相続
相続税がかからない財産。
お墓と仏壇、死亡保険金と死亡退職金の500万円×法定相続人、申告期限までの寄附
相続税は、亡くなった方が持っていたすべての財産にかかるわけではありません。性質上課税になじまないもの、政策的に非課税とされているものがあります。
実務で効いてくるのは死亡保険金と死亡退職金の非課税枠と、お墓や仏壇です。国税庁のタックスアンサーNo.4108に挙げられている8つを、使う場面の多い順に見ていきます。
この記事の要点
墓地・墓石・仏壇・仏具は非課税(骨とう的価値のあるものや商品は課税)。死亡保険金と死亡退職金はそれぞれ500万円×法定相続人の数まで非課税。相続税の申告期限までに国・地方公共団体・特定の公益法人・認定NPO法人に寄附した財産も非課税です。国税庁タックスアンサーNo.4108をもとに、相続財産から外せるものを整理しました。
墓地・墓石・仏壇・仏具:日常礼拝しているもの
墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など、日常礼拝をしている物は相続税がかかりません。ただし、骨とう的価値があって投資の対象になるものや、商品として持っているものは課税されます。
国税庁 タックスアンサー No.4108「相続税がかからない財産」
1 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。
「日常礼拝をしている物」が条件です。純金の仏像を投資目的で買って仏壇に置いても、骨とう的価値や投資性があれば課税の対象になります。一方、通常の仏壇・仏具は金額の大小を問わず非課税です。
実務でよく言われる「生前にお墓を買っておくと相続税が減る」という話は、この非課税から来ています。現金で持っていれば課税財産ですが、お墓に変えれば非課税財産になります。ただし、お墓の購入代金が未払いのまま亡くなった場合、その未払金は債務控除の対象になりません(非課税財産に関する債務だからです)。生前に買うなら、支払いまで済ませておくことが要点です。
死亡保険金と死亡退職金:500万円×法定相続人の数
被相続人の死亡で受け取る生命保険金と退職手当金は、本来の相続財産ではありませんが、相続で取得したものとみなされて課税されます。そのうち、それぞれ500万円×法定相続人の数までは非課税です。
国税庁 タックスアンサー No.4108「相続税がかからない財産」
4 相続によって取得したとみなされる生命保険金等のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
(中略)
5 相続によって取得したとみなされる退職手当金等のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
保険金と退職金は、それぞれ別に枠があります。法定相続人が3人なら、保険金で1,500万円、退職金で1,500万円、合わせて3,000万円までが非課税です。この枠は、財産の相当部分を保険に変えておく、という相続対策の根拠になっています。保険金の非課税枠の細かい条件(相続放棄した人には使えない、養子の数に制限がある)は別の記事に書きました。
申告期限までに国や公益法人に寄附した財産
相続や遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人、認定NPO法人に寄附した場合、その財産には相続税がかかりません。
国税庁 タックスアンサー No.4108「相続税がかからない財産」
7 相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人または認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附したもの
相続した財産の一部を寄附したい、という方は、申告期限(相続開始から10か月)までに実行することが条件です。期限を過ぎてからの寄附は、相続税の非課税にはなりません(所得税の寄附金控除の対象にはなりえます)。寄附先が「特定の法人」に当たるかどうかも事前に確認が要ります。学校法人や社会福祉法人でも、すべてが対象ではありません。
同様に、申告期限までに公益信託の信託財産とするために支出した金銭・財産も非課税です。
公益事業用の財産・心身障害者共済・幼稚園
残りの非課税財産は、該当する方が限られます。
- 公益事業用の財産 … 宗教・慈善・学術などの公益事業を行う一定の個人が取得した財産で、公益事業に使われることが確実なもの
- 心身障害者共済制度の給付金を受ける権利 … 地方公共団体の条例による共済制度から支給される給付金の受給権
- 個人経営の幼稚園の事業用財産 … 一定の要件を満たし、相続人のいずれかが引き続き経営することが条件
8つの非課税財産を一覧に
相続税がかからない財産は、お墓や仏壇などの日常礼拝の物、死亡保険金と死亡退職金のそれぞれ500万円×法定相続人の数までの部分、申告期限までに国や公益法人に寄附した財産など、国税庁が挙げる8つです。
| No.4108の番号 | 非課税財産 | 条件・例外 |
|---|---|---|
| 1 | 墓地・墓石・仏壇・仏具・神を祭る道具 | 日常礼拝しているもの。骨とう的価値・商品は課税 |
| 2 | 公益事業を行う個人が取得した財産 | 公益事業に使われることが確実なもの |
| 3 | 心身障害者共済制度の給付金を受ける権利 | 地方公共団体の条例によるもの |
| 4 | 死亡保険金のうち500万円×法定相続人の数 | 相続人が受け取ったもの |
| 5 | 死亡退職金のうち500万円×法定相続人の数 | 相続人が受け取ったもの |
| 6 | 個人経営の幼稚園の事業用財産 | 相続人が引き続き経営すること |
| 7 | 申告期限までに国・地方公共団体・特定の公益法人・認定NPO法人に寄附した財産 | 申告期限まで |
| 8 | 申告期限までに公益信託の信託財産とするために支出した金銭・財産 | 申告期限まで |
非課税財産で気をつけること
非課税財産でも、申告書には書きます。死亡保険金は「生命保険金などの明細書」(第9表)で非課税額を計算して差し引く形ですので、受け取った保険金の全額をまず記載します。非課税だから申告に関係ない、ではありません。
お墓の未払金は債務控除できません。上に書いたとおり、非課税財産に関する債務は控除の対象外です。葬式費用のうち墓石や墓地の購入費も、葬式費用として引けません(葬式費用の記事)。
保険金の非課税枠は、受取人が相続人であることが前提です。孫や兄弟姉妹など相続人でない人が受取人の保険金には、非課税枠がありません。受取人の指定を見直すだけで税額が変わることがあります。
よくある質問
お墓や仏壇に相続税はかかりますか
墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など、日常礼拝をしている物は相続税がかかりません。ただし、骨とう的価値があって投資の対象になるものや、商品として持っているものは課税されます。 「日常礼拝をしている物」が条件です。純金の仏像を投資目的で買って仏壇に置いても、骨とう的価値や投資性があれば課税の対象になります。一方、通常の仏壇・仏具は金額の大小を問わず非課税です。→ 本文で読む
死亡保険金や死亡退職金はいくらまで相続税がかかりませんか
被相続人の死亡で受け取る生命保険金と退職手当金は、本来の相続財産ではありませんが、相続で取得したものとみなされて課税されます。そのうち、それぞれ 500万円×法定相続人の数 までは非課税です。→ 本文で読む
相続した財産を寄附すると相続税はかかりませんか
相続や遺贈で取得した財産を、 相続税の申告期限までに 国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人、認定NPO法人に寄附した場合、その財産には相続税がかかりません。 相続した財産の一部を寄附したい、という方は、申告期限(相続開始から10か月)までに実行することが条件です。期限を過ぎてからの寄附は、相続税の非課税にはなりません(所得税の寄附金控除の対象にはなりえます)。寄附先が「特定の法人」に当たるかどうかも事前に確認が要ります。学校法人や社会福祉法人でも、すべてが対象ではありません。→ 本文で読む
相続税がかからない財産にはどんなものがありますか
相続税がかからない財産は、お墓や仏壇などの日常礼拝の物、死亡保険金と死亡退職金のそれぞれ500万円×法定相続人の数までの部分、申告期限までに国や公益法人に寄附した財産など、国税庁が挙げる8つです。→ 本文で読む
非課税の保険金も相続税の申告書に書きますか
非課税財産でも、申告書には書きます。 死亡保険金は「生命保険金などの明細書」(第9表)で非課税額を計算して差し引く形ですので、受け取った保険金の全額をまず記載します。非課税だから申告に関係ない、ではありません。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
相続税がかかるかどうかは、非課税財産を外してから判断します。
保険金の非課税枠を引き、お墓や仏壇を外し、残った財産が基礎控除を超えるかどうか。財産の一覧をお持ちいただければ、その場で見通しをお伝えします。