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役員退職金が損金になる事業年度は、
株主総会の決議等で額が確定した日の属する事業年度です

役員退職金は金額が大きくなりますから、どの事業年度の損金になるかで、その期の税額が大きく動きます。決算の直前に「今期に入れられないか」というご相談を受けることもあります。

ところがこの損金算入時期は、会社が自由に決められるものではありません。原則は株主総会の決議等で額が確定した日の属する事業年度で、未払金に計上すれば済むという話でもありません。

もうひとつよく問題になるのが、現に退職していない役員への支給です。社長が会長になった、取締役が監査役になった。この場合に退職金として扱えるかどうかには、国税庁が示している具体的な線があります。No.5208とNo.5203で確認していきます。

公開 最終更新

この記事の要点

法人が役員に支給する退職金で適正な額のものは損金に算入されます。その損金算入時期は、原則として株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度です。実際に支払った事業年度に損金経理をした場合は、その事業年度に算入することも認められます。額が確定する前に取締役会で内定した金額を未払金に計上しても損金にはなりません。現に退職していなくても、常勤役員が非常勤役員になった、取締役が監査役になった、分掌変更後の給与がおおむね50パーセント以上減少したといった場合は退職金として取り扱えます。国税庁タックスアンサーNo.5208・No.5203をもとに整理しました。

先に見ておくと分かりやすいもの

原則は「株主総会の決議等で額が確定した日の属する事業年度」

まず出発点です。タックスアンサーNo.5208は、法人が役員に支給する退職金で適正な額のものは損金の額に算入されるとしたうえで、その時期を次のように定めています。

国税庁 タックスアンサー No.5208「役員の退職金の損金算入時期」

その退職金の損金算入時期は、原則として、株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度となります。

基準になるのは支払った日でも、退職した日でもありません。額が具体的に確定した日です。退職の事実があっても、金額が決まっていなければその事業年度の損金にはなりません。

逆にいえば、決議のタイミングを決算期との関係で考える余地があるということでもあります。ただし後述のとおり、確定していない金額を先に計上することはできませんので、動かせるのは決議そのものの時期です。

実際に支払った事業年度に損金経理する方法もある

原則のほかに、もうひとつの方法が認められています。決議と支払いがずれた場合の扱いです。

国税庁 タックスアンサー No.5208「役員の退職金の損金算入時期」

ただし、法人が退職金を実際に支払った事業年度において、損金経理をした場合は、その支払った事業年度において損金の額に算入することも認められます。

決議は前期にあったが、実際の支払いは今期になった、という場合です。このときは支払った事業年度で損金経理をしていれば、その事業年度の損金にできます。条件は損金経理をしていることで、支払っただけでは足りません。

つまり選択肢は2つあります。額が確定した事業年度で計上するか、実際に支払った事業年度で損金経理するか。どちらを採るかで損金になる期が変わりますので、決算期をまたぐ場面では最初に確認しておくところです。

内定した金額を未払金に計上しても損金にならない

ここが実務でいちばん引っかかります。No.5208は注記で明確に否定しています。

国税庁 タックスアンサー No.5208「役員の退職金の損金算入時期」(注1)

退職金の額が具体的に確定する事業年度より前の事業年度において、取締役会で内定した金額を損金経理により未払金に計上した場合であっても、未払金に計上した時点での損金の額に算入することはできません。

取締役会で内定していても、株主総会の決議等で額が具体的に確定していなければ、未払金に計上した時点では損金になりません。損金経理をしたかどうかではなく、額が確定しているかどうかが問われます。

利益が出た期に間に合わせようとして未払計上だけを先行させる、という形は通りません。今期の損金にしたいのであれば、今期のうちに決議まで済ませる必要があります。

退職年金は「支給すべき事業年度」

一時金ではなく退職年金の形で支給する場合は、扱いがさらに違います。No.5208の注2は、法人が退職年金制度を実施している場合に支給する退職年金は、その年金を支給すべき事業年度が損金算入時期となるとしています。

そして、退職した時に年金の総額を計算して未払金に計上しても損金の額に算入することができない、と続きます。年金は支給すべき年度ごとに損金にしていくもので、退職時にまとめて落とすことはできません。一時金と年金では、損金になる時期の考え方が根本から違うということです。

「相当であると認められる金額」を何で見るか

No.5208は「適正な額のもの」が損金になるとしていますが、その中身はNo.5203に書かれています。

国税庁 タックスアンサー No.5203「使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金」

法人が退職した役員に対して支給する退職金で、その役員の業務に従事した期間、退職の事情、その法人と同業種同規模の法人の役員に対する退職金の支給状況などからみて相当であると認められる金額は、原則として、その退職金の額が確定した事業年度において損金の額に算入されます。

挙げられている判断要素は3つです。

1その役員の業務に従事した期間
2退職の事情
3その法人と同業種同規模の法人の役員に対する退職金の支給状況

3つめの「同業種同規模の法人の支給状況」は、会社の中の資料だけでは確かめようがありません。金額の根拠は、支給を決める前に整えておく必要があります。決議してしまってから説明を考えるのでは順番が逆になります。

現に退職していなくても退職金になる場合

No.5203は、現実に退職はしていなくても退職金として取り扱える場合を示しています。役員が分掌変更した場合です。

国税庁 タックスアンサー No.5203「使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金」

分掌変更によって役員としての地位や職務の内容が激変して、実質的に退職したと同様の事情にある場合に退職金として支給したものは、退職金として取り扱うことができます。

そのうえで、例として3つの場合が挙げられています。いずれにもただし書きが付いているところが重要です。

例として挙げられている場合ただし、除かれるもの
常勤役員が非常勤役員になったこと常勤していなくても代表権を有する場合や、実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている場合
取締役が監査役になったこと監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている場合や、使用人兼務役員として認められない大株主である場合
分掌変更の後の役員の給与がおおむね50パーセント以上減少したこと分掌変更の後においても、その法人の経営上主要な地位を占めていると認められる場合

3つとも、ただし書きの中身は同じ方向を向いています。形を整えても、実質的に経営上主要な地位を占めていれば除かれます。肩書きを変え、報酬を下げたうえで、それまでと変わらず経営の中心にいるという状態では、退職金としての取扱いは通りません。

そして、分掌変更の場合についても未払金等に計上したものは、原則として退職金に含まれないとされています。現実に退職していない以上、支給まで済ませることが前提になっているということです。

分掌変更の後の給与がおおむね50パーセント以上減少したこと

3つめの「おおむね50パーセント以上減少」は、数字が示されている分だけ形式的に当てはめられやすいところです。代表取締役を退いて報酬を半分にした、これで要件を満たしたと考えてしまう。

しかしNo.5203での位置づけは、あくまで「実質的に退職したと同様の事情にある場合」の例示です。この場合についても、分掌変更の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる場合は除く、と書かれています。報酬の減少幅は入口の目安であって、それだけで判定が終わるものではありません。

実務で見ておきたいのは、分掌変更の後の勤務の実態です。取引先との交渉や資金繰りの決定を引き続き行っているか、代表印を握ったままではないか。書類の上だけを整えても、実態が変わっていなければ後から否認される余地が残ります。

使用人が役員に昇格したときの退職金

もうひとつ、No.5203は使用人が役員に昇格した場合についても定めています。退職給与規程に基づき、使用人であった期間の退職金として計算される金額を支給したときは、その支給した事業年度の損金の額に算入されます。ただし、ここでも未払金等に計上した場合には損金の額に算入されません。

注意が要るのは、使用人兼務役員が副社長や専務取締役など使用人兼務役員とされない役員になった場合です。この場合に使用人兼務役員であった期間の退職金として支給した金額は、たとえ使用人の職務に対する退職金として計算されているときであっても、原則としてその役員に対する退職金以外の給与となります。

例外として使用人としての退職金と取り扱われるのは、次のいずれにも該当する場合に限られます。

(1)その支給の対象となった者が過去において使用人から使用人兼務役員に昇格した者(使用人であった期間が相当の期間であるものに限ります)であり、その昇格をした時に使用人であった期間に係る退職金の支給をしていないこと
(2)支給した金額が使用人としての退職給与規程に基づき、使用人であった期間および使用人兼務役員であった期間を通算して、その使用人としての職務に対する退職金として計算され、かつ、退職金として相当な金額であると認められること

どちらの場面でも前提になっているのは退職給与規程です。規程がないまま支給額だけを決めると、使用人期間分の退職金として取り扱う根拠がなくなります。役員登用や代表交代を考え始めた段階で、規程の有無から確認しておくことをおすすめします。

よくある質問

役員退職金はいつの事業年度の損金になりますか

まず出発点です。タックスアンサーNo.5208は、法人が役員に支給する退職金で 適正な額のもの は損金の額に算入されるとしたうえで、その時期を次のように定めています。 基準になるのは支払った日でも、退職した日でもありません。 額が具体的に確定した日です。 退職の事実があっても、金額が決まっていなければその事業年度の損金にはなりません。→ 本文で読む

支払った事業年度に損金にすることはできますか

原則のほかに、もうひとつの方法が認められています。決議と支払いがずれた場合の扱いです。 決議は前期にあったが、実際の支払いは今期になった、という場合です。このときは 支払った事業年度で損金経理をしていれば 、その事業年度の損金にできます。条件は損金経理をしていることで、支払っただけでは足りません。→ 本文で読む

取締役会で内定した金額を未払金に計上すれば損金になりますか

ここが実務でいちばん引っかかります。No.5208は注記で明確に否定しています。 取締役会で内定していても、株主総会の決議等で額が具体的に確定していなければ、未払金に計上した時点では損金になりません。 損金経理をしたかどうかではなく、額が確定しているかどうかが問われます。→ 本文で読む

役員退職金の適正な金額はどのように判断しますか

No.5208は「適正な額のもの」が損金になるとしていますが、その中身はNo.5203に書かれています。 3つめの「同業種同規模の法人の支給状況」は、会社の中の資料だけでは確かめようがありません。 金額の根拠は、支給を決める前に整えておく必要があります。 決議してしまってから説明を考えるのでは順番が逆になります。→ 本文で読む

退職していない役員に退職金を支給できますか

No.5203は、現実に退職はしていなくても退職金として取り扱える場合を示しています。役員が分掌変更した場合です。 そのうえで、例として3つの場合が挙げられています。いずれにも ただし書き が付いているところが重要です。→ 本文で読む

分掌変更で給与を50パーセント減らせば退職金になりますか

3つめの「おおむね50パーセント以上減少」は、数字が示されている分だけ形式的に当てはめられやすいところです。代表取締役を退いて報酬を半分にした、これで要件を満たしたと考えてしまう。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.5208 役員の退職金の損金算入時期」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5208.htm
  2. 国税庁「No.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5203.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

役員退職金は、決議の時期と支給の時期を決算期と合わせて設計します。

役員退職金は、金額の妥当性だけでなく、いつ決議していつ支給するかで損金になる事業年度が変わります。分掌変更で支給する場合は、その後の勤務の実態まで含めて見ておかないと、退職金として取り扱えなくなることがあります。事業承継や代表交代をお考えの段階でご相談ください。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。