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消費税

免税事業者が消費税1%で還付を受けるには。
届出の特例と、インボイス登録の経過措置

飲食料品の売上は1%、仕入れや経費は10%のまま。令和9年4月からは、売上に対する消費税より、仕入れで払った消費税の方が大きくなる事業者が出てきます。

課税事業者として本則課税で申告すれば、差額が還付になります。ところが、免税事業者は、仕入れの消費税を控除できないので、還付も受けられません。還付を受けるには、課税事業者になる手続が要ります。

国税庁が令和8年9月に公表したQ&Aは、課税事業者になる方法を2つ、それに課税期間の特例を、手続の期限つきで説明しています。いずれも飲食料品の税率が引き下げられる法案が成立した場合の内容です。

公開 最終更新

この記事の要点

飲食料品を売る免税事業者が、仕入れの消費税が10%で売上が1%になる令和9年4月以後に還付を受けるには、課税事業者になる必要があります。国税庁のQ&Aによると、課税事業者選択届出書は令和9年4月1日の属する課税期間中の提出でよく、インボイスの登録経過措置なら令和9年3月17日までの申請で4月1日から課税事業者になれます。課税期間の短縮、免税に戻れない期間、棚卸資産の扱いまで整理しました。法案が成立した場合の内容です。

仕入れが10%・売上が1%だと、差額が還付になる

消費税の納付税額は、売上げに係る税額から仕入れに係る税額を引いて計算します。仕入れ(経費)に係る税額の方が大きいと、還付が生じます。飲食料品を売る事業者は、仕入れが標準税率の10%で売上げが1%になる場合、課税事業者として一般課税(本則課税)で申告すれば、還付を受けられる可能性があります。

ところが、消費税の納税義務が免除される免税事業者は、課税仕入れ等に係る消費税額の控除ができないので、還付を受けることもできません。基準期間(個人事業者はその年の前々年、1年決算の法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者が、免税事業者に当たります。簡易課税制度を使っている事業者も、還付を受けられません。

必ず還付になるわけではありません

課税売上げに係る消費税額の方が、課税仕入れ等に係る消費税額より多ければ、差額は納めることになります。国税庁のパンフレットも、還付を受けられる「可能性があります」という書き方です。自分の場合はどちらになるのかを、先に数字で確かめてください。

免税事業者が課税事業者になる方法は2つ

免税事業者が、令和9年4月以後の取引から課税事業者になって還付を受ける方法は、課税事業者選択届出書を出す方法と、インボイス発行事業者の登録を受ける方法の2つです。課税事業者になる日と、免税事業者に戻れない期間が変わります。

出すもの期限課税事業者になる日
① 課税事業者選択届出書消費税課税事業者選択届出書特例:令和9年4月1日の属する課税期間中その課税期間の初日(個人事業者・12月決算法人なら令和9年1月1日)
② インボイスの登録経過措置適格請求書発行事業者の登録申請書登録希望日の15日前の日まで(登録希望日を令和9年4月1日にするなら、令和9年3月17日まで)登録希望日(令和9年4月1日)

① 課税事業者選択届出書の特例:4月1日を含む課税期間中でよい

免税事業者が課税事業者になることを選ぶ場合、原則は、選ぶ課税期間の初日の前日までに、消費税課税事業者選択届出書を税務署長に出します。今回の特例では、飲食料品の譲渡を行う免税事業者は、令和9年4月1日の属する課税期間中に出せば、その課税期間から課税事業者になれます。

国税庁 Q&A 問3-2(今回設けられる特例)

この特例の適用を受ける場合には、「消費税課税事業者選択届出書」の「適用開始課税期間」欄に令和9年4月1日の属する課税期間を記載し、「参考事項」欄に「飲食料品特例」と記載します。なお、法案が成立した場合には、この届出書は令和9年4月1日前であっても提出できるようになる予定です。

個人事業者と12月決算の法人の例では、令和9年1月1日から課税事業者になります。このため、令和9年1月1日から3月31日までの飲食料品の譲渡は、税率8%で消費税の申告をすることになります。課税事業者を選び続ければ、令和11年4月1日から12月31日までの譲渡も、8%で申告することになります。

課税事業者選択届出書を出して課税事業者になった場合は、原則として2年間は課税事業者として申告が必要です。選ぶのをやめるときは、やめる課税期間の初日の前日までに、消費税課税事業者選択不適用届出書を出します。この届出書は、課税事業者になった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ出せません。上の例では、令和10年1月1日以後に出すことができ、令和10年中に出せば、令和11年から免税事業者になれます(基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどが前提です)。

② インボイス登録の経過措置:令和9年3月17日までに申請

インボイス発行事業者の登録を受けている間、その事業者は課税事業者として消費税の申告をします。免税事業者が登録を受けるには、本来は課税事業者選択届出書を出す必要がありますが、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間に登録を受ける場合は、登録申請書に登録希望日を書いて出せば、その日から課税事業者になれます。これは現行の経過措置で、今回の改正で変わるものではありません。

登録希望日は、申請書を出す日から15日以後の日で選びます。令和9年4月1日から課税事業者になりたい場合は、登録希望日を4月1日と書き、令和9年3月17日までに申請書を出します。この方法なら、1月から3月までの取引は申告の対象になりません。

登録すると、インボイスを交付する義務が生じます

インボイス発行事業者の登録を受けると、取引の相手方(課税事業者に限ります)から求められたときに、インボイスを交付する義務などが課されます。課税事業者選択届出書だけを出す場合には、この義務はありません。

この方法では、登録日の属する課税期間の翌課税期間から、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは、免税事業者になれません。令和9年4月1日に登録した例では、令和11年3月31日の属する課税期間(令和11年)まで課税事業者です。免税事業者に戻るには、免税事業者になろうとする課税期間の初日から数えて15日前の日までに、登録の取消しを求める届出書を出します(令和12年から免税事業者になる例では、令和11年12月17日まで)。この15日前の日は提出期限なので、土日祝日でも翌日には延びません。

2つの方法の違い

国税庁のQ&Aは、個人事業者が令和9年中に課税事業者になる2つの方法の違いを、表で比べています。課税事業者になる日、令和9年1月から3月の取引の扱い、免税事業者に戻れない期間が異なります。

① 課税事業者選択届出書② インボイスの登録経過措置
手続の概要原則の期限は令和8年12月31日までだが、令和9年4月1日の属する課税期間中でよい特例がある登録申請書に登録希望日(令和9年4月1日)を書き、令和9年3月17日までに提出
課税事業者になる日令和9年1月1日令和9年4月1日
令和9年1月〜3月の取引申告の対象(飲食料品は8%)申告の対象外
免税事業者に戻れない期間(原則)令和9年1月1日から令和10年12月31日まで令和9年4月1日から令和11年12月31日まで
免税事業者に戻る手続令和10年1月1日以後(令和10年中)に、不適用届出書を提出令和11年12月17日までに、登録の取消しを求める届出書を提出
インボイスの交付義務なしあり

Q&Aには、①の方法でも、課税期間の特例(次の節)を使えば、課税事業者でいる期間を、税率引下げが終わる令和11年3月31日までにそろえられる、という説明もあります。

課税期間の短縮で、還付を早める

課税期間は、原則として個人事業者は暦年、法人は事業年度です。課税期間の特例を使うと、これを3か月ごと、または1か月ごとに短縮できます。短縮した課税期間ごとに確定申告をするので、課税期間が1年間の場合より、消費税の還付を早く受けられます。

項目内容
短縮のしかた個人事業者の3か月ごとなら、1月から3月、4月から6月、7月から9月、10月から12月。1か月ごとなら、1月から1か月ごと。法人は事業年度の初日から3か月または1か月ごと
手続適用を受けようとする、短縮に係る課税期間の初日の前日までに「消費税課税期間特例選択届出書」を提出
やめるときやめようとする課税期間の初日の前日までに「消費税課税期間特例選択不適用届出書」を提出。事業を廃止した場合を除き、適用を受けた後の2年間はやめられない
年の途中で始めたとき課税期間の初日から適用開始の日の前日までを、一つの課税期間とみなして確定申告。例:令和9年3月31日に3か月ごとの届出書を出すと、同年1月から3月が一つの課税期間

これは現行の課税期間の特例で、今回の改正で変わるものではありません。免税事業者に戻るタイミングを、税率引下げが終わる令和11年3月31日に合わせたいときにも、この特例を組み合わせることがあります。

気をつけること:高額な設備投資と棚卸資産

課税事業者になったあとに設備投資をすると、免税事業者に戻れない期間が延びることがあります。また、免税事業者のときに仕入れた在庫の消費税は、一定の手続をすれば、課税事業者になった最初の課税期間の仕入控除税額に入れられます。

場面国税庁Q&Aの説明
調整対象固定資産の仕入れ課税事業者選択届出書を出して課税事業者になった日から2年を経過する日までに開始した課税期間中に、調整対象固定資産(棚卸資産以外の固定資産で100万円(税抜き)以上のもの)の課税仕入れ等を行い、その課税期間の確定申告を一般課税で行った場合(還付申告を含む)は、その課税期間の初日から原則として3年間は、免税事業者になれない
高額特定資産の仕入れ課税事業者が高額特定資産(1,000万円(税抜き)以上の棚卸資産または調整対象固定資産)の仕入れ等を行い、その課税期間の確定申告を一般課税で行った場合(還付申告を含む)は、その課税期間の初日から原則として3年間は、免税事業者になれない。インボイスの登録経過措置を使った場合も同じ
課税事業者になる前から持っている棚卸資産課税事業者になる課税期間の初日の前日に持っている棚卸資産のうち、免税事業者であった期間中の課税仕入れ等に係るものは、その課税仕入れ等の税額を、課税事業者になった課税期間の仕入控除税額の計算の基礎とみなす。この適用を受けるには、棚卸資産の明細書の保存が必要

簡易課税制度を使っている課税事業者も、還付を受けることはできません。飲食料品を売る簡易課税の事業者が、本則課税に移る届出の特例は食品を売る事業者がやることの記事にまとめました。

決める前に確かめること

課税事業者になるかどうかは、還付の見込みだけでなく、免税事業者に戻れない期間、インボイスの交付義務、設備投資の予定を合わせて決めます。次の点を、届出の期限より前に確かめておきます。

確かめること見るところ
売上と仕入の税額の見込み1%の売上に対する税額と、10%の仕入れ・経費に対する税額のどちらが大きいか。仕入れが大きければ還付、売上が大きければ納税
いつから課税事業者になるか令和9年1月1日から(①、1月から3月は8%で申告)か、令和9年4月1日から(②、1月から3月は申告の対象外)か
免税事業者に戻る時期課税事業者選択届出書の2年縛り、登録経過措置の期間、課税期間の特例で引下げ終了の令和11年3月31日にそろえるか
インボイスの交付②を選ぶと、課税事業者の取引先から求められたときにインボイスを交付する義務が生じる
設備投資の予定100万円(税抜き)以上の固定資産や、1,000万円(税抜き)以上の棚卸資産・固定資産の仕入れ
手持ちの在庫課税事業者になる前日の在庫を、明細書で残せるか

法案が成立する前の内容のため、届出書の様式や記載の方法は、審議の結果で変わる可能性があります。決める前に、税率の見込みと手続の期限を、一緒に確かめることをおすすめします。

よくある質問

免税事業者は、消費税1%になっても還付を受けられますか

消費税の納付税額は、売上げに係る税額から仕入れに係る税額を引いて計算します。仕入れ(経費)に係る税額の方が大きいと、還付が生じます。飲食料品を売る事業者は、仕入れが標準税率の10%で売上げが1%になる場合、課税事業者として一般課税(本則課税)で申告すれば、還付を受けられる可能性があります。→ 本文で読む

免税事業者が課税事業者になる方法はありますか

免税事業者が、令和9年4月以後の取引から課税事業者になって還付を受ける方法は、課税事業者選択届出書を出す方法と、インボイス発行事業者の登録を受ける方法の2つです。課税事業者になる日と、免税事業者に戻れない期間が変わります。→ 本文で読む

課税事業者選択届出書は、いつまでに出せばよいですか

免税事業者が課税事業者になることを選ぶ場合、原則は、選ぶ課税期間の初日の前日までに、消費税課税事業者選択届出書を税務署長に出します。今回の特例では、飲食料品の譲渡を行う免税事業者は、令和9年4月1日の属する課税期間中に出せば、その課税期間から課税事業者になれます。→ 本文で読む

インボイスの登録経過措置で、令和9年4月から課税事業者になれますか

インボイス発行事業者の登録を受けている間、その事業者は課税事業者として消費税の申告をします。免税事業者が登録を受けるには、本来は課税事業者選択届出書を出す必要がありますが、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間に登録を受ける場合は、登録申請書に登録希望日を書いて出せば、その日から課税事業者になれます。これは現行の経過措置で、今回の改正で変わるものではありません。→ 本文で読む

課税期間の特例とは何ですか

課税期間は、原則として個人事業者は暦年、法人は事業年度です。課税期間の特例を使うと、これを3か月ごと、または1か月ごとに短縮できます。短縮した課税期間ごとに確定申告をするので、課税期間が1年間の場合より、消費税の還付を早く受けられます。→ 本文で読む

課税事業者になったあとに、設備投資をしてもよいですか

課税事業者になったあとに設備投資をすると、免税事業者に戻れない期間が延びることがあります。また、免税事業者のときに仕入れた在庫の消費税は、一定の手続をすれば、課税事業者になった最初の課税期間の仕入控除税額に入れられます。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」(令和8年9月)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0026008-127_qa.pdf(PDF)
  2. 国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」パンフレット(令和8年9月)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0026008-127_pamphlet.pdf(PDF)
  3. 国税庁・財務省「消費税率引下げ特設サイト」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/zeiritsuhikisage.htm
  4. 国税庁「No.6102 消費税の軽減税率制度」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6102.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

課税事業者になるか、免税のままでいるかを、数字で比べます。

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