3年周期の基準を使うなら、 過去に同じ修理を繰り返してきた記録が要ります。 今回が初めての工事では使えません。→ 本文で読む

修繕費か資本的支出か分からないときはどうしますか

修繕費か資本的支出か、中身を見ても判断できない支出があります。そのための形式基準が用意されています。 10%の基準は、元の資産が大きいほど効きます。取得価額1億円の建物なら、1,000万円までの工事を修繕費にできる計算です。ただし 「明らかでない金額がある場合」 という前提付きです。明らかに資本的支出と分かる工事には使えません。→ 本文で読む

災害で壊れた資産の修理費は修繕費になりますか

災害で被災した固定資産については、別の扱いが用意されています(評価損を計上した資産を除きます)。 さらに、判定が明らかでない支出については、 30%相当額を修繕費、残額を資本的支出 とする経理も認められます(通常の30%基準のような10%との比較はありません)。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.5402 修繕費とならないものの判定」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5402.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

工事の見積りの段階でご相談ください。

同じ工事でも、契約の分け方や工事の内容の書き方で結論が変わることがあります。請求書が出てからでは動かせません。