控除
転勤で住宅ローン控除はどうなるか。
単身赴任なら続けられ、家族で転居しても戻れば残りの期間で再適用できます
住宅ローン控除を受け始めてから数年で、会社から転勤を命じられることがあります。せっかくの控除がどうなるのか、心配になるところです。
答えを先に書くと、単身赴任で家族がその家に住み続けるなら控除は続き、家族全員で転居しても、戻ってきた年から残りの期間について再適用を受けられます。ただし、転居前に税務署へ届出書を出しておく必要がある場合があります。
国税庁のタックスアンサーNo.1234は、転勤の場合を3つに分けて説明しています。どの場合に何が必要か、順に確認します。
この記事の要点
住宅ローン控除は、取得の日から6か月以内に住み、その年の12月31日まで住んでいることが要件です。転勤で住めなくなっても、単身赴任で家族が住み続けていれば控除は続きます。家族全員で転居した場合も、転任命令などやむを得ない事由があり、転居前に届出書を出していれば、再び住んだ年から残りの控除期間について再適用できます。控除期間は延びません。国税庁タックスアンサーNo.1234をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
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原則は6か月以内に住み、年末まで住んでいること
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除等)には、住んでいることについての要件があります。国税庁のタックスアンサーNo.1234は、住宅の取得等をした日から6か月以内にその者の居住の用に供し、かつ、その年の12月31日まで引き続きその者の居住の用に供していることが必要、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1234「転勤と住宅借入金等特別控除等」
しかし、家屋の所有者が、転勤等のやむを得ない事情により、その住宅の取得等の日から6か月以内にその者の居住の用に供することができない場合や年末まで引き続き居住することができない場合もあります。
この要件を文字どおりに当てはめると、転勤で家を離れた年から控除は受けられなくなります。そこでNo.1234は、転勤等のやむを得ない事情がある場合について、一定の要件を満たせば控除を受けられる取扱いを3つの場合に分けて示しています。単身赴任の場合、家族全員で転居した場合、住み始めた年のうちに転居した場合です。
単身赴任。家族が住み続けていれば控除は続く
まず単身赴任です。所有者本人は転勤先に住み、配偶者や子どもはその家に住み続ける場合、控除は途切れません。No.1234は、家屋の所有者が転勤、転地療養その他のやむを得ない事情により、配偶者、扶養親族その他生計を一にする親族と日常の起居を共にしない場合で、次の条件を満たすときは、所有者が入居し、その後も引き続き居住しているものとして取り扱われるとしています。
- 家屋の取得等の日から6か月以内に、これらの親族が入居していること
- その後も引き続き親族が居住していること
- やむを得ない事情が解消した後は、所有者が共にその家屋に居住すると認められること
ポイントは、転勤が終わったら本人も戻って一緒に住む、という前提があることです。この場合、確定申告や年末調整の手続は、通常どおり続ければよいことになります。
転勤先が国外の場合。取得の時期で扱いが違う
単身赴任の転勤先が国外だと、話が1段階複雑になります。所有者が「非居住者」になるためです。No.1234は、住宅の取得等をした時期が平成28年3月31日以前か、平成28年4月1日以後かで扱いを分けています。
| 住宅の取得等の時期 | 国外への単身赴任中の扱い |
|---|---|
| 平成28年3月31日以前 | 非居住者期間中は適用なし。帰国して家族とともに年末まで住めば、残存控除期間について適用できる |
| 平成28年4月1日以後 | 居住者か非居住者かにかかわらず、生計を一にする親族が年末まで引き続き住んでいれば適用できる。ただし総合課税の対象となる国内源泉所得がある年分に限る |
平成28年4月1日以後に取得した家であれば、海外赴任中も家族が住んでいれば控除の対象になります。ただし、居住期間中の給与所得や出国後の国内不動産所得などの総合課税の対象となる国内源泉所得がある年分に限られます。控除は所得税額から引くものですから、日本で課税される所得がない年には引く相手がありません。
家族全員で転居した場合。戻った年から再適用できる
次に、家族全員で転勤先に引っ越し、家を空ける(または貸す)場合です。この場合、住まなくなった日の属する年以降、控除は受けられません。ただしNo.1234は、次の要件をすべて満たせば、再び住んだ日の属する年以後、残存控除期間につき再適用を受けられるとしています。
- 勤務先からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由があること
- 家屋を居住の用に供しなくなる日までに、一定の手続を行っていること
2つめの「一定の手続」が見落としやすいところです。引っ越す前に、税務署へ届出書を出しておく必要があります。具体的な書類は後の節にまとめます。
また、留守中に家を貸していた場合は、再適用の始まりが1年ずれます。No.1234は、再び居住の用に供した日の属する年にその家屋を賃貸の用に供していた場合には、その年の翌年以後から再適用、としています。戻った年のうちに人に貸していた期間があると、その年は対象になりません。
住み始めた年のうちに転居した場合
3つめは、入居したその年の12月31日までに、家族と共に転居してしまった場合です。まだ一度も控除を受けていない段階です。No.1234は、次の要件をすべて満たせば、再び住んだ日の属する年以後、残存控除期間について控除を受けられる、としています。
- 勤務先からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由があること
- 平成21年1月1日以後に、その家屋をその者の居住の用に供しなくなったこと
- 当初、住宅の取得の日から6か月以内にその者の居住の用に供していること
この場合も、貸していた年があれば再適用はその翌年からです。前の節の「再適用」との違いは、転居前の届出書の提出が要件になっていないことです。No.1234は、この場合の転居前の手続等は不要、と明記しています。なお、家族全員で転居した場合と住み始めた年に転居した場合の取扱いは、転勤先が国内・国外いずれでも同じです。
必要な手続。転居前の届出書と、戻ったあとの確定申告
手続は、転居する前と、戻って再適用を受ける年の2回あります。まず、控除を受けていた人が家族と共に転居する場合、住まなくなる日までに、その家屋の所在地の所轄税務署長へ次の書類を提出します。
| いつ | 提出する書類 |
|---|---|
| 転居前(住まなくなる日まで) | 「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」 未使用分の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」(税務署長から交付を受けている場合) |
| 戻ったあと、再適用する最初の年分 | 確定申告書に「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(2か所以上から交付を受けている場合はそのすべて)を添付して、納税地の所轄税務署長へ提出 |
会社員の方が年末調整で控除を受けていた場合、税務署から交付された残りの年分の申告書兼証明書を持っているはずです。その未使用分を届出書と一緒に返す、と考えると分かりやすいと思います。
住み始めた年のうちに転居した場合は、転居前の手続は不要です。戻って適用を受ける最初の年分の確定申告書に、住宅借入金等特別控除等に係る通常の添付書類のほか、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と、転任命令その他これに準ずるやむを得ない事由によりその家屋に居住しなくなったことを明らかにする書類を添付します。再適用の最初の年は、年末調整ではなく確定申告です。会社員が確定申告をする場合の全体像は会社員でも確定申告が必要な7つの場合で整理しています。
控除期間は延びない。住んでいなかった年の分は受けられない
最後に注意点です。No.1234は、単身赴任等の場合で控除を受ける人が、その年の12月31日において家族と共にその家屋を居住の用に供しなくなった期間については、控除の適用はない、としています。年末の時点で誰も住んでいなければ、その年は受けられません。
国税庁 タックスアンサー No.1234「転勤と住宅借入金等特別控除等」
また、住宅借入金等特別控除等の控除期間は延長されませんので、再び居住の用に供した場合で住宅借入金等特別控除等の適用または再適用を受けることができるのは、残存控除期間がある場合に限ります。
つまり、転勤で3年家を離れたら、その3年分の控除はなくなり、戻ってからは当初の控除期間のうち残っている年数だけ受けられます。留守にした年数の分だけ、受けられる回数が減るということです。控除期間の終わりが近い時期の転勤では、再適用できる年が残っていないこともあります。辞令が出たら、残存控除期間が何年あるかを確かめてください。
よくある質問
住宅ローン控除の居住の要件は何ですか
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除等)には、住んでいることについての要件があります。国税庁のタックスアンサーNo.1234は、住宅の取得等をした日から 6か月以内 にその者の居住の用に供し、かつ、 その年の12月31日まで引き続き その者の居住の用に供していることが必要、としています。→ 本文で読む
単身赴任すると住宅ローン控除は受けられなくなりますか
まず単身赴任です。所有者本人は転勤先に住み、配偶者や子どもはその家に住み続ける場合、控除は途切れません。No.1234は、家屋の所有者が転勤、転地療養その他のやむを得ない事情により、配偶者、扶養親族その他生計を一にする親族と日常の起居を共にしない場合で、次の条件を満たすときは、 所有者が入居し、その後も引き続き居住しているものとして取り扱われる としています。→ 本文で読む
海外赴任中も住宅ローン控除は受けられますか
単身赴任の転勤先が国外だと、話が1段階複雑になります。所有者が「非居住者」になるためです。No.1234は、住宅の取得等をした時期が平成28年3月31日以前か、平成28年4月1日以後かで扱いを分けています。→ 本文で読む
家族全員で転勤先に引っ越したら住宅ローン控除はどうなりますか
次に、家族全員で転勤先に引っ越し、家を空ける(または貸す)場合です。この場合、住まなくなった日の属する年以降、控除は受けられません。ただしNo.1234は、次の要件をすべて満たせば、 再び住んだ日の属する年以後、残存控除期間につき再適用を受けられる としています。→ 本文で読む
転勤で家を離れるとき住宅ローン控除の手続は何が必要ですか
手続は、転居する前と、戻って再適用を受ける年の2回あります。まず、控除を受けていた人が家族と共に転居する場合、住まなくなる日までに、 その家屋の所在地の所轄税務署長 へ次の書類を提出します。→ 本文で読む
転勤で受けられなかった年の住宅ローン控除はあとから取り戻せますか
最後に注意点です。No.1234は、単身赴任等の場合で控除を受ける人が、その年の12月31日において家族と共にその家屋を居住の用に供しなくなった期間については、控除の適用はない、としています。年末の時点で誰も住んでいなければ、その年は受けられません。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1234.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
転勤の辞令が出たら、引っ越す前に住宅ローン控除の手続を確かめてください。
家族全員で転居する場合、転居前に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を出しておかないと、戻ってきたときの再適用が受けられません。単身赴任か、家族で転居か、国内か国外か、住み始めた年かで手続が変わります。辞令と借入金の残高証明書をお持ちいただければ、必要な手続を一緒に確認します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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