消費税
キャンセル料の消費税は、
事務手数料なら課税・逸失利益の賠償なら不課税
「キャンセル料に消費税はかかりますか」。請求書を作る側からも、受け取った側からも聞かれます。
答えは「どちらもある」です。同じキャンセル料でも、事務手数料なら課税、逸失利益の穴埋めなら不課税。決め手は名前ではなく対価性があるかどうかです。国税庁のタックスアンサーNo.6253・No.6257・No.6261で線引きを確認します。
この記事の要点
キャンセル料には、解約に伴う事務手数料としての性格のものと、逸失利益に対する損害賠償金としての性格のものがあります。事務手数料は役務の提供の対価なので課税、逸失利益の補填は資産の譲渡等の対価に当たらないので不課税です。区分せず一括して受領しているときは全額を不課税として取り扱います。損害賠償金も名称ではなく実質で判定し、無体財産権の侵害や事務所の明渡し遅延は課税。建物賃貸借の中途解約違約金は不課税、原状回復工事費用は課税です。国税庁タックスアンサーNo.6253・No.6257・No.6261をもとに整理しました。
決め手は「対価かどうか」。名称では判定しない
消費税の課税対象になるのは、資産の譲渡等の対価として受け取るものです。相手に何かをしてあげた見返りなら課税、単に損を埋めてもらっただけなら課税の対象になりません。ですから、伝票に書かれた名目ではなく、そのお金が何の見返りなのかで判定します。
国税庁 タックスアンサー No.6257「損害賠償金」
その損害賠償金が資産の譲渡等の対価に当たるかどうかは、その名称によって判定するのではなく、その実質によって判定すべきものとされています。
「違約金」「賠償金」「キャンセル料」「解約手数料」。名前が違っても、判定の物差しは1つです。その金額の中身が、役務の提供や資産の貸付けの対価になっていないか。ここだけを見ます。
キャンセル料は2つの性格に分かれる
いわゆるキャンセル料といわれるものの中には、解約に伴う事務手数料としての性格のものと、解約に伴い生じる逸失利益に対する損害賠償金としての性格のものとがあります。前者は課税、後者は不課税です。1つの言葉の中に、扱いの違う2つのものが入っています。
| 性格 | 消費税 | 理由 |
|---|---|---|
| 解約に伴う事務手数料 | 課税 | 解約手続などの事務を行う役務の提供の対価だから |
| 逸失利益に対する損害賠償金 | 不課税 | 本来得られたであろう利益の補填で、資産の譲渡等の対価に当たらないから |
国税庁は、航空運賃のキャンセル料を例に挙げて、見分け方まで書いています。
国税庁 タックスアンサー No.6253「キャンセル料」
例えば、航空運賃のキャンセル料などで、解約等の時期に関係なく一定額を受け取ることとされている部分の金額は、解約等に伴う事務手数料に該当し課税の対象になります。
(中略)例えば、航空運賃のキャンセル料などで、搭乗区間や解約等の時期などにより金額の異なるものは、逸失利益等に対する損害賠償金に該当するので課税の対象となりません。
実務で使える目印は「金額が動くかどうか」です。いつ解約しても同じ金額なら事務手数料の性格で課税。解約が直前になるほど高くなるなら、逸失利益の補填として不課税。規定の作り方そのものが、性格を示しています。
区分せず一括で受け取っているときは、全額が不課税
事務手数料の部分と損害賠償金の部分を分けずに、まとめて1つの金額として受け取っているときは、その全額を不課税として取り扱うこととされています。中に課税相当部分が含まれていても、区分していないのであれば按分しません。
国税庁 タックスアンサー No.6253「キャンセル料」
事業者がその全額について事務手数料に相当する部分と損害賠償金に相当する部分を区分することなく一括して受領しているときは、その全額を不課税として取り扱うこととされています。
例えば、ゴルフ場の予約をキャンセルした際に受領するキャンセル料などがこれに該当します。
逆にいえば、契約書や規約で「解約事務手数料」を別建てにすると、その部分は課税売上になります。受け取る側の消費税を考えるなら、区分するかどうかは意識して決めるところです。支払う側から見れば、区分されていなければ仕入税額控除の対象にならない、ということでもあります。
損害賠償金でも課税になる3つの場合
心身または資産に対して加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金は、通常は資産の譲渡等の対価に当たりません。ただし国税庁は、実質からみて資産の譲渡または貸付けの対価に当たり課税の対象となるものとして、3つの例を挙げています。
国税庁 タックスアンサー No.6257「損害賠償金」
1 損害を受けた棚卸資産等が加害者に対して引き渡される場合において、その資産がそのまま、または軽微な修理を加えることによって使用することができるときにその資産の所有者が収受する損害賠償金
2 特許権や商標権などの無体財産権の侵害を受けた場合に権利者が収受する損害賠償金
3 事務所の明渡しが遅れた場合に賃貸人が収受する損害賠償金
1は、壊れた商品が相手に渡り、それがまだ使えるなら、実質は売ったのと同じという整理です。2は、権利を使わせた対価と同じ性格です。3は、明け渡さずに使い続けた期間の賃料に相当します。いずれも「相手が何かを得ている」場合だと分かります。
建物賃貸借の違約金と原状回復工事費用
建物の賃貸借では、中途解約の違約金と原状回復工事費用が同じ場面で出てきますが、扱いは逆になります。違約金は不課税、原状回復工事費用は課税です。契約終了時の精算書に両方が並ぶことがありますので、分けて処理する必要があります。
| 賃貸人が受け取るもの | 消費税 |
|---|---|
| 契約期間の終了前の中途解約の違約金(数か月分の家賃相当額) | 不課税 |
| 保証金等から差し引く原状回復工事に要した費用相当額 | 課税 |
国税庁 タックスアンサー No.6261「建物賃貸借契約の違約金など」
この違約金は、賃貸人が賃借人から中途解約されたことに伴い生じる逸失利益を補填するために受け取るものですから、損害賠償金として課税の対象とはなりません。
一方、原状回復工事費用が課税になる理由も、はっきり書かれています。
同
賃借人には立退きに際して建物を原状に回復する義務がありますので、賃借人に代わって賃貸人が原状回復工事を行うことは、賃貸人の賃借人に対する役務の提供に当たります。
賃借人の義務を賃貸人が代わりに果たしているので、役務の提供の対価という整理です。保証金から差し引く形であっても、差し引いた工事費相当額は課税の対象になります。
立ち退かない入居者から受け取る割増賃借料
賃貸借契約の契約期間が終了した後も入居者が立ち退かない場合に、規定の賃貸料以上の金額を受け取ることがあります。これは正当な権利なくして使用していることに対して受け取る割増賃貸料の性格を持つものとされ、店舗および事務所等であればその全額が貸付けの対価として課税の対象になります。
国税庁 タックスアンサー No.6261「建物賃貸借契約の違約金など」
この場合に受け取る金額は、入居者が正当な権利なくして使用していることに対して受け取る割増賃貸料の性格を有していますので、その全額が店舗および事務所等の貸付けの対価として課税の対象となります。
ただし、住宅の場合は結論が変わります。
同
住宅の貸付けに係る契約において住宅用であることが明らかとされている場合や貸付け等の状況からみて住宅用に供されていることが明らかな場合における割増賃借料については、住宅の貸付けの対価として非課税となります。
住宅の貸付けは非課税ですから、その割増分も非課税です。同じ「立ち退かない入居者からの割増賃料」でも、店舗・事務所なら課税、住宅なら非課税。不課税ではなく非課税ですので、課税売上割合の計算では分母に入ります。用途がどちらかを、契約書と使用の実態で確かめてください。
よくある質問
キャンセル料や違約金の消費税は何で判定しますか
消費税の課税対象になるのは、資産の譲渡等の対価として受け取るものです。相手に何かをしてあげた見返りなら課税、単に損を埋めてもらっただけなら課税の対象になりません。ですから、伝票に書かれた名目ではなく、そのお金が何の見返りなのかで判定します。→ 本文で読む
キャンセル料に消費税はかかりますか
いわゆるキャンセル料といわれるものの中には、解約に伴う事務手数料としての性格のものと、解約に伴い生じる逸失利益に対する損害賠償金としての性格のものとがあります。前者は課税、後者は不課税です。1つの言葉の中に、扱いの違う2つのものが入っています。→ 本文で読む
事務手数料と賠償金を区分せずに受け取った場合はどうなりますか
事務手数料の部分と損害賠償金の部分を分けずに、まとめて1つの金額として受け取っているときは、その全額を不課税として取り扱うこととされています。中に課税相当部分が含まれていても、区分していないのであれば按分しません。→ 本文で読む
損害賠償金が消費税の課税対象になるのはどんな場合ですか
心身または資産に対して加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金は、通常は資産の譲渡等の対価に当たりません。ただし国税庁は、実質からみて資産の譲渡または貸付けの対価に当たり課税の対象となるものとして、3つの例を挙げています。→ 本文で読む
原状回復工事費用を保証金から差し引いた場合、消費税はかかりますか
建物の賃貸借では、中途解約の違約金と原状回復工事費用が同じ場面で出てきますが、扱いは逆になります。違約金は不課税、原状回復工事費用は課税です。契約終了時の精算書に両方が並ぶことがありますので、分けて処理する必要があります。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.6253 キャンセル料」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6253.htm - 国税庁「No.6257 損害賠償金」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6257.htm - 国税庁「No.6261 建物賃貸借契約の違約金など」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6261.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
請求書に載せる前に、その名目が課税か不課税かをご確認ください。
キャンセル料・違約金・原状回復費用は、同じ取引の中に課税と不課税が混ざります。契約書の書き方しだいで扱いが変わりますので、文言の段階からご相談ください。
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