法人
役員への経済的利益は給与になります。
国税庁が挙げる12の例と、損金にできる「毎月おおむね一定」の条件
ひとり会社では、会社の口座から自分の私的な支出を払ってしまう、会社から無利息で借りる、会社の資産を安く譲ってもらう、といったことが起きやすいものです。
答えを先に書くと、こうした「会社の行為によって役員が受ける利益」は、金銭の給与でなくても役員給与として扱われます。国税庁はこれを経済的利益と呼び、具体例を12挙げています。
そして、給与とされた経済的利益が損金になるかどうかは、毎月おおむね一定かどうかで決まります。どんな行為が経済的利益に当たるのか、損金になる条件は何かを、国税庁のタックスアンサーNo.5202で確認していきます。
この記事の要点
会社が役員に対して行う資産の贈与や低額譲渡、債権放棄、住宅の無償提供、無利息の貸付け、個人的費用の負担、社交団体の入会金の負担などは「経済的利益」として役員給与に含まれます。役員に継続的に供与される経済的利益のうち毎月おおむね一定のものは定期同額給与として損金になりますが、それ以外は損金になりません。ひとり会社で会社のお金と個人の支出が混ざりやすい方向けに、国税庁タックスアンサーNo.5202をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
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経済的利益も役員給与に含まれる
国税庁のタックスアンサーNo.5202は、法人が役員および特殊関係使用人(役員等)に支給する給与には、金銭によるもののほか、債務の免除による利益その他の経済的な利益も含まれる、としています。現金で払っていなくても、役員が得をしていれば給与と見るということです。
国税庁 タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」
この経済的な利益とは、例えば次に掲げるもののように、法人の行為によって実質的にその役員等に対して給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらすものをいいます。
ポイントは「法人の行為によって」「給与を支給したのと同様の経済的効果」という2点です。会社が何かをした結果、役員の懐が実質的に潤っていれば、それは給与を払ったのと同じだと考えます。ひとり会社では社長と会社が一体になりがちですが、税務上は別人格です。会社の財産を社長個人が使えば、その分は給与になります。役員給与の基本は定期同額給与で整理しています。
国税庁が挙げる経済的利益の12の例
No.5202は、経済的利益の例を12挙げています。会社が役員に何かを「あげる」「安く売る」「高く買う」「タダで貸す」「肩代わりする」場面がひとまとめになっています。
| 会社の行為 | 給与になる金額 | |
|---|---|---|
| 1 | 役員等に資産を贈与した | その資産の時価 |
| 2 | 役員等に資産を時価より低額で譲渡した | 時価と譲渡価額との差額 |
| 3 | 役員等から資産を時価より高額で買い入れた | 買入れ価額と時価との差額 |
| 4 | 役員等に対する債権を放棄・免除した | その債権の額 |
| 5 | 役員等の債務を無償で引き受けた | その債務の額 |
| 6 | 居住用の土地・家屋を無償または低額で提供した | 通常取得すべき賃貸料と実際の賃貸料との差額 |
| 7 | 無利息または低率で金銭を貸し付けた | 通常取得すべき利率による利息と実際の利息との差額 |
| 8 | 上記6・7以外の用役を無償または低額で提供した | 通常取得すべき対価と実際の対価との差額 |
| 9 | 機密費等の名義で支給し、法人業務のために使ったことが明らかでない | その金額 |
| 10 | 役員等の個人的費用を負担した | その負担額 |
| 11 | 役員等の社交団体の入会金等で役員等が負担すべきものを負担した | その額 |
| 12 | 役員等を被保険者・保険金受取人とする生命保険契約の保険料を負担した | 負担した保険料の額 |
4の債権放棄と10の個人的費用の負担は、ひとり会社で特に多いところです。役員貸付金を返さないまま会社が放棄すれば、その債権の額が給与になります。会社のカードで私的な買い物をして精算しなければ、個人的費用の負担額が給与です。6の住宅の無償・低額提供については、賃貸料相当額の計算を役員社宅の家賃で解説しています。
所得税で課税されない利益は給与にしない
例に当たっていても、給与として扱われない場合があります。No.5202は、法人が役員等に経済的な利益の供与をした場合で、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、その法人が給与として経理しなかったものであるときは、給与として扱われない、としています。
国税庁 タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」
ただし、法人が役員等に対し経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、その法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として扱われません。
2つの条件がどちらも必要です。所得税で課税されない利益であること、そして会社側でも給与として経理していないことです。何が所得税法上課税されない経済的利益に当たるかは、所得税側の取扱いで決まります。役員への利益を給与にしないつもりなら、まず所得税で非課税とされているかを確かめてください。片方だけでは足りません。
毎月おおむね一定なら定期同額給与として損金になる
給与と扱われた経済的利益が損金になるかは、定期同額給与に当たるかで決まります。No.5202は、役員に対して継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給与に該当して損金の額に算入されるが、その他のものは定期同額給与に該当せず損金の額に算入されない、としています。
国税庁 タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」
役員に対して継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給与に該当し、損金の額に算入されますが、その他のものは定期同額給与に該当せず、損金の額に算入されません。
毎月の社宅家賃の差額や、毎月一定額の保険料負担のように、金額が毎月おおむね一定で継続しているものは損金になります。一方、あるときだけ債権を放棄した、たまたま私的な旅行代金を会社が払った、といった一回きりの利益は定期同額給与になりません。損金にならないうえ、役員個人には給与として所得税がかかりますから、会社と個人の両方で税負担が増えます。ひとり会社の設計を考える際はマイクロ法人の記事もあわせてご覧ください。
使用人兼務役員は、他の使用人と同程度なら損金になる
No.5202の注は、法人が使用人兼務役員に対して供与した経済的な利益の額(住宅等の貸与をした場合の経済的な利益を除く)が他の使用人に対して供与される程度のものである場合には、使用人としての職務に係るものとされ、損金の額に算入される、としています。
部長兼取締役のように使用人の身分を持つ役員なら、ほかの従業員と同じ水準の利益は従業員としての分と見るということです。ただし住宅の貸与は除かれています。
なお、この注はひとり会社の社長には当てはまりません。No.5205は、使用人兼務役員になれない役員として、代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人、副社長・専務・常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員、合名会社・合資会社・合同会社の業務執行社員などを挙げています。代表取締役や合同会社の業務執行社員は使用人兼務役員になれませんから、経済的利益はすべて役員としての給与として判定します。
不相当に高額、隠蔽・仮装は損金にならない
定期同額給与に当たっても、金額が不相当に高額な部分や、事実を隠蔽・仮装して経理したものは損金になりません。No.5202は、役員に対する経済的利益の額が不相当に高額である場合や、法人が事実を隠蔽しまたは仮装して経理することにより供与した経済的な利益の額は損金の額に算入されない、としています。
会社の経費に紛れ込ませた個人的費用は、後から見つかると給与とされ、しかも隠蔽・仮装として損金にもならない、という最も不利な結果になります。会社と個人の支出を口座やカードの段階で分けておくのがいちばんの対策です。No.5202が根拠として挙げているのは、法人税法22条・34条、法人税法施行令69・70、法人税基本通達9-2-9~11、9-2-24です。
よくある質問
お金以外で役員が受けた利益も給与になりますか
国税庁のタックスアンサーNo.5202は、法人が役員および特殊関係使用人(役員等)に支給する給与には、金銭によるもののほか、債務の免除による利益その他の経済的な利益も含まれる、としています。現金で払っていなくても、役員が得をしていれば給与と見るということです。→ 本文で読む
会社が役員の個人的な費用を払ったらどうなりますか
No.5202は、経済的利益の例を12挙げています。会社が役員に何かを「あげる」「安く売る」「高く買う」「タダで貸す」「肩代わりする」場面がひとまとめになっています。 4の債権放棄と10の個人的費用の負担は、ひとり会社で特に多いところです。 役員貸付金を返さないまま会社が放棄すれば、その債権の額が給与になります。 会社のカードで私的な買い物をして精算しなければ、個人的費用の負担額が給与です。6の住宅の無償・低額提供については、賃貸料相当額の計算を 役員社宅の家賃 で解説しています。→ 本文で読む
役員への経済的利益が給与にならない場合はありますか
例に当たっていても、給与として扱われない場合があります。No.5202は、法人が役員等に経済的な利益の供与をした場合で、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、その法人が給与として経理しなかったものであるときは、給与として扱われない、としています。→ 本文で読む
役員への経済的利益は損金になりますか
給与と扱われた経済的利益が損金になるかは、定期同額給与に当たるかで決まります。No.5202は、役員に対して継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給与に該当して損金の額に算入されるが、その他のものは定期同額給与に該当せず損金の額に算入されない、としています。→ 本文で読む
ひとり会社の社長は使用人兼務役員になれますか
No.5202の注は、法人が使用人兼務役員に対して供与した経済的な利益の額(住宅等の貸与をした場合の経済的な利益を除く)が他の使用人に対して供与される程度のものである場合には、使用人としての職務に係るものとされ、損金の額に算入される、としています。→ 本文で読む
個人的費用を会社の経費に入れていた場合はどうなりますか
定期同額給与に当たっても、金額が不相当に高額な部分や、事実を隠蔽・仮装して経理したものは損金になりません。No.5202は、役員に対する経済的利益の額が不相当に高額である場合や、法人が事実を隠蔽しまたは仮装して経理することにより供与した経済的な利益の額は損金の額に算入されない、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.5202 役員等に対する経済的利益」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5202.htm - 国税庁「No.5205 役員のうち使用人兼務役員になれない人」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5205.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
会社のお金と自分のお金は、口座とカードの段階で分けてください。
役員貸付金の放棄、私的な支出の会社負担、無利息の借入れは、いずれも役員給与とされ、しかも一回きりのものは損金になりません。会社にも個人にも税金がかかる、いちばん不利な形です。決算前に役員貸付金や仮払金の残高を見直しておくと、給与とされるものを事前に整理できます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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