控除
税額控除とは。
所得税額から直接引ける配当控除・住宅ローン控除・外国税額控除などの一覧
「控除」という言葉は確定申告のあちこちに出てきますが、所得から引く控除と、税額から引く控除は別のものです。
答えを先に書くと、税額控除は、所得税額そのものから一定の金額を差し引く仕組みです。同じ金額なら、所得控除より税額控除のほうが税金の減り方は大きくなります。
国税庁のタックスアンサーNo.1200は、税額控除の主なものを一覧にしています。個人の方に関係が深いものを中心に、何があって、どんなときに使えるのかを順に確認します。
この記事の要点
税額控除とは、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から一定の金額を直接控除するもので、所得から引く所得控除とは効き方が違います。個人に関係が深いのは配当控除(配当所得の10パーセントまたは5パーセント)、外国税額控除、寄附金の特別控除、住宅借入金等特別控除、住宅耐震改修特別控除などです。事業者向けには給与等の支給額が増加した場合の特別控除もあります。国税庁タックスアンサーNo.1200をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
税額控除とは。所得控除との違い
税額控除とは、所得税額から一定の金額を差し引く仕組みです。国税庁のタックスアンサーNo.1200は、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除するもの、と定義しています。
国税庁 タックスアンサー No.1200「税額控除」
税額控除とは、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除するものです。
所得税の計算は、収入から所得を出し、所得から所得控除(基礎控除、社会保険料控除、医療費控除など)を引いて課税所得金額を求め、それに税率をかけて所得税額を出す、という順序です。税額控除は、この最後に出た所得税額から引きます。所得控除は「税率をかける前」、税額控除は「税率をかけた後」に効く、という違いです。税率をかける段階の計算は所得税の税率は7段階で整理しています。
配当控除。総合課税の配当所得の10パーセントまたは5パーセント
個人の方が最もよく使う税額控除の1つが配当控除です。No.1200は、総合課税の配当所得がある場合に、原則として、配当所得の金額の10パーセントまたは5パーセントに相当する金額を控除するもの、としています。
条件は「総合課税の」配当所得であることです。申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得については、配当控除は適用できません。配当を総合課税で申告するか、申告分離課税にするか、そもそも申告しないかで、この控除が使えるかどうかが変わります。総合課税の対象になる所得は総合課税とはで確認できます。
外国税額控除と分配時調整外国税相当額控除
外国で税金がかかった所得が日本でも課税されると、二重に税金を払うことになります。これを調整するのが外国税額控除です。No.1200は、日本で課税される所得の中に外国で生じた所得があり、その所得に対してその外国の法令により所得税に相当する税金が課税されている場合に、一定額を控除するもの、としています。
似た名前の分配時調整外国税相当額控除は、投資信託向けです。集団投資信託の収益の分配等の支払を受ける場合に、その収益の分配に係る所得税の額から控除された外国所得税の額のうち、支払を受ける収益の分配に対応する部分の金額に相当する金額を控除します。どちらも、確定申告書の提出の際に一定の書類を添付する必要があります。外国株式や海外資産に投資している方は、証券会社の年間取引報告書や支払通知書を確かめてください。
寄附金の特別控除は3種類。所得控除との選択
寄附をしたときの税額控除は、寄附先によって3つに分かれます。No.1200が挙げているのは、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除です。
| 税額控除 | 寄附先 |
|---|---|
| 政党等寄附金特別控除 | 政党または政治資金団体(政治活動に関する一定の寄附金) |
| 認定NPO法人等寄附金特別控除 | 認定NPO法人等 |
| 公益社団法人等寄附金特別控除 | 公益社団法人等 |
3つとも共通しているのが、寄附金控除(所得控除)の適用を受ける場合を除きという条件です。同じ寄附について、所得控除の寄附金控除と税額控除の特別控除は、どちらか一方を選びます。どちらが有利かは所得の大きさで変わります。なお、ふるさと納税(自治体への寄附)はこの3つには入らず、所得控除の寄附金控除の側です。ふるさと納税と確定申告で整理しています。3つとも、確定申告書の提出の際に一定の書類を添付する必要があります。
住宅の税額控除。住宅ローン控除・耐震改修・特定改修・認定住宅
住宅に関する税額控除は種類が多く、No.1200は4つを挙げています。中心になるのが(特定増改築等)住宅借入金等特別控除、いわゆる住宅ローン控除です。一定の要件を満たす住宅の新築、取得または増改築等をした場合に、住宅ローン等の年末残高の合計額を基として計算した金額を一定期間控除します。
国税庁 タックスアンサー No.1200「税額控除」
なお、給与所得者は、1年目に確定申告をすると、2年目以降は年末調整でこの控除を受けることができます。
会社員の方は、最初の年だけ確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で済みます。途中で転勤して住まなくなった場合の扱いは転勤と住宅ローン控除にまとめています。
ローンを使わない改修にも税額控除があります。住宅耐震改修特別控除は、自己の居住の用に供する家屋(昭和56年5月31日以前に建築された家屋で一定のもの)について住宅耐震改修をした場合の控除で、自己の所有であるかどうかは問いません。住宅特定改修特別税額控除は、バリアフリー改修工事、省エネ改修工事、多世帯同居改修工事、耐久性向上改修工事、子育て対応改修工事(令和6年4月1日から令和10年12月31日までの間に居住の用に供した場合に限る)を行った場合の控除です。認定住宅等新築等特別税額控除は、認定長期優良住宅、認定低炭素住宅またはZEH水準省エネ住宅の取得等をした場合に、標準的なかかり増し費用を基として計算した金額を控除します。
気をつけたいのは、住宅特定改修特別税額控除と認定住宅等新築等特別税額控除は、住宅借入金等特別控除との選択適用だという点です。同じ住宅で両方は使えません。どれも確定申告書の提出の際に一定の書類を添付する必要があります。
事業者向けの特別控除。青色申告が前提
No.1200の一覧の後半は、事業を行う個人向けの特別控除です。試験研究を行った場合、中小事業者が機械等を取得した場合、特定経営力向上設備等を取得した場合、給与等の支給額が増加した場合など、多くの制度が並んでいます。共通しているのは、青色申告者であることと、設備の取得については特別償却の適用を受けないときに限られることです。
個人事業主に身近なのは、給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除です。No.1200は、中小事業者である青色申告者が国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、雇用者給与等支給増加割合が1.5パーセント以上であるなど一定の要件を満たす場合に、一定の金額を控除する、としています。中小事業者以外の青色申告者については、令和5年から令和9年までの各年において、継続雇用者給与等支給増加割合が3パーセントまたは4パーセント以上であることなどが要件です。従業員の給与を増やした年は、この控除が使えないか確かめる価値があります。
2つ以上使うときの上限。調整前事業所得税額の100分の90
事業者向けの特別控除を同じ年に2つ以上使う場合には、上限があります。No.1200は、試験研究を行った場合の所得税額の特別控除から革新的情報産業活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除までの規定のうち、2以上の規定の適用を受けようとする場合、税額控除可能額の合計額がその年分の調整前事業所得税額の100分の90相当額を超えるときは、その超える部分の金額はその年分の所得税額から控除しない、としています。
控除しきれなかった部分が消えるわけではありません。一定の事項を記載した明細書の添付を要件に、各特別控除制度の繰越税額控除限度超過額として翌年分以後に繰越控除できます。複数の設備投資と賃上げが重なった年は、この上限と繰越しの管理が必要になります。事業者の方は、どの制度を使うかを申告前に整理しておくと安心です。
よくある質問
税額控除と所得控除は何が違いますか
税額控除とは、 所得税額から一定の金額を差し引く 仕組みです。国税庁のタックスアンサーNo.1200は、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除するもの、と定義しています。→ 本文で読む
配当控除はいくら控除できますか
個人の方が最もよく使う税額控除の1つが配当控除です。No.1200は、総合課税の配当所得がある場合に、原則として、配当所得の金額の 10パーセントまたは5パーセント に相当する金額を控除するもの、としています。→ 本文で読む
外国税額控除とは何ですか
外国で税金がかかった所得が日本でも課税されると、二重に税金を払うことになります。これを調整するのが 外国税額控除 です。No.1200は、日本で課税される所得の中に外国で生じた所得があり、その所得に対してその外国の法令により所得税に相当する税金が課税されている場合に、一定額を控除するもの、としています。→ 本文で読む
寄附金の税額控除と所得控除は両方使えますか
寄附をしたときの税額控除は、寄附先によって3つに分かれます。No.1200が挙げているのは、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除です。→ 本文で読む
住宅ローン控除は毎年確定申告が必要ですか
住宅に関する税額控除は種類が多く、No.1200は4つを挙げています。中心になるのが (特定増改築等)住宅借入金等特別控除 、いわゆる住宅ローン控除です。一定の要件を満たす住宅の新築、取得または増改築等をした場合に、住宅ローン等の年末残高の合計額を基として計算した金額を一定期間控除します。→ 本文で読む
事業者向けの特別控除を複数使うときの上限はありますか
事業者向けの特別控除を同じ年に2つ以上使う場合には、上限があります。No.1200は、試験研究を行った場合の所得税額の特別控除から革新的情報産業活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除までの規定のうち、2以上の規定の適用を受けようとする場合、税額控除可能額の合計額がその年分の 調整前事業所得税額の100分の90相当額 を超えるときは、その超える部分の金額はその年分の所得税額から控除しない、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1200 税額控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1200.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
年末調整で終わっている方も、税額控除の申告漏れがないか見直してください。
配当を受け取った、海外の所得に外国の税金がかかった、寄附をした、住宅を買った、耐震や省エネの改修をした。こうした年は、年末調整だけでは反映されない税額控除があります。源泉徴収票と証明書類をお持ちいただければ、どの控除が使えるかを確かめます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
あわせて読む
同じテーマの記事
所得控除
要介護認定と障害者控除。65歳以上は市町村長等の認定
介護保険法の要介護認定を受けたことで、そのまま所得税の障害者控除の対象になるわけではありません。
所得控除
扶養控除は38万円・63万円・48万円・58万円の4段階
扶養控除の額は、一般38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)63万円、老人扶養親族(70…
所得控除
配偶者控除は配偶者の所得62万円以下。給与なら136万円以下
配偶者の合計所得金額が62万円以下(令和8年分から。
所得控除
パート収入は178万円まで所得税がかかりません(令和8年分から)
令和8年分から、給与所得控除の最低額74万円と基礎控除104万円を合わせて、パート収入178万…