源泉徴収
退職所得になるもの・ならないもの。
打切り支給、年金の一時金、解雇予告手当
退職金を払う、または受け取るときに、それが退職所得になるのか、給与所得になるのかで、税金の計算はまったく変わります。
名前が「退職金」でも退職所得にならないことがあり、逆に、会社を辞めていなくても退職所得として扱われる支払があります。退職金制度を見直したときの打切り支給や、役員の分掌変更のときの支払、確定拠出年金の一時金、解雇予告手当などです。
国税庁のタックスアンサーNo.2725で、どの支払が退職所得になり、どの支払が給与所得になるのかを整理します。
この記事の要点
退職所得になるのは、退職しなかったら支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われる給与です。退職時に支払っても、在職者の賞与と同じ性質なら給与所得になります。中小企業退職金共済や確定拠出年金の老齢給付金の一時金、解雇予告手当は退職手当等とされ、制度の移行や分掌変更による打切り支給も条件付きで退職手当等になります。国税庁タックスアンサーNo.2725をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
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退職所得は「退職しなかったら支払われなかった」一時の給与
退職所得として課税される退職手当等とは、退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいいます。退職のときや退職後に支払うものでも、在職している人の賞与等と同じ性質のものは、退職所得ではなく給与所得になります。
国税庁 タックスアンサー No.2725「退職所得となるもの」
退職所得として課税される退職手当等とは、退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいいます。
したがって、退職に際しまたは退職後に使用者等から支払われる給与で、支払金額の計算基準等からみて、他の引き続き勤務している人に支払われる賞与等と同性質であるものは、退職所得ではなく給与所得とされます。
判断の軸は、名目ではなく、退職が原因で一時に支払われるものかどうかです。たとえば、退職した月に、在職者と同じ計算基準で賞与を払った場合、それは退職のときに払っていても賞与と同じ性質のものです。「退職金」という名前を付けたかどうかではなく、支払の計算基準で見られることに気をつけてください。
年金制度・共済から受け取る一時金も退職手当等とみなされる
会社から直接受け取るものでなくても、公的年金の制度や企業年金、退職金共済、確定拠出年金などから受け取る一定の一時金は、退職手当等とみなされます。中小企業退職金共済の退職金や、小規模企業共済の一定の共済金、確定拠出年金の老齢給付金として受け取る一時金も含まれます。
| No.2725が挙げる一時金(主なもの) | ひと言 |
|---|---|
| 国民年金法・厚生年金保険法などの規定に基づく一時金 | 公的な年金制度からの一時金 |
| 確定給付企業年金法の規定に基づく一時金で、加入者の退職により支払われるもの | 加入者が負担した掛金がある場合は、その分を除いた部分 |
| 特定退職金共済団体の退職金共済制度に基づく一時金 | 被共済者の退職により支給されるもの |
| 中小企業退職金共済法の規定による退職金 | 独立行政法人勤労者退職金共済機構が支給するもの |
| 小規模企業共済契約に基づく一定の共済金または解約手当金 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構が支給するもの |
| 確定拠出年金法の企業型年金規約・個人型年金規約に基づく老齢給付金の一時金 | 企業型・個人型とも |
このほか、社会福祉施設職員等退職手当共済法による退職手当金や、外国の社会保険・共済の制度で退職により支払われる一定の一時金なども挙げられています。小規模企業共済の受け取り方は小規模企業共済の記事に、iDeCoの受け取りについてはiDeCoとNISAの記事に書きました。
辞めていなくても退職手当等になる打切り支給
引き続き勤務する人に支払うものでも、その後の退職金の計算で、今回の支払の基礎になった勤続期間を一切加味しない条件の下で支払うものは、次の場合に退職手当等とされます。いわゆる打切り支給で、退職給与規程の制定・改正や、役員の分掌変更、定年後の再雇用などが当たります。
| No.2725が挙げる場合 | |
|---|---|
| (1) | 新たに退職給与規程を制定し、または中小企業退職金共済制度や確定拠出年金制度へ移行するなどの相当の理由により従来の規程を改正した場合に、制定前・改正前の勤続期間に係る退職手当等として支払うもの |
| (2) | 使用人から役員になった人に、使用人であった勤続期間に対する退職手当等として支払うもの |
| (3) | 役員の分掌変更等により、職務の内容や地位が激変した役員に、分掌変更等の前の役員であった勤続期間に対する退職手当等として支払うもの |
| (4) | 定年に達した後も引き続き勤務する使用人に、定年に達する前の勤続期間に対する退職手当等として支払うもの |
| (5) | 定年を延長した場合に、旧定年に達した使用人に、旧定年に達する前の勤続期間に対する退職手当等として支払うもので、相当の理由があると認められるもの |
| (6) | 法人の解散後も引き続き役員または使用人として清算事務に従事する人に、解散前の勤続期間に対する退職手当等として支払うもの |
(1)には注書きがあり、合理的な理由による退職金制度の実質的な改変により、精算の必要から支払われるものに限られます。使用人の選択によって支払われるものは、退職所得になりません。「希望者には今の退職金を先に払う」という形は、この注書きに当たるおそれがあります。
国税庁 タックスアンサー No.2725 (3)役員の分掌変更等
役員の分掌変更等により、例えば、常勤役員から非常勤役員(代表権がある人や代表権はないが実質的に経営上主要な地位を占めていると認められる人は除きます。)になったこと、分掌変更等の後の報酬がおおむね50パーセント以上減少したことなど、職務の内容や地位が激変した役員に対して、分掌変更等の前の役員であった勤続期間に対する退職手当等として支払われるもの
分掌変更の場合、非常勤になっても代表権がある人や、実質的に経営上主要な地位を占めている人は除かれます。役員の退職金の会社側の扱いは役員退職金の損金算入時期の記事に、役員の勤続年数が短い場合の計算は特定役員退職手当等の記事にまとめました。
使用人から執行役員になったときの一時金
使用人からいわゆる執行役員に就任した人に、就任前の勤続期間に係る退職手当等として一時に支払うものは、その後の退職金の計算で勤続期間を一切加味しない条件の下で支払い、次の2つのいずれにも当たる執行役員制度の下で支払うものであれば、退職手当等に当たります。
| 執行役員制度の例(いずれにも当たるもの) | |
|---|---|
| (1) | 執行役員との契約が委任契約またはこれに類するもの(雇用契約やこれに類するものは含まない)で、退任後の使用人としての再雇用が保障されていない |
| (2) | 執行役員の報酬・福利厚生・服務規律等が役員に準じたもので、任務や規程に反する行為で使用者に生じた損害について賠償する責任を負う |
この例に当てはまらない制度でも、勤務関係の性質、内容、労働条件等に重大な変動があって、実質的には従前の勤務関係の延長とみられない特別の事実関係があれば、退職手当等に当たるとされています。肩書きが変わっただけで、実態が使用人のままなら、退職手当等には当たらないと読むのが自然です。
掛金の一時金、年金に代わる一時金、解雇予告手当
No.2725は、ほかにも退職手当等とされるものを挙げています。使用人が在職中に掛金を出して退職時に受け取る一時金、過去の勤務に基づく年金に代えて受け取る一時金、解雇予告手当、倒産等の際に国が立て替えて払う未払賃金です。
| 支払 | No.2725の扱い |
|---|---|
| 在職中に使用人が掛金を出し、退職に際して使用者から受け取る一時金 | 退職手当等。収入金額は、一時金の額から、本人が出した掛金と、支払日までにその運用益として元本に繰り入れられた金額との合計額を引いた残り |
| 過去の勤務に基づく年金に代えて受け取る一時金 | 退職の日以後、年金の受給開始日までに受け取るものは退職手当等。受給開始日後に受け取るものは公的年金等の雑所得。ただし、受給開始日後でも将来の年金給付の総額に代えて受け取るものは退職手当等 |
| 解雇予告手当 | 労働基準法第20条の予告をしないで解雇する場合に支払われる予告手当は、退職手当等 |
| 未払賃金立替払制度で国から弁済を受けた給与 | 退職した日の属する年分の退職手当等 |
年金に代わる一時金は、受け取る時期と、将来の年金の総額に代えるものかどうかで、退職所得と雑所得に分かれます。確定給付企業年金や確定拠出年金の一時金についても、No.2725は同じ考え方で整理しています。年金として受け取る場合は年金の税金の記事をご覧ください。
退職所得かどうかを判断するときの見どころ
退職所得になるかどうかは、退職が原因で一時に支払うものか、打切り支給なら勤続期間を一切加味しない条件か、そして制度の改正や地位の変化に相当の理由があるかで判断します。支払う前に、規程と実態の両方を確かめておくことが大切です。
| 場面 | 確かめること |
|---|---|
| 退職時に払う一時金 | 在職者の賞与と同じ計算基準になっていないか |
| 退職金制度の見直し・移行 | 相当の理由による改正か。本人の選択で受け取るかどうかが決まる形になっていないか |
| 役員の分掌変更 | 職務の内容や地位が激変したか。代表権や経営上主要な地位が残っていないか |
| 打切り支給全般 | その後の退職金の計算で、今回の勤続期間を一切加味しない条件になっているか |
退職所得に当たると決まったら、次は税額の計算です。退職所得控除と2分の1の計算は退職所得控除の記事に、勤続年数が短い場合は短期退職手当等の記事にまとめました。
よくある質問
退職金という名前なら退職所得になりますか
退職所得として課税される退職手当等とは、退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいいます。退職のときや退職後に支払うものでも、在職している人の賞与等と同じ性質のものは、退職所得ではなく給与所得になります。→ 本文で読む
確定拠出年金や中小企業退職金共済の一時金は退職所得ですか
会社から直接受け取るものでなくても、公的年金の制度や企業年金、退職金共済、確定拠出年金などから受け取る一定の一時金は、退職手当等とみなされます。中小企業退職金共済の退職金や、小規模企業共済の一定の共済金、確定拠出年金の老齢給付金として受け取る一時金も含まれます。→ 本文で読む
会社を辞めていなくても退職所得になる支払はありますか
引き続き勤務する人に支払うものでも、その後の退職金の計算で、今回の支払の基礎になった勤続期間を一切加味しない条件の下で支払うものは、次の場合に退職手当等とされます。いわゆる打切り支給で、退職給与規程の制定・改正や、役員の分掌変更、定年後の再雇用などが当たります。→ 本文で読む
使用人から執行役員になったときの一時金は退職所得ですか
使用人からいわゆる執行役員に就任した人に、就任前の勤続期間に係る退職手当等として一時に支払うものは、その後の退職金の計算で勤続期間を一切加味しない条件の下で支払い、次の2つのいずれにも当たる執行役員制度の下で支払うものであれば、退職手当等に当たります。→ 本文で読む
解雇予告手当は退職所得ですか
No.2725は、ほかにも退職手当等とされるものを挙げています。使用人が在職中に掛金を出して退職時に受け取る一時金、過去の勤務に基づく年金に代えて受け取る一時金、解雇予告手当、倒産等の際に国が立て替えて払う未払賃金です。→ 本文で読む
退職所得かどうかはどこを見て判断しますか
退職所得になるかどうかは、退職が原因で一時に支払うものか、打切り支給なら勤続期間を一切加味しない条件か、そして制度の改正や地位の変化に相当の理由があるかで判断します。支払う前に、規程と実態の両方を確かめておくことが大切です。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.2725 退職所得となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2725.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
退職金を払う前に、退職所得として扱えるかを確かめます。
退職給与規程の見直しや、役員の分掌変更、中小企業退職金共済や確定拠出年金への移行に伴う支払は、条件を満たさないと給与所得になります。規程の書き方と支払のタイミングを、源泉徴収の実務まで含めて一緒に整理します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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