ふじみの会計事務所公認会計士・税理士|埼玉県ふじみ野市 LINEで相談

源泉徴収

退職所得控除は20年まで年40万円、20年超は年70万円。
前に退職金を受け取っていると減ります

退職金の税金が軽いのは、退職所得控除があるからです。勤続年数に応じて、収入金額から直接引ける金額が決まっています。

ただし、この控除額は前に退職金を受け取っていると減ります。しかも、確定拠出年金の一時金が絡むと、さかのぼって見る期間が令和8年1月1日から変わりました。

計算の順番と、減るときの考え方を、国税庁のタックスアンサーNo.1420とNo.2732で確認していきます。

公開 最終更新

この記事の要点

退職所得控除額は、勤続年数20年以下なら40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)、20年超なら800万円+70万円×(勤続年数-20年)です。勤続年数の1年未満の端数は1年に切り上げるので、10年2か月は11年で440万円、30年なら1,500万円になります。前に退職金を受け取っている場合は重複期間の分だけ控除額が減り、前年以前4年内が原則、確定拠出年金の老齢一時金が絡むと令和8年1月1日以後は9年内・19年内になります。国税庁タックスアンサーNo.1420・No.2732をもとに整理しました。

控除額の表。20年を境に40万円と70万円

退職所得控除額は、勤続年数だけで決まります。収入金額がいくらかは関係ありません。20年を境に、1年あたりの単価が40万円から70万円に上がる二段構えです。国税庁のタックスアンサーNo.1420には、次の表が載っています。

勤続年数(=A)退職所得控除額
20年以下40万円 × A(80万円に満たない場合には80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (A - 20年)

20年ちょうどのところで40万円×20年=800万円になり、そこから先が1年あたり70万円ずつ増えていきます。表がつながるように作られているわけです。タックスアンサーには具体例も2つ載っています。

国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」

(例1)勤続年数が10年2か月の人の場合の退職所得控除額
勤続年数は11年になります。(端数の2か月は1年に切上げ)
40万円×(勤続年数)=40万円×11年=440万円
(例2)勤続年数が30年の人の場合の退職所得控除額
800万円+70万円×(勤続年数-20年)=800万円+70万円×10年=1,500万円

なお、障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、この方法で計算した額に100万円を加えます。また、計算した額が80万円未満である場合には、退職所得控除額は80万円になります。勤続1年でも80万円は確保される、ということです。

勤続年数の数え方。1年未満は切り上げ

控除額が勤続年数だけで決まる以上、年数の数え方がそのまま金額に直結します。勤続年数とは、原則として、退職手当等の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間(勤続期間)の年数で、1年に満たない端数があるときは1年に切り上げます。切り捨てではありません。

上の例1がまさにそれで、10年2か月は11年として扱われ、控除額は440万円になります。2か月のために40万円増える計算です。逆にいえば、退職日が年度の変わり目をまたぐかどうかだけで、控除額が40万円(20年超なら70万円)動くことがあります。退職金の支給日を決めるときは、ここを先に見ておく価値があります。

支払者の下で勤務した期間には、次のものも含まれるとされています。個人事業を相続人が引き継いだ場合の被相続人の下で勤務した期間、支払者が合併法人である場合の被合併法人の下で勤務した期間、支払者が分割承継法人である場合の分割法人の下で勤務した期間です。組織再編で会社の名前が変わっていても、期間はつながります。

勤続期間に含まれる期間、除かれる期間

勤続期間に何が入り、何が入らないかは、タックスアンサーNo.2732に整理されています。休んでいた期間が入るのか、前にいた期間が入るのか。ここは判断が分かれやすいところなので、そのまま表にしておきます。

区分内容
含まれる期間長期の欠勤や病気での休職の期間
過去に同一の支払者の下で勤務した期間
その支払者または他の者の下で前に勤務した期間で、退職給与規程などの明らかな定めに基づき、退職手当等の支払金額の計算の基礎に含まれる期間
除かれる期間日額表丙欄の適用を受けていた期間
他の支払者の下で勤務するために休職した期間
その支払者から前に支払を受けた退職手当等の支払金額の計算の基礎となった期間の末日以前の期間

病気で長く休んでいた期間は含まれる、というのは押さえておきたいところです。一方、出向のように他の支払者の下で勤務するために休職した期間は除かれます。ただし、退職給与規程などの明らかな定めに基づいて支払金額の計算の基礎に含まれている場合は、含まれる期間のほうに入ります。規程に書いてあるかどうかで結論が変わるということです。

前に退職金を受け取っていると控除額が減る

ここからが本題です。前に退職金を受け取ったことがある場合、同じ期間について二度控除を受けることはできません。No.2732は、重複期間がある場合には、本年分の勤続年数に基づき計算した退職所得控除額から、重複期間の年数に基づき計算した退職所得控除額相当額を控除した残額が退職所得控除額になる、としています。

国税庁 タックスアンサー No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」

なお、次に掲げる重複期間がある場合には、本年分の退職手当等の勤続年数に基づき上記表により算出した退職所得控除額から、重複期間の年数(重複期間に1年未満の端数がある場合には切り捨てます。)に基づき上記表により算出した退職所得控除額相当額を控除した残額が退職所得控除額となります。

気をつけたいのは端数の向きです。本年分の勤続年数は1年未満を切り上げ、重複期間は1年未満を切り捨てます。向きが逆です。どちらも納税者に有利な方向に働く、と覚えておくとよいと思います。

重複期間が問題になるのは大きく2つの場面です。1つは、本年分の退職手当等が、前年以前に受け取った退職手当等の勤続期間を通算して計算されている場合。もう1つが、通算されてはいないけれど、一定期間内に前の退職手当等を受け取っている場合です。後者の「一定期間」が、次の項目です。

さかのぼる期間は4年・9年・19年

前の退職手当等をどこまでさかのぼって見るのか。原則は前年以前4年内ですが、確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金が絡むと、期間が伸びます。しかも令和8年1月1日を境に取扱いが変わったところがあります。No.2732の記載を表にすると、次のとおりです。

場面さかのぼる期間
原則(下の2つ以外)前年以前4年内に支払を受けた退職手当等
前年以前9年内に確定拠出年金の老齢一時金(令和8年1月1日以後に支払を受けたものに限る)の支払を受けた場合令和8年1月1日以後に支払を受けた退職手当等で前年以前9年内のもの/令和8年1月1日前に支払を受けた退職手当等で前年以前4年内のもの
前年以前19年内に退職手当等の支払を受け、本年中に確定拠出年金の老齢一時金の支払を受ける場合前年以前19年内に支払を受けた退職手当等

真ん中の行が、令和8年1月1日以後に効いてくる部分です。先に確定拠出年金の一時金を受け取り、後から会社の退職金を受け取る、という順番のときに、見る期間が4年内から9年内に伸びています。しかも、同じ一つの判定の中で、令和8年1月1日の前後で4年内と9年内を使い分ける作りになっています。受け取った日がいつかを、一件ずつ確かめる必要があるということです。

いちばん下の行の19年内は、先に会社の退職金を受け取り、後から確定拠出年金の一時金を受け取る場合です。こちらは以前からある取扱いで、期間が長く取られています。iDeCoの一時金をいつ受け取るかを考えるときは、この3行を並べて、自分がどの行に当たるのかを先に決めてください。

前の退職金が控除額に満たなかった場合

前にもらった退職金の額が小さかった場合、その勤続期間の全部を重複期間として扱うのは実態に合いません。そこでNo.2732は、前の退職手当等の収入金額が、その勤続年数を基として計算した退職所得控除額に満たない場合には、前の勤続期間を次の算式で計算した年数に置き換えて重複期間を計算する、としています。

前の退職手当等の収入金額算式
800万円以下の場合収入金額 ÷ 40万円
800万円を超える場合(収入金額 - 800万円)÷ 70万円 + 20

算式で計算した数の1未満の端数は切り捨てます。控除額の表を逆に使って、「実際にもらった金額なら、何年分の控除を使ったことになるか」を出している形です。前の退職金の額を40万円で割り戻せば、実質何年分の控除を使ったことになるかが出る、という理屈です。前の勤続期間が長くても、実際に受け取った金額に見合う年数しか差し引かれないということになります。

控除した後の計算と、申告書を出さない場合の20.42%

退職所得控除額が出たら、そこから課税退職所得金額を計算します。一般退職手当等なら、収入金額から退職所得控除額を引いて2分の1を掛けます。ただし、役員等勤続年数が5年以下の特定役員退職手当等には2分の1がなく、役員等以外で勤続5年以下の短期退職手当等は、控除後の金額のうち300万円を超える部分に2分の1がありません。

区分課税退職所得金額
一般退職手当等(収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2
特定役員退職手当等収入金額 - 退職所得控除額
短期退職手当等(控除後300万円以下)(収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2
短期退職手当等(控除後300万円超)150万円 + {収入金額 -(300万円 + 退職所得控除額)}

最後に手続です。「退職所得の受給に関する申告書」を支払者に提出していれば、支払者が税額を計算して源泉徴収してくれるので、原則として確定申告は必要ありません。提出していない場合は、支払金額の20.42パーセントが源泉徴収され、受給者本人が確定申告で精算することになります。退職所得控除が一切反映されないまま20.42パーセントが引かれますから、申告書は必ず出してください。

支払う側の納付期限にも触れておきます。退職手当等を支払うときは、所得税および復興特別所得税を源泉徴収して、原則として翌月の10日までに納めなければなりません。なお、死亡退職により支払う退職手当等で相続税の課税の対象となるものは、所得税の課税の対象とならないため、源泉徴収は必要ありません。

よくある質問

退職所得控除額はいくらになりますか

退職所得控除額は、勤続年数だけで決まります。収入金額がいくらかは関係ありません。20年を境に、1年あたりの単価が40万円から70万円に上がる二段構えです。国税庁のタックスアンサーNo.1420には、次の表が載っています。→ 本文で読む

勤続年数に1年未満の端数があるときはどうしますか

控除額が勤続年数だけで決まる以上、年数の数え方がそのまま金額に直結します。勤続年数とは、原則として、退職手当等の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間(勤続期間)の年数で、 1年に満たない端数があるときは1年に切り上げます。 切り捨てではありません。→ 本文で読む

前に退職金を受け取っていると退職所得控除はどうなりますか

ここからが本題です。前に退職金を受け取ったことがある場合、同じ期間について二度控除を受けることはできません。No.2732は、重複期間がある場合には、本年分の勤続年数に基づき計算した退職所得控除額から、重複期間の年数に基づき計算した退職所得控除額相当額を控除した残額が退職所得控除額になる、としています。→ 本文で読む

前の退職金はどこまでさかのぼって見るのですか

前の退職手当等をどこまでさかのぼって見るのか。原則は前年以前4年内ですが、確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金が絡むと、期間が伸びます。しかも 令和8年1月1日 を境に取扱いが変わったところがあります。No.2732の記載を表にすると、次のとおりです。→ 本文で読む

退職所得の受給に関する申告書を出さないとどうなりますか

退職所得控除額が出たら、そこから課税退職所得金額を計算します。一般退職手当等なら、収入金額から退職所得控除額を引いて2分の1を掛けます。ただし、役員等勤続年数が5年以下の特定役員退職手当等には2分の1がなく、役員等以外で勤続5年以下の短期退職手当等は、控除後の金額のうち300万円を超える部分に2分の1がありません。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
  2. 国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

退職金を出す側も、受け取る側も、先に控除額を出しておいてください。

勤続年数の数え方を一つ間違えると、控除額が40万円も70万円も動きます。役員退職金の支給を検討している段階でも、iDeCoの一時金をいつ受け取るか迷っている段階でも、数字を並べればその場でお答えできます。初回30分は無料です。