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譲渡

住宅ローンが残るマイホームを売って損が出たら、給与から引けます。
令和9年12月31日までの特例

買った値段より安くしか売れず、しかも住宅ローンが残る。オーバーローンでの売却は、精神的にも金銭的にも重い場面です。

そのとき使えるのが、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例です。売却損を給与から引いて所得税の還付を受け、引ききれなければ3年間繰り越せます。新しい家を買わなくても使えます。国税庁のタックスアンサーNo.3390で、要件と限度額を確認します。

公開 最終更新

この記事の要点

令和9年12月31日までに、ローン残高を下回る価額でマイホームを売って譲渡損失が出たとき、ローン残高から売却額を引いた額を限度に、給与所得などと損益通算できます。引ききれない分は翌年以後3年間繰り越せます。買換え不要。所有期間5年超、償還期間10年以上のローンが残っていることが条件で、繰越控除は合計所得3,000万円超の年は使えません。国税庁タックスアンサーNo.3390をもとに整理しました。

特例の内容:譲渡損失を給与などから引き、3年繰り越す

令和9年12月31日までに、住宅ローンのあるマイホームをローン残高を下回る価額で売って譲渡損失が出たときは、要件を満たせば、その損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できます。通算しても引ききれなかった損失は、翌年以後3年間繰り越して控除できます。

国税庁 タックスアンサー No.3390「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」

令和9年12月31日までに住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除(繰越控除)することができます。
これらの特例を、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例といいます。なお、これらの特例は、新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合であっても適用することができます。

土地建物の譲渡損失は、原則として他の所得と通算できません。この特例は、その原則の例外です。そして、買換えをしなくても使えることが大きな特徴です。売った後に賃貸に移る方でも対象になります。

限度額:ローン残高 − 売却額

損益通算できる金額には限度があります。売買契約日の前日の住宅ローン残高から、売却価額を引いた残りが限度額です。

国税庁 タックスアンサー No.3390「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」

マイホームの売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた残りの金額が、損益通算の限度額となります

譲渡損失そのもの(取得費+譲渡費用−売却額)と、この限度額(ローン残高−売却額)のうち、小さいほうが通算できる額です。取得費が大きく譲渡損失が大きくても、ローンの残りが少なければ限度額で頭打ちになります。「ローンの残債で困っている分だけ助ける」という設計です。

計算
譲渡損失(取得費 + 譲渡費用)− 売却価額
限度額売買契約日の前日のローン残高 − 売却価額
損益通算できる額上の2つのうち小さいほう

4つの要件:マイホーム・所有5年超・償還10年以上のローン・オーバーローン

国税庁 タックスアンサー No.3390「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」

(2)売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに5年を超えていること
(3)譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること。
(4)マイホームの譲渡価額が上記(3)の住宅ローンの残高を下回っていること。

(1)の「売った資産」は、現に住んでいる家屋、以前住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで)、その敷地などです。軽減税率の特例と同じ範囲です。

(2)の所有期間は5年超で、売った年の1月1日で判定します。買って数年で売る場合は使えません。(3)のローンは償還期間10年以上のものに限られ、売買契約日の前日に残高があることが必要です。契約前にローンを完済してしまうと、(3)も(4)も満たさなくなります。残債の処理は、売買契約の後で行ってください。

使えない場合:親族への売却、前年・前々年の他の特例

次の場合は、損益通算も繰越控除も使えません。

  • 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売った場合(生計を一にする親族、売った後に同居する親族、内縁関係の人、特殊な関係の法人を含む)
  • 売った年の前年・前々年に、居住用財産の軽減税率の特例、3,000万円の特別控除(空き家の特例を除く)、特定の居住用財産の買換え・交換の特例を使っている場合
  • 売った年の前年以前3年以内に、他のマイホームでこの譲渡損失の特例を使っている場合
  • 売った年またはその前年以前3年内の譲渡について、買換えの場合の譲渡損失の特例(措法41条の5)を受ける・受けている場合

マイホームの特例は、売却益が出る場合の特例(3,000万円控除・軽減税率)と、売却損が出る場合の特例(この特例・買換えの譲渡損失の特例)が、互いに一定期間は排他になっています。過去数年に別の家を売っている方は、そのときに使った特例を確認してください。

繰越控除は合計所得3,000万円超の年だけ使えない

繰越控除には所得制限があります。合計所得金額が3,000万円を超える年は、その年だけ繰越控除が使えません。損益通算のほうには所得制限がなく、売った年の合計所得が3,000万円を超えていても損益通算はできます。

国税庁 タックスアンサー No.3390「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」

合計所得金額が3,000万円を超える年がある場合は、その年のみ適用できません。
なお、損益通算の特例については、所得金額の要件がありませんので、例えば、マイホーム(譲渡資産)を売って譲渡損失の金額が生じた年の合計所得金額が3,000万円を超える場合であっても損益通算の特例の適用を受けることができます。

「その年のみ」ですから、3,000万円を超えた年は飛ばして、翌年に所得が下がれば繰越控除を再開できます。ただし繰越しの期間(3年間)は延びません。

手続:初年度は期限内申告、翌年以降も連続して申告

損益通算を受ける年(売った年)は、確定申告書に次の書類を添付します。

  • 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
  • 所有期間が5年を超えることを示す登記事項証明書や売買契約書の写し
  • 譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書(売買契約日の前日のもの)

繰越控除を受ける翌年以降は、損益通算を受けた年分について上の書類をすべて添付した期限内申告書を提出していること、そしてその翌年分から繰越控除を受ける年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出することが必要です。

初年度が期限後申告だと、繰越しができません

売った年の申告を3月15日までに出していないと、翌年以降の繰越控除は受けられません。還付申告は5年間出せるという一般論は、ここでは通用しません。また、途中の年の申告を1年飛ばすと、そこで繰越しが切れます。所得がなくて申告の必要がない年でも、損失申告書は出してください。

住宅ローン控除と併用できる

この特例は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)と併用できます。旧居を売って損失が出て、新居をローンで買った場合、旧居の譲渡損失をこの特例で通算・繰越ししながら、新居の住宅ローン控除も受けられます。

国税庁 タックスアンサー No.3390「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」

(注)この特例と住宅借入金等特別控除は併用できます。

売却益が出た場合の軽減税率の特例は住宅ローン控除と排他ですが、売却損の特例は併用可です。買換えで損が出た方にとっては、両方の効果を受けられる形になっています。ただし、譲渡損失の通算で所得税がゼロになった年は、住宅ローン控除で引く税額もありませんので、実際の効果は年ごとの所得しだいです。

よくある質問

住宅ローンが残るマイホームを売って損が出たら、給与所得から引けますか

令和9年12月31日まで に、住宅ローンのあるマイホームをローン残高を下回る価額で売って譲渡損失が出たときは、要件を満たせば、その損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できます。通算しても引ききれなかった損失は、翌年以後 3年間 繰り越して控除できます。→ 本文で読む

マイホームの譲渡損失で損益通算できる金額の上限はいくらですか

損益通算できる金額には限度があります。 売買契約日の前日の住宅ローン残高から、売却価額を引いた残り が限度額です。 譲渡損失そのもの(取得費+譲渡費用−売却額)と、この限度額(ローン残高−売却額)のうち、 小さいほう が通算できる額です。取得費が大きく譲渡損失が大きくても、ローンの残りが少なければ限度額で頭打ちになります。「ローンの残債で困っている分だけ助ける」という設計です。→ 本文で読む

マイホームの譲渡損失の特例の要件は何ですか

(1)の「売った資産」は、現に住んでいる家屋、以前住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで)、その敷地などです。軽減税率の特例と同じ範囲です。→ 本文で読む

マイホームの譲渡損失の繰越控除に所得制限はありますか

繰越控除には所得制限があります。 合計所得金額が3,000万円を超える年は、その年だけ 繰越控除が使えません。損益通算のほうには所得制限がなく、売った年の合計所得が3,000万円を超えていても損益通算はできます。→ 本文で読む

マイホームの譲渡損失の繰越控除を受けるにはどうしますか

繰越控除を受ける翌年以降は、損益通算を受けた年分について上の書類をすべて添付した 期限内申告書 を提出していること、そしてその翌年分から繰越控除を受ける年分まで 連続して 確定申告書(損失申告用)を提出することが必要です。→ 本文で読む

マイホームの譲渡損失の特例と住宅ローン控除は併用できますか

この特例は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)と併用できます。旧居を売って損失が出て、新居をローンで買った場合、旧居の譲渡損失をこの特例で通算・繰越ししながら、新居の住宅ローン控除も受けられます。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3390.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

売却前に、ローン残高証明書の日付を確認します。

この特例には「売買契約日の前日」のローン残高証明書が要ります。売却が決まったら、契約の前にご相談ください。損益通算の額と、翌年以降の繰越しの見込みをお示しします。