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損益通算できるのは4つの所得だけ。
不動産・事業・譲渡・山林の赤字は給与から引けますが、雑所得は引けません

「副業が赤字なら、給与の税金が戻る」。これは半分だけ正しい話です。

赤字を給与などの黒字から引く仕組みが損益通算ですが、引ける所得は4つに限られています。雑所得の赤字は引けませんし、不動産所得の赤字でも引けない部分があります。国税庁のタックスアンサーNo.2250で、どの赤字が引けて、どの赤字が切り捨てられるのかを確認します。

公開 最終更新

この記事の要点

赤字を他の所得から差し引ける(損益通算)のは、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つ。配当・給与・一時・雑所得の赤字は引けません。不動産所得でも土地の借入利子に相当する赤字や別荘の赤字は対象外。株式・先物・土地建物の譲渡損失はそれぞれの中でしか通算できません。国税庁タックスアンサーNo.2250をもとに整理しました。

損益通算できるのは、不動産・事業・譲渡・山林の4つ

損益通算とは、所得の計算で生じた赤字のうち一定のものを、決められた順序で他の所得の黒字から差し引くことです。対象になる赤字は、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つに限られます。

国税庁 タックスアンサー No.2250「損益通算」

所得の金額の計算上損失が生じた場合に、損益通算の対象となる所得は次の所得です。
(1) 不動産所得
(2) 事業所得
(3) 譲渡所得
(4) 山林所得

会社員が副業で事業所得の赤字を出せば、給与所得と通算して、源泉徴収された所得税の還付を受けられます。アパート経営で不動産所得が赤字なら、同じく給与から引けます。この4つの所得の赤字は、そういう効果を持ちます。

配当・給与・一時・雑所得の赤字は引けない

配当所得・給与所得・一時所得・雑所得は、計算上赤字になることはあっても、その赤字を他の所得から引くことはできません。利子所得と退職所得は、そもそも赤字が生じません。

国税庁 タックスアンサー No.2250「損益通算」

(注2) 配当所得、給与所得、一時所得および雑所得の金額の計算上損失が生じることはありますが、その損失の金額は他の各種所得の金額から控除することはできません。

副業の赤字で問題になるのは、ここです。副業が雑所得に区分されれば、いくら赤字でも給与から引けません。事業所得に区分されて初めて、損益通算の対象になります。副業の赤字で税金が戻るかどうかは、赤字の額ではなく、所得の区分で決まります。その分かれ目は別の記事に書きました。

生活に通常必要でない資産の赤字も引けない

4つの所得の赤字であっても、生活に通常必要でない資産に関する赤字は、損益通算できません(競走馬の譲渡で一定の場合を除く)。No.2250はその範囲を4つ挙げています。

国税庁 タックスアンサー No.2250「損益通算」

(1) 競走馬、その他射こう的行為の手段となる動産
(2) 主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産
(3) 主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権等)
(4) 生活の用に供する動産で、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とう等

別荘を売って損をした、ゴルフ会員権を売って損をした、30万円を超える宝石を売って損をした。これらは譲渡所得の赤字ですが、給与から引くことはできません。趣味や娯楽のための資産の損失を税金で穴埋めさせない、という考え方です。

不動産所得の赤字のうち、引けない部分

不動産所得の赤字は原則として損益通算できますが、次の部分は「生じなかったものとみなされ」、引けません。

国税庁 タックスアンサー No.2250「損益通算」

(1) 別荘等の生活に通常必要でない資産の貸付けに係るもの
(2) 土地(土地の上に存する権利を含みます。)を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額
(3) 一定の組合契約等に基づいて営まれる事業から生じたもので、その組合の特定組合員等に係るもの
(4) 令和3年分以後の各年において、国外中古建物から生じた不動産所得の損失のうち、当該建物の耐用年数を「簡便法」等により計算した減価償却費に相当する部分の金額

実務で最も多いのは(2)です。借入金でアパートを買った場合、借入金のうち土地の取得に充てた部分の利子に相当する赤字は、給与から引けません。建物の取得に充てた部分の利子は引けます。土地と建物を一括で買っている場合は、借入金を按分して計算します。くわしくは不動産所得の赤字の記事に書きました。

(4)は、海外の中古建物を短い耐用年数で償却して赤字を作る手法への対応です。令和3年分以後、簡便法などで計算した減価償却費に相当する赤字は、国内の不動産所得との内部通算もできません。

株式・先物・土地建物の譲渡損失は、それぞれの中だけ

譲渡所得は損益通算の対象ですが、申告分離課税になっている譲渡所得には、別の制限があります。

損失の種類通算できる相手(No.2250)
株式等の譲渡損失株式等の譲渡所得等の中だけ。上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当・利子からは引ける(その合計額が限度)
先物取引の損失先物取引に係る雑所得等の中だけ
土地建物の譲渡損失土地建物の譲渡所得の中だけ(一定の居住用財産を除く)

株を売って損をしても、給与から引くことはできません。逆に、事業所得の赤字を株の売却益から引くこともできません。それぞれが独立した箱で、箱の中でしか通算できない、と考えてください。土地建物の譲渡損失も同じですが、住宅ローンが残るマイホームを売った場合など、一定の居住用財産の譲渡損失には、給与などと通算できる特例があります(別の記事)。

実務で確認すること

赤字の所得がある年は、申告の前に次の3点を確認してください。

  • その赤字は、4つの所得のどれか … 雑所得なら通算不可。事業所得か雑所得かは、帳簿の有無と規模で判断されます
  • 不動産所得なら、借入金に土地の取得分が含まれていないか … 含まれていれば、その利子相当額は通算不可。申告書の「土地等を取得するために要した負債の利子の額」の欄に記入します
  • 売った資産は、生活に通常必要でない資産ではないか … 別荘・ゴルフ会員権・高価な貴金属の譲渡損失は通算不可

通算してもなお赤字が残る場合、青色申告なら翌年以後3年間繰り越せます。白色申告では原則として繰り越せません。繰越しの話は純損失の繰越控除の記事に書きました。

よくある質問

損益通算できる所得はどれですか

損益通算とは、所得の計算で生じた赤字のうち一定のものを、決められた順序で他の所得の黒字から差し引くことです。対象になる赤字は、 不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得 の4つに限られます。→ 本文で読む

雑所得の赤字は給与所得から引けますか

配当所得・給与所得・一時所得・雑所得は、計算上赤字になることはあっても、その赤字を他の所得から引くことはできません。利子所得と退職所得は、そもそも赤字が生じません。 副業の赤字で問題になるのは、ここです。副業が 雑所得 に区分されれば、いくら赤字でも給与から引けません。事業所得に区分されて初めて、損益通算の対象になります。 副業の赤字で税金が戻るかどうかは、赤字の額ではなく、所得の区分で決まります。 その分かれ目は 別の記事 に書きました。→ 本文で読む

別荘やゴルフ会員権を売った損失は損益通算できますか

4つの所得の赤字であっても、 生活に通常必要でない資産 に関する赤字は、損益通算できません(競走馬の譲渡で一定の場合を除く)。No.2250はその範囲を4つ挙げています。 別荘を売って損をした、ゴルフ会員権を売って損をした、30万円を超える宝石を売って損をした。これらは譲渡所得の赤字ですが、給与から引くことはできません。趣味や娯楽のための資産の損失を税金で穴埋めさせない、という考え方です。→ 本文で読む

不動産所得の赤字で損益通算できない部分はありますか

不動産所得の赤字は原則として損益通算できますが、次の部分は「生じなかったものとみなされ」、引けません。 実務で最も多いのは(2)です。借入金でアパートを買った場合、借入金のうち 土地の取得に充てた部分の利子 に相当する赤字は、給与から引けません。建物の取得に充てた部分の利子は引けます。土地と建物を一括で買っている場合は、借入金を按分して計算します。くわしくは 不動産所得の赤字の記事 に書きました。→ 本文で読む

株式の売却損は給与所得と損益通算できますか

譲渡所得は損益通算の対象ですが、申告分離課税になっている譲渡所得には、別の制限があります。 株を売って損をしても、給与から引くことはできません。逆に、事業所得の赤字を株の売却益から引くこともできません。それぞれが独立した箱で、箱の中でしか通算できない、と考えてください。土地建物の譲渡損失も同じですが、住宅ローンが残るマイホームを売った場合など、一定の居住用財産の譲渡損失には、給与などと通算できる特例があります( 別の記事 )。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.2250 損益通算」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

赤字の所得がある年は、通算できるかどうかを先に確認します。

所得の区分、借入金の内訳、資産の性質。3つを見れば、その赤字が給与から引けるかどうかが決まります。申告前にご相談ください。