申告
先物取引の雑所得等は申告分離課税。
所得税15%・地方税5%、損失は他の所得と通算できず3年間繰り越せます
商品先物や金融先物、店頭のデリバティブ取引で利益や損失が出た年、「給与と合算するのか、株と同じなのか」というご質問をいただきます。
答えを先に書くと、これらは「先物取引に係る雑所得等」として、他の所得と区分して所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の申告分離課税になります。給与とは合算しませんし、株式の譲渡所得とも別の枠です。
損失が出た場合は、先物取引どうしでは通算できますが、給与や株式とは通算できません。翌年以後3年間の繰越しはできますが、毎年続けて申告することが条件です。国税庁のタックスアンサーNo.1522とNo.1523で順に確認していきます。
この記事の要点
商品先物取引や金融商品先物取引、店頭デリバティブ取引などの差金等決済による所得は「先物取引に係る雑所得等」として、他の所得と区分し所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の申告分離課税になります。損失は先物取引以外の所得とは損益通算できず、翌年以後3年間の繰越しには連続した確定申告が必要です。国税庁タックスアンサーNo.1522・No.1523をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
先物取引の所得は申告分離課税。所得税15%・地方税5%
答えを先に書くと、一定の先物取引の差金等決済による所得は、他の所得と区分して、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で申告分離課税になります。国税庁のタックスアンサーNo.1522は、先物取引に係る事業所得、譲渡所得および雑所得を「先物取引に係る雑所得等の金額」と呼び、この特例の対象にしています。
国税庁 タックスアンサー No.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
その先物取引に係る事業所得、譲渡所得および雑所得(以下、これらを「先物取引に係る雑所得等の金額」といいます。)については、他の所得と区分して、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率による申告分離課税となります。
給与と合算して累進税率がかかる総合課税ではなく、利益の大きさにかかわらず一定の税率です。「差金等決済」とは、決済または行使もしくは放棄もしくは譲渡の総称です。商品や金融商品の受渡しが行われることとなるものは対象から除かれています。雑所得の全体像は雑所得の3区分で整理しています。
対象になる先物取引の範囲
特例の対象になる差金等決済は、大きく3つです。No.1522は、商品先物取引等の決済、金融商品先物取引等の決済、カバードワラントに表示される権利の行使もしくは放棄またはカバードワラントの譲渡を挙げています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| (1)商品先物取引等 | 商品先物取引法上の先物取引のうち一定のもの(商品市場で行う現物先物取引、現金決済型先物取引、商品指数先物取引、商品オプション取引など)と、店頭商品デリバティブ取引のうち一定のもの |
| (2)金融商品先物取引等 | 金融商品取引法上の市場デリバティブ取引のうち一定のもの(先物取引、指数先物取引、オプション取引など)と、店頭デリバティブ取引のうち一定のもの |
| (3)カバードワラント | 表示される権利の行使もしくは放棄、またはカバードワラントの譲渡 |
金融商品先物取引等の店頭デリバティブ取引は、金融商品市場および外国金融商品市場によらないで行われる先渡取引、指標先渡取引、オプション取引、指標オプション取引で、第一種金融商品取引業者または登録金融機関を相手方として行うものです。ただし、一定の暗号資産または金融指標に係るものは除かれています。暗号資産の税金は暗号資産の課税関係をご覧ください。
カバードワラントは、金融商品取引法第2条第1項第19号に定められている有価証券で、外国金融商品市場において取引される一定のもの以外のものです。譲渡は、金融商品取引業者への売委託により行う譲渡もしくは金融商品取引業者に対する譲渡に限られます。
復興特別所得税と、令和9年分以後の防衛特別所得税
平成25年から令和29年までの各年分の確定申告では、所得税と復興特別所得税(その年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付します。
No.1522の注記では、令和9年分以後は、復興特別所得税額が基準所得税額の1.1パーセントとなり、防衛特別所得税を基準所得税額の1パーセントの税率で、所得税および復興特別所得税と併せて申告・納付する、とされています。15パーセントの本体は変わりませんが、上乗せ部分の名前と率が変わります。
損失は先物取引の中でしか通算できない
先物取引に係る雑所得等の計算で損失が出た場合、他の先物取引に係る雑所得等の金額との損益の通算はできますが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできません。
国税庁 タックスアンサー No.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失の金額は、他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益の通算は可能ですが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできません。
給与所得や事業所得から先物取引の損失を引くことはできず、上場株式等の譲渡損失や配当とも通算できません。先物取引の世界の中だけで損益を合わせる、と考えてください。損益通算の全体像は損益通算できる4つの所得で確認できます。
損失は翌年以後3年間繰り越せる。連続した申告が条件
通算しきれなかった損失は、一定の要件の下で、翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年の先物取引に係る雑所得等の金額を限度として差し引くことができます。No.1523は、繰越しの順序と手続を示しています。
損失が前年以前3年以内の2以上の年分に生じたものである場合には、最も古い年分に生じた損失の金額から順次差し引きます。雑損失の繰越控除を行う場合には、まず先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を行った後、雑損失の繰越控除を行います。
手続は3つです。損失が生じた年分の確定申告書に、申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)と先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書を添付して提出すること。その後において連続して付表を添付した確定申告書を提出すること。繰越控除を受けようとする年分に、付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出することです。取引をしなかった年も、付表を付けた申告を続けないと繰越しが切れます。株式の繰越しと同じ考え方です。株の譲渡損失の繰越控除もご覧ください。
申告には計算明細書を添付する
先物取引に係る雑所得等の金額について確定申告をする場合には、確定申告書に「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付しなければなりません。利益が出た年も、損失を繰り越す年も、この明細書が基になります。
取引業者から届く年間の損益の資料をもとに、決済の損益と必要経費を明細書にまとめます。複数の業者で取引している場合は、先物取引に係る雑所得等どうしで通算できますから、すべての業者の損益を合わせて計算します。取引の内容が商品先物・金融先物・カバードワラントのどれに当たるかで迷う場合は、業者の資料に記載された区分を確かめてください。
よくある質問
先物取引の利益はどのように課税されますか
答えを先に書くと、一定の先物取引の差金等決済による所得は、他の所得と区分して、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で申告分離課税になります。国税庁のタックスアンサーNo.1522は、先物取引に係る事業所得、譲渡所得および雑所得を「先物取引に係る雑所得等の金額」と呼び、この特例の対象にしています。→ 本文で読む
どのような取引が先物取引に係る雑所得等の対象になりますか
特例の対象になる差金等決済は、大きく3つです。No.1522は、商品先物取引等の決済、金融商品先物取引等の決済、カバードワラントに表示される権利の行使もしくは放棄またはカバードワラントの譲渡を挙げています。→ 本文で読む
先物取引の損失を給与所得や株式の利益と通算できますか
先物取引に係る雑所得等の計算で損失が出た場合、他の先物取引に係る雑所得等の金額との損益の通算はできますが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできません。 給与所得や事業所得から先物取引の損失を引くことはできず、 上場株式等の譲渡損失や配当とも通算できません。 先物取引の世界の中だけで損益を合わせる、と考えてください。損益通算の全体像は 損益通算できる4つの所得 で確認できます。→ 本文で読む
先物取引の損失は何年繰り越せますか
通算しきれなかった損失は、一定の要件の下で、翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年の先物取引に係る雑所得等の金額を限度として差し引くことができます。No.1523は、繰越しの順序と手続を示しています。→ 本文で読む
先物取引の確定申告には何を添付しますか
先物取引に係る雑所得等の金額について確定申告をする場合には、確定申告書に「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付しなければなりません。利益が出た年も、損失を繰り越す年も、この明細書が基になります。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1522.htm - 国税庁「No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1523.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
先物取引で損が出た年も、申告するかどうかを決めておいてください。
先物取引の損失は、申告しなければ翌年に持ち越せません。持ち越した後も、取引がない年を含めて毎年続けて付表を付けた申告が必要です。取引業者の年間損益の資料をお持ちいただければ、申告の要否と繰越しの効果を確かめられます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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