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税制改正

就業者負担軽減支援金。
令和9年4月から、市町村が個人あてに年1回支給します

飲食料品の消費税を1%にしたうえで、残る1%相当分を給付で返す。その給付の名前が就業者負担軽減支援金です。

「給付付き税額控除」という言葉で語られてきたものの、第一歩にあたります。ただし令和9年度・令和10年度は税額控除ではなく、純粋な給付です。金額はまだ決まっていませんが、誰が対象で、どう受け取るのかは大綱に書かれています。

公開 最終更新

この記事の要点

令和8年9月15日の大綱で決まった新しい給付です。中低所得の現役勤労者を対象に、市町村が認定して年1回支給します。所得下限額・所得上限額・純負担基準額などの要件があり、金額は所得と扶養している子どもの数で変わります。公金受取口座を登録していれば申請なしで支給。支援金には税金がかからず、差押えもできません。金額と所得の線引きは今後決まります。大綱本文をもとに整理しました。

どんな制度か:令和9年4月から、市町村が年1回

大綱は、この支援金の位置づけをこう説明しています。

「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(令和8年9月15日 閣議決定)前文

中低所得の現役勤労者に着目して、その負担軽減を通じて、所得に応じて、これまでよりも一層手取りが増えるようにするとともに、いわゆる「年収の壁」などによる「働き控え」を緩和することを通じた就労促進を図るため、これまでにない「所得に応じたきめ細かな給付」を行う新たな制度として、就業者負担軽減支援金(以下「支援金」という。)を導入する。
内容
開始令和9年4月(本格導入は令和11年度から)
単位個人(世帯単位ではありません)
支給する主体基準日(1月1日)現在の住所地の市町村長
回数年1回(認定または決定の日から2か月以内に、その年度分を支払い)
所管内閣府(総務省・財務省・厚生労働省と共管)。租税・社会保険料負担に関する総合調整本部を設置
費用3分の2以上を国、残りを都道府県と市町村が2分の1ずつ

大綱は支援金を「本格的な『給付付き税額控除』を導入する第一歩」と位置づけ、制度の将来像は継続して検討するとしています。令和9年度・令和10年度は、飲食料品の消費税1%相当分の範囲で行う「つなぎ」です。

対象になる人:4つの要件

大綱は、支給要件を4つ挙げています。かみくだくと、次のようになります。

要件意味
勤労所得が「所得下限額」を超えること働いて一定以上の収入があること。勤労所得=前年の給与収入に応じて算定した額+一定額を超える事業所得・業務に係る雑所得
前年の合計所得金額が「所得上限額」以下であること所得が高すぎないこと。上限額は19歳未満の扶養親族(扶養児童)の有無と数で変わる
税・社会保険料の負担が「純負担基準額」を超えること住民税額と社会保険料控除額の合計から公的年金等の収入額を引いた額で判定。働いていて負担が現役並みの高齢者も対象に入る
配偶者の前年の合計所得金額が「配偶者所得上限額」以下であること高所得の配偶者がいる場合の除外(令和11年度から適用)

もう1つ、住所の要件があります。

大綱 第三 一1(3)

支援金の支給要件に該当する者(以下「受給資格者」という。)が基準日現在において日本国内に住所を有しないときは、支給しない。

ここで大事なのは、①の「勤労所得」に事業所得と業務に係る雑所得が入ることです。会社員だけの制度ではありません。個人事業主やフリーランス、副業をしている方も、一定の水準を超えていれば勤労所得として合算されます。大綱は「こうした所得に係る事業及び業務の形態の多様さや税・社会保障制度における取扱い等を踏まえ、就労とみなせる水準として定める額を超える場合に勤労所得として合計するよう定める」としています。

令和9年度・令和10年度は要件が一部ちがう

大綱 第三 一1(1)(注)

令和9年度及び令和10 年度の支援金については、上記①から③までの要件を満たす者を対象とし、②扶養児童については、16 歳未満の扶養親族とする(以下同じ。)。また、③純負担基準額及び就業促進特例加算(下記2(1)③)について、社会保険料控除額により適用する。
令和9年度・令和10年度令和11年度〜
要件①②③のみ(④配偶者の要件は適用なし①〜④すべて
扶養児童16歳未満の扶養親族19歳未満の居住者である扶養親族

最初の2年は、いまの制度で把握できる情報(16歳未満の扶養親族、社会保険料控除額)を使って動かす、という設計です。令和11年度からは、配偶者の所得の要件が加わり、扶養児童の範囲も19歳未満に広がります。

金額の決まり方:定額・逓増・加算・逓減

支援額は、所得に応じて次の形で決まります。具体的な金額は、まだ決まっていません。大綱は考え方だけを定めています。

所得の水準支援額
勤労所得が「逓増開始額」以下定額支援額(一律の額)
逓増開始額を超え「逓増終了額」まで一定の割合で増えていく
逓増終了額を超える支援基本額(一定額)
扶養児童がいる場合上に加えてこども加算(子の有無と数に応じた定額)
合計所得金額が「逓減開始額」を超える一定の割合で減っていき、所得上限額でゼロ

金額の目安になる数字として、大綱に書かれているものが2つあります。

大綱 第三 一2(1)①

(※)単身者の個人住民税所得割の非課税限度額は、所得45 万円(給与収入119 万円)

「逓増開始額」は、個人住民税の所得割が課税される水準を踏まえて定めるとされています。単身者なら給与収入119万円あたりが目安になります。これより下は定額、これを超えると支援額が増えていく、という形です。

支援額の端数処理も決まっています。

大綱 第三 一2(1)⑥

支援額は、1,000 円単位(端数切上げ)とする。

令和9年度・令和10年度に支給される支援金は、全体として要する費用が飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲になるように定められます。予算の総額が先に決まっている、ということです。

「年収の壁」に配慮した加算があります

支援金には、いわゆる「年収の壁」に直面する人への上乗せ(就業促進特例加算)が置かれています。社会保険料の負担が発生することで手取りが減る、あの問題への時限的な対応です。

大綱 第三 一2(1)③(※2)

令和7年度における全国で最も低い地域別最低賃金(時給1,023 円)に、被用者保険の短時間労働者の適用労働時間(週20 時間)を乗じて、年間の収入(所得)に換算すると、給与収入106 万円(所得32 万円)となる。また、この場合の社会保険料負担は約16 万円程度である。なお、国民年金第3号被保険者が年収130 万円になり、国民年金第1 号被保険者になった場合、税・社会保険料負担を差し引いた手取りが回復する水準は年収約160 万円程度。

この加算の対象は、勤労所得が給与収入106万円あたりから、手取りが回復する年収約160万円あたりまでで、被用者保険の適用に伴う社会保険料相当額を実際に支払った人です。金額は今後決まります。

大綱は、この加算を「『年収の壁』が解消するまでの時限的な措置」と位置づけ、第3号被保険者制度の見直しや被用者保険の適用拡大とあわせて検討するとしています。

受け取り方:公金受取口座なら申請不要

原則は請求して市町村長の認定を受ける形ですが、公金受取口座を登録していれば、申請なしで受け取れます。

大綱 第三 一3(2)

市町村長は、受給資格者であること及び支援金の額が明らかである公的給付支給等口座登録者については、(1)にかかわらず、職権で認定することができるものとする。この職権認定は、申請書への口座情報の記載や通帳の写し等の添付が不要となるなど、受給資格者と市町村双方の事務負担の軽減と円滑な支給につながるほか、公的給付支給等口座登録の推進にも寄与する。このため、支給事務の運用においては、職権認定の処理を原則とする。

「職権認定の処理を原則とする」と書かれています。公金受取口座を登録していない方は、申請の手間がかかることになります。マイナポータルから登録できますので、心当たりのある方は先に済ませておくとよいと思います。

支給は、認定または決定の日から2か月以内に、その年度分を年1回。前年度までに認定を受けた人が引き続き要件を満たしていれば、その年度の額を決定します。要件を満たさなくなれば認定は取り消されます。

支援金に税金はかからない。差押えもできない

大綱 第三 一3(8)(9)

支援金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないものとする。ただし、国税の滞納処分(その例による滞納処分を含む。)により差し押さえる場合はこの限りではない。
支援金に対して、租税その他の公課は課することができないものとする。

受け取った支援金は非課税です。所得税も住民税もかかりませんし、国民健康保険料などの算定にも入りません。既存の社会保障制度の支給要件にも影響しないようにする、とされています。

ただし2つ例外があります。国税の滞納処分による差押えはできること、生活保護制度では収入認定の対象になることです。

確定申告をする意味が変わります

ここは、私たちの仕事にも直接かかわる部分です。大綱は、支援金の情報を市町村が把握できるよう、確定申告書・源泉徴収票・住民税申告書・給与支払報告書の様式を変更するとしています。

大綱 第三 三3

支援金制度の令和11 年度以降の実施に必要となる以下の情報を市町村長において適切に把握するため、所要の規定の整備を行うとともに、確定申告書、源泉徴収票、住民税申告書及び給与支払報告書の様式を変更する等の所要の措置を講ずる。
(1)自己が負担すべき社会保険料に係る社会保険料控除額
(2)扶養児童の有無及び数
(3)基準日現在において配偶者を有していた者で、前年の合計所得金額が配偶者所得上限額を超える者について、当該配偶者の氏名、個人番号等

そして、こう書かれています。

大綱 第四 一2

非課税者であっても積極的に確定申告を行っていただくことを含め、国として、制度の意義や目的、対象者、具体的仕組み等について分かりやすく十分な周知広報等を行う

税金がかからない人でも、確定申告をする意味が出てきます。所得が把握されていなければ、支援金の対象かどうかを市町村が判定できないからです。これまで「税額がゼロだから申告しない」としてきた方の扱いが変わります。

国は、ウェブサイトで自分の支援額を試算できる仕組みと、コールセンターを作るとしています。

まだ決まっていないこと

大綱は考え方と枠組みを定めたもので、金額は入っていません。この記事の時点で決まっていないのは、次のとおりです。

  • 所得下限額・所得上限額・純負担基準額・配偶者所得上限額(対象になる所得の線引き)
  • 定額支援額・支援基本額・こども加算・就業促進特例加算の金額
  • 逓増開始額・逓増終了額・逓減開始額・逓減率
  • 令和11年度以降の恒久財源をどう確保するか
  • 金融所得や保有資産を要件に入れるかどうか(検討事項とされています)

大綱はこれらを「恒久財源の確保と併せて検討し定める」としています。法案の条文と政令が出た段階で、はじめて自分がいくらもらえるかが分かります。この記事は、大綱の内容にもとづくものです。制度が固まりしだい書き直します。

よくある質問

就業者負担軽減支援金とは何ですか

大綱は支援金を「本格的な『給付付き税額控除』を導入する第一歩」と位置づけ、制度の将来像は継続して検討するとしています。令和9年度・令和10年度は、飲食料品の消費税1%相当分の範囲で行う「つなぎ」です。→ 本文で読む

就業者負担軽減支援金は誰がもらえますか

ここで大事なのは、 ①の「勤労所得」に事業所得と業務に係る雑所得が入る ことです。会社員だけの制度ではありません。個人事業主やフリーランス、副業をしている方も、一定の水準を超えていれば勤労所得として合算されます。大綱は「こうした所得に係る事業及び業務の形態の多様さや税・社会保障制度における取扱い等を踏まえ、就労とみなせる水準として定める額を超える場合に勤労所得として合計するよう定める」としています。→ 本文で読む

令和9年度と令和11年度で支援金の要件は違いますか

最初の2年は、いまの制度で把握できる情報(16歳未満の扶養親族、社会保険料控除額)を使って動かす、という設計です。令和11年度からは、配偶者の所得の要件が加わり、扶養児童の範囲も19歳未満に広がります。→ 本文で読む

就業者負担軽減支援金はいくらもらえますか

支援額は、所得に応じて次の形で決まります。 具体的な金額は、まだ決まっていません。 大綱は考え方だけを定めています。 「逓増開始額」は、個人住民税の所得割が課税される水準を踏まえて定めるとされています。単身者なら給与収入119万円あたりが目安になります。これより下は定額、これを超えると支援額が増えていく、という形です。→ 本文で読む

就業者負担軽減支援金を受け取るには申請が必要ですか

原則は請求して市町村長の認定を受ける形ですが、 公金受取口座を登録していれば、申請なしで受け取れます。 「職権認定の処理を原則とする」と書かれています。 公金受取口座を登録していない方は、申請の手間がかかることになります。 マイナポータルから登録できますので、心当たりのある方は先に済ませておくとよいと思います。→ 本文で読む

就業者負担軽減支援金に税金はかかりますか

受け取った支援金は非課税です。所得税も住民税もかかりませんし、国民健康保険料などの算定にも入りません。既存の社会保障制度の支給要件にも影響しないようにする、とされています。 ただし2つ例外があります。 国税の滞納処分による差押えはできる こと、 生活保護制度では収入認定の対象になる ことです。→ 本文で読む

税金がかからない人も確定申告をしたほうがよいのですか

ここは、私たちの仕事にも直接かかわる部分です。大綱は、支援金の情報を市町村が把握できるよう、 確定申告書・源泉徴収票・住民税申告書・給与支払報告書の様式を変更する としています。 税金がかからない人でも、確定申告をする意味が出てきます。 所得が把握されていなければ、支援金の対象かどうかを市町村が判定できないからです。これまで「税額がゼロだから申告しない」としてきた方の扱いが変わります。→ 本文で読む

出典

  1. 内閣官房「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(令和8年9月15日 閣議決定)本文
    https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/pdf/sankou4.pdf(PDF)
  2. 同 概要資料
    https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/pdf/sankou5.pdf(PDF)
  3. 内閣官房「「飲食料品に係る消費税率の引下げ」及び「給付付き税額控除」について」
    https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/index.html

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

ご自身やご家族が対象になるか、制度が固まった段階でお知らせします。

所得の線引きが決まれば、いまの申告内容から対象になるかどうかを判定できます。年末調整・確定申告の書き方も変わる見込みですので、顧問先の皆様には随時ご案内します。