申告
先物取引の差金等決済の損失は翌年以後3年間繰り越せます。
損失の年から毎年、付表を付けて申告するのが条件です
先物取引やオプション取引で損を出した年、「損だから申告しなくていい」と考えてしまう方がいらっしゃいます。
答えを先に書くと、先物取引の差金等決済の損失は、確定申告をすれば翌年以後3年間繰り越して、その間の先物取引の利益から差し引けます。申告しなければ、翌年に利益が出ても損失と相殺できません。
ただし、繰り越せる相手は「先物取引に係る雑所得等」だけで、給与や株式とは通算できません。また、損失の年から毎年、付表を付けて申告し続けることが条件です。国税庁のタックスアンサーNo.1523とNo.1522で、範囲・順序・手続を確認していきます。
この記事の要点
先物取引の差金等決済で出た損失は、確定申告をすれば翌年以後3年間繰り越し、その間の「先物取引に係る雑所得等」の金額から差し引けます。相手は先物取引の所得だけで、給与や株式とは通算できません。損失の年に付表と計算明細書を付けて申告し、その後も連続して付表付きの確定申告書を出し続けることが条件です。税率は所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)です。国税庁タックスアンサーNo.1523・No.1522をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
先物取引の損失は翌年以後3年間繰り越せる
答えを先に書くと、先物取引の差金等決済で出た損失は、確定申告をすれば翌年以後3年間繰り越して、その間の先物取引の利益から差し引けます。国税庁のタックスアンサーNo.1523は、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として差し引くことを、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除としています。
国税庁 タックスアンサー No.1523「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」
先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除とは、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失がある場合に、その損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として、一定の方法により、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上その損失の金額を差し引くことです。
ポイントは2つです。繰り越せる期間は翌年以後3年間であること、そして差し引ける相手は先物取引に係る雑所得等の金額だけであることです。翌年に先物取引で利益が出ても、繰り越した損失の範囲では課税されないということです。株式の損失の繰越し(株の譲渡損失の繰越控除)と似た仕組みですが、株式と先物取引の損益は別々の枠で計算します。
「先物取引に係る雑所得等」に当たる取引。申告分離課税
「先物取引に係る雑所得等」とは、一定の先物取引の差金等決済(決済、行使、放棄、譲渡の総称)による事業所得・譲渡所得・雑所得のことで、他の所得と区分して申告分離課税されます。No.1522は、その税率を所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)としています。
対象になる取引は、No.1522によれば大きく3つです。
| 対象になる差金等決済 | |
|---|---|
| (1) | 「商品先物取引等」の決済(商品の受渡しが行われることとなるものを除く)。商品先物取引法上の先物取引のうち一定のもの、店頭商品デリバティブ取引のうち一定のもの |
| (2) | 「金融商品先物取引等」の決済(金融商品の受渡しが行われることとなるものを除く)。金融商品取引法上の市場デリバティブ取引のうち一定のもの、店頭デリバティブ取引のうち一定のもの |
| (3) | カバードワラントに表示される権利の行使もしくは放棄、またはカバードワラントの譲渡 |
(2)には、金融商品取引法上の先物取引、指数先物取引およびオプション取引、いわゆる通貨等先物取引や金利等先物取引のほか、店頭デリバティブ取引のうち第一種金融商品取引業者または登録金融機関を相手方として行う先渡取引、指標先渡取引、オプション取引、指標オプション取引が含まれます。一定の暗号資産または金融指標に係る店頭デリバティブ取引は除かれています。ご自身の取引がどれに当たるかは、取引業者から届く資料で確かめてください。
なお、平成25年から令和29年までの各年分は、所得税と復興特別所得税(基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告します。令和9年分以後は復興特別所得税が基準所得税額の1.1パーセントとなり、防衛特別所得税が基準所得税額の1パーセントの税率で加わります。
損益通算は先物取引どうしだけ
先物取引の損失は、給与や株式の利益とは通算できません。No.1522は、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失の金額は、他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益の通算は可能だが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできない、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失の金額は、他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益の通算は可能ですが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできません。
たとえば商品先物で損をして、同じ年に金融商品先物で利益が出ていれば、その中では通算できます。しかし給与所得や上場株式の譲渡益、配当とは通算できません。損益通算できる所得の全体像は損益通算の記事で整理しています。通算してもなお残った損失が、翌年以後3年間の繰越しの対象です。
繰越控除の順序。古い年の損失から、雑損失より先に
複数の年に損失があるときは、古い年の損失から順に差し引きます。No.1523は、損失の金額が前年以前3年以内の2以上の年分に生じたものである場合には、これらの年のうち最も古い年分に生じた損失の金額から順次差し引く、としています。
もう1つ順序の決まりがあります。災害や盗難などによる雑損失の繰越控除も行う年は、No.1523によれば、まず先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を行った後、雑損失の繰越控除を行います。古い年の損失から使い切っていくのは、繰越しが3年間で終わるためです。どの年の損失がいくら残っているかを、申告書の付表で毎年確かめます。
手続。損失の年と、その後の年の連続した申告
繰越控除は、損失が出た年に申告し、その後も毎年続けて申告することが条件です。No.1523は、次の3つの手続が必要としています。
- 損失の金額が生じた年分の所得税につき、「所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」および「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付した確定申告書を提出すること
- その後において連続して上記の申告書付表を添付した確定申告書を提出すること
- 繰越控除を受けようとする年分の所得税につき、上記の申告書付表および計算明細書を添付した確定申告書を提出すること
大事なのは2番目です。損失の翌年に取引をしなかった年があっても、付表を付けた申告書を出し続けなければ、その先の繰越しは使えません。損失を出した年は、ほかに申告の義務がなくても申告しておくことが、翌年以後の税額を減らす可能性につながります。
添付する付表と計算明細書
先物取引の申告に使う書類は2種類です。No.1522は、「先物取引に係る雑所得等の金額」について確定申告をする場合には、確定申告書に「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付しなければならない、としています。損失を繰り越す年と繰越控除を受ける年は、これに「申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」が加わります。
| 年分 | 申告書付表(先物取引に係る繰越損失用) | 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書 |
|---|---|---|
| 損失が生じた年 | 添付 | 添付 |
| その後の年(取引がない年を含む) | 添付 | 先物取引の所得があれば添付 |
| 繰越控除を受ける年 | 添付 | 添付 |
提出先は所轄税務署です。取引業者から届く年間の取引の報告書をもとに、計算明細書で先物取引に係る雑所得等の金額を出し、付表で繰り越す損失を管理するのが基本の流れです。
よくある質問
先物取引の損失は何年繰り越せますか
答えを先に書くと、先物取引の差金等決済で出た損失は、確定申告をすれば翌年以後3年間繰り越して、その間の先物取引の利益から差し引けます。国税庁のタックスアンサーNo.1523は、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として差し引くことを、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除としています。→ 本文で読む
先物取引の利益にかかる税率はいくらですか
「先物取引に係る雑所得等」とは、一定の先物取引の差金等決済(決済、行使、放棄、譲渡の総称)による事業所得・譲渡所得・雑所得のことで、他の所得と区分して申告分離課税されます。No.1522は、その税率を所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)としています。→ 本文で読む
先物取引の損失を給与や株の利益と通算できますか
先物取引の損失は、給与や株式の利益とは通算できません。No.1522は、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失の金額は、他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益の通算は可能だが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできない、としています。→ 本文で読む
複数の年に先物取引の損失があるときはどの順で引きますか
複数の年に損失があるときは、古い年の損失から順に差し引きます。No.1523は、損失の金額が前年以前3年以内の2以上の年分に生じたものである場合には、これらの年のうち最も古い年分に生じた損失の金額から順次差し引く、としています。→ 本文で読む
先物取引の損失を繰り越すにはどんな手続が必要ですか
繰越控除は、損失が出た年に申告し、その後も毎年続けて申告することが条件です。No.1523は、次の3つの手続が必要としています。 大事なのは2番目です。 損失の翌年に取引をしなかった年があっても、付表を付けた申告書を出し続けなければ、その先の繰越しは使えません。 損失を出した年は、ほかに申告の義務がなくても申告しておく ことが、翌年以後の税額を減らす可能性につながります。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1523.htm - 国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1522.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
先物取引で損が出た年は、取引がなくても翌年以後の申告を続けてください。
先物取引の損失は翌年以後3年間繰り越せますが、損失の年から毎年、付表を付けた確定申告書を出し続けることが条件です。株式や給与とは通算できず、先物取引どうしの枠で計算します。年間の取引の報告書をお持ちいただければ、繰り越せる金額と必要な書類を確認します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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