源泉徴収
人を雇ったら事業主がしなければならない源泉徴収。
開設届出書は1か月以内、納付は翌月10日まで、常時10人未満なら年2回の特例
初めて人を雇う事業主の方から、「給与から税金を引いて納めるのは自分の仕事ですか」と聞かれます。そのとおりで、給与を支払う側が所得税を差し引いて国に納める義務があります。これが源泉徴収です。
答えを先に書くと、給与の支払を始めたら1か月以内に開設届出書を出し、毎月の給与から税額表で求めた所得税を差し引き、翌月10日までに納付します。支給人員が常時10人未満なら、申請して年2回の納付にまとめることもできます。
会社だけでなく、個人事業主も源泉徴収義務者です。国税庁のタックスアンサーNo.2110とNo.2505で、義務のある人、届出、計算、納付の順に確認していきます。
この記事の要点
給与や税理士報酬などを支払う事業主は、会社でも個人でも源泉徴収義務者です。給与の支払を始めたら「給与支払事務所等の開設届出書」を1か月以内に提出し、給与を払うときは源泉徴収税額表の甲欄・乙欄で税額を求め、支払った月の翌月10日までに納付します。給与の支給人員が常時10人未満なら、申請により7月と翌年1月の年2回にまとめる納期の特例が使えます。国税庁タックスアンサーNo.2110・No.2505をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
源泉徴収制度とは。支払う側が所得税を差し引いて納める
源泉徴収制度とは、給与や利子、配当、税理士報酬などの所得を支払う者が、支払の際に所定の方法で所得税額を計算し、支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付する仕組みです。国税庁のタックスアンサーNo.2110は、申告納税制度と併せて特定の所得についてこの制度が採用されている、としています。
国税庁 タックスアンサー No.2110「事業主がしなければならない源泉徴収」
この源泉徴収制度は、①給与や利子、配当、税理士報酬などの所得を支払う者が、②その所得を支払う際に所定の方法により所得税額を計算し、③支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付するというものです。
所得税は本来、所得を得た本人が自分で計算して申告し納める税金です。しかし給与などは、受け取る側ではなく支払う側が先に税金を引いて納めておく仕組みになっています。この義務を負う人を源泉徴収義務者といいます。
源泉徴収義務者になる人・ならない人
源泉徴収の対象とされている所得の支払者は、会社や協同組合はもちろん、人格のない社団・財団や個人であっても、すべて源泉徴収義務者になります。ただし、常時2人以下の家事使用人だけに給与を支払っている個人は、その給与や退職金について源泉徴収をする必要がありません。
| 支払者 | 源泉徴収の義務 |
|---|---|
| 会社・協同組合 | ある |
| 人格のない社団・財団 | ある |
| 個人事業主(従業員に給与を支払う) | ある |
| 常時2人以下の家事使用人だけに給与を支払う個人 | その給与・退職金について不要 |
| 給与の源泉徴収義務のない個人が支払う弁護士報酬など | 不要 |
もうひとつ例外があります。給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う弁護士報酬などの報酬・料金については、源泉徴収の必要がありません。No.2110は例として、給与所得者が確定申告などをするために税理士に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はないとしています。従業員を雇っていない個人が士業に報酬を払うときは、源泉徴収は不要です。逆に、従業員を1人でも雇って給与の源泉徴収義務がある個人事業主は、税理士報酬からも源泉徴収します。給与と外注費の線引きは人を雇うと源泉徴収の義務が生まれますで整理しています。
給与支払事務所等の開設届出書は1か月以内
国内において会社や個人が新たに給与の支払を始めて源泉徴収義務者となる場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を、給与支払事務所等を開設してから1か月以内に提出します。提出先は、給与を支払う事務所、事業所などの所在地を所轄する税務署長です。
この届出書を出すと、税務署から源泉徴収に必要な納付書などが届くようになります。期限は開設から1か月以内ですから、初めての給与を払う前後に出すことになります。開業届と一緒に出しておくと忘れません。提出先は本人の住所地ではなく、給与を支払う事務所の所在地の税務署である点にも注意してください。
源泉徴収税額の計算。税額表の甲欄と乙欄
賞与以外の給料や賃金を支払う際に源泉徴収する税額は、「給与所得の源泉徴収税額表」で求めます。税額表には月額表と日額表があり、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出の有無で、適用する欄が甲欄と乙欄に分かれます。
国税庁 タックスアンサー No.2110「事業主がしなければならない源泉徴収」
例えば、給料が月払いで「扶養控除等申告書」を事業主に提出している人の場合は、月額表の甲欄を適用して源泉徴収税額を求めます。提出していない人の場合は月額表の乙欄を適用することになります。
給与が賞与かそれ以外かで算定方法が違うため、まず支払う給与を賞与とそれ以外に区分します。賞与に対する源泉徴収税額は、通常「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って求めますが、月額表を使う場合もあります。
平成25年1月1日から令和29年12月31日までの間に生ずる所得については、源泉所得税と併せて復興特別所得税を徴収します。平成25年分以降の源泉徴収税額表の税額には復興特別所得税相当額が含まれています。令和8年度税制改正で防衛特別所得税が創設され令和9年以後に適用されますが、合計税率に変更はなく、源泉徴収税額の計算方法に変更は生じません。令和9年分以降の税額表には、防衛特別所得税および復興特別所得税相当額が含まれています。従業員から扶養控除等申告書をもらっておくことが、甲欄を使うための前提です。2か所から給与を受ける人の乙欄の扱いは2か所から給与をもらうと、2つめは「乙欄」で多めに引かれますで整理しています。
納付は支払った月の翌月10日まで。税額がなくても納付書を出す
源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として、その対象となる所得を支払った月の翌月10日までに納付します。納付は、所得税徴収高計算書データをe-Taxで送信して納付する(キャッシュレス納付)か、「所得税徴収高計算書(納付書)」を添えて最寄りの金融機関または所轄の税務署の窓口で行います。
納付の際は、所得税と復興特別所得税を区分せず、合計額を納付書に記載します。納付期限の日が日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合は、その休日明けの日が納付期限です。
見落としやすいのが、No.2110の注2です。居住者に給与等を支払う者は、徴収して納付すべき所得税の額がない場合でも、「所得税徴収高計算書(納付書)」を提出するものとされています。給与が少なくて税額がゼロの月でも、納付書は出します。納付書には住所や氏名などの記入漏れがないようにしてください。
常時10人未満なら納期の特例で年2回にまとめられる
給与の支給人員が常時10人未満のときは、源泉徴収した所得税および復興特別所得税の納期を、毎月ではなく7月と翌年1月の年2回にまとめられる特例があります。適用を受けるには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出します。
この特例の対象は、給与や退職手当、税理士などの報酬・料金について源泉徴収した所得税および復興特別所得税に限られます。No.2505によれば、1月から6月までに源泉徴収した分は7月10日、7月から12月までの分は翌年1月20日が納付期限です。
| 原則 | 納期の特例 | |
|---|---|---|
| 対象 | すべての源泉徴収義務者 | 給与の支給人員が常時10人未満 |
| 納付期限 | 支払った月の翌月10日 | 1月〜6月分は7月10日、7月〜12月分は翌年1月20日 |
| 手続 | 不要 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 |
申請書はいつでも提出できます。提出した日の属する月の翌月末日までに税務署長から承認または却下の通知がない場合は、その申請月の翌月末日に承認があったものとされ、申請月の翌々月の納付分からこの特例が適用されます。提出先は、給与の支払事務を取り扱う事務所等の所在地を所轄する税務署長です。小さな事業所なら、開設届出書と同時にこの申請書を出しておくと、毎月の納付事務から解放されます。詳しくは源泉所得税の納期の特例をご覧ください。
年末調整。扶養控除等申告書を出した2,000万円以下の人
「扶養控除等申告書」を提出し、かつ、給与等の金額が2,000万円以下の人については、その年の最後の給与等の支払をする際に年末調整を行う必要があります。No.2110は注意事項としてこれを挙げています。
毎月の源泉徴収は税額表による概算です。年の最後の給与で、1年分の正しい所得税を計算して差額を精算するのが年末調整です。源泉徴収に必要な「源泉徴収税額表」「扶養控除等申告書」「源泉徴収簿」「年末調整のしかた」などは国税庁のページで公開されています。扶養控除等申告書を出していない乙欄の人は、年末調整の対象になりません。年末調整の対象者と手順は年末調整の対象者と順序で整理しています。
よくある質問
個人事業主も源泉徴収義務者になりますか
源泉徴収の対象とされている所得の支払者は、会社や協同組合はもちろん、人格のない社団・財団や個人であっても、すべて源泉徴収義務者になります。ただし、常時2人以下の家事使用人だけに給与を支払っている個人は、その給与や退職金について源泉徴収をする必要がありません。→ 本文で読む
人を雇い始めたときに出す届出書は何ですか
国内において会社や個人が新たに給与の支払を始めて源泉徴収義務者となる場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を、給与支払事務所等を開設してから1か月以内に提出します。提出先は、給与を支払う事務所、事業所などの所在地を所轄する税務署長です。→ 本文で読む
給与から差し引く源泉徴収税額はどのように計算しますか
賞与以外の給料や賃金を支払う際に源泉徴収する税額は、「給与所得の源泉徴収税額表」で求めます。税額表には月額表と日額表があり、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出の有無で、適用する欄が甲欄と乙欄に分かれます。→ 本文で読む
源泉徴収した所得税はいつまでに納付しますか
源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として、その対象となる所得を支払った月の翌月10日までに納付します。納付は、所得税徴収高計算書データをe-Taxで送信して納付する(キャッシュレス納付)か、「所得税徴収高計算書(納付書)」を添えて最寄りの金融機関または所轄の税務署の窓口で行います。→ 本文で読む
源泉所得税の納付を年2回にまとめる方法はありますか
給与の支給人員が常時10人未満のときは、源泉徴収した所得税および復興特別所得税の納期を、毎月ではなく7月と翌年1月の年2回にまとめられる特例があります。適用を受けるには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出します。→ 本文で読む
事業主はどの従業員について年末調整をする必要がありますか
「扶養控除等申告書」を提出し、かつ、給与等の金額が2,000万円以下の人については、その年の最後の給与等の支払をする際に年末調整を行う必要があります。No.2110は注意事項としてこれを挙げています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.2110 事業主がしなければならない源泉徴収」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2110.htm - 国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
人を雇う前に、開設届出書と納期の特例の申請書をそろえてください。
源泉徴収は、給与を払い始めた月から毎月続く事務です。開設届出書を出し、納期の特例の承認を受けておけば、納付は年2回で済みます。従業員から扶養控除等申告書を受け取り、税額表の甲欄で毎月の税額を求める流れを、最初の給与の前に一緒に組み立てます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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