譲渡
株の損失は配当と損益通算でき、残りは翌年以後3年間繰り越せます。
取引がない年も申告が必要です
株式や投資信託で損を出した年、「損をしたのだから申告は関係ない」と考えてしまう方が少なくありません。
ところが上場株式等の譲渡損失は、確定申告をすればその年の配当と損益通算でき、引ききれない分は翌年以後3年間繰り越せます。翌年に利益が出たとき、その利益から差し引けるということです。
ただしこの繰越しには、毎年続けて申告するという条件があります。途中で1年でも申告を抜かすと使えなくなります。国税庁のタックスアンサーNo.1474とNo.1465で、何と通算できて、何とはできないのかを確認していきます。
この記事の要点
上場株式等を証券会社等を通じて売って出た譲渡損失は、確定申告によりその年の上場株式等の配当等と損益通算できます(配当は申告分離課税を選択したものに限る)。控除しきれない損失は翌年以後3年間繰り越して、上場株式等の譲渡益や配当から控除できます。繰り越すには損失が出た年から連続して付表を添付した確定申告書を出す必要があり、譲渡がなかった年も申告が必要です。NISA口座内の損失や給与との通算はできません。国税庁タックスアンサーNo.1474・No.1465をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
上場株式等の譲渡損失は、配当と損益通算できる
まず、同じ年のなかでの通算です。国税庁のタックスアンサーNo.1474は、上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡したこと等により生じた譲渡損失の金額は、確定申告により、その年分の上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算できる、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
確定申告により、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額および配当所得の金額(上場株式等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。)と損益通算することができます。
ポイントは括弧書きです。配当所得と通算するには、その配当について申告分離課税を選択している必要があります。配当を総合課税で申告すると、その配当とは通算できません。
なお、同じ上場株式等の譲渡どうしであれば、ある銘柄の損失を別の銘柄の利益から控除できます。No.1465は、上場株式等に係る譲渡所得等の赤字の金額は、他の上場株式等に係る譲渡所得等の黒字の金額から控除する、としています。
控除しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せる
その年の利益や配当と通算してもなお損失が残る場合は、翌年以降に持ち越せます。No.1474は、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額は、その年分の翌年以後3年間にわたり、確定申告により、上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除できる、としています。
| 繰り越した損失を | 控除できるか |
|---|---|
| 上場株式等に係る譲渡所得等の金額 | できる |
| 上場株式等に係る配当所得等の金額 | できる |
| 一般株式等に係る譲渡所得等の金額 | できない |
繰越しの期間は翌年以後3年間です。損失が出た年に申告しておけば、その後の3年間に株式の利益が出たとき、その利益から差し引けます。一般株式等(非上場株式など)の譲渡益からは控除できない点は、No.1474の注記で明記されています。
通算も繰越もできないもの
上場株式等の損失であっても、損益通算・繰越控除の対象にならないものがあります。No.1474の注記は、次の2つを挙げています。
1つは、上場株式等の譲渡であっても、いわゆる相対取引などにより生じた譲渡損失です。金融商品取引業者等を通じた譲渡でなければ、この特例は使えません。
もう1つは、非課税口座(NISA)及び未成年者口座(ジュニアNISA)内の上場株式等を譲渡したことにより生じた譲渡損失です。NISA口座は利益に税金がかからない代わりに、損失もなかったものとして扱われます。NISA口座で損を出しても、特定口座や一般口座の利益とは通算できません。NISAの仕組みはiDeCoとNISAで整理しています。
給与や不動産所得とは通算できない
株式の損失は、給与や事業の所得とは通算できません。No.1465は、株式等の譲渡損失の金額について、控除しきれない赤字の金額は、上場株式等に係る配当所得等との損益通算の場合を除き、給与所得など他の各種所得の金額から差し引くことはできない、としています。
逆方向も同じです。No.1465は、不動産所得など他の各種所得の損失の金額を、株式等に係る譲渡所得等の黒字の金額から控除することはできない、としています。株式の世界と、給与・事業・不動産の世界は、損益の出し入れができないと考えてください。
また、上場株式等に係る譲渡所得等の赤字の金額を、一般株式等に係る譲渡所得等の黒字の金額から控除することもできません。損益通算できる所得の全体像は損益通算できる4つの所得で確認できます。
損益通算に必要な手続
損益通算も繰越控除も、確定申告をしなければ使えません。No.1474は、損益通算の適用を受けようとする年分の確定申告書に、この規定の適用を受けようとする旨を記載し、次の書類を添付して提出すること、としています。
- 所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
特定口座で源泉徴収ありを選んでいると、ふだんは申告不要で済んでいます。損益通算や繰越しを使うときは、その口座の分も申告に含めることになります。証券会社から届く年間取引報告書が、申告の基になる資料です。
繰り越すには連続して申告する。売らなかった年も
繰越控除で最も見落としやすいのがここです。No.1474は、損失が生じた年分に付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出したうえで、その後の年において連続して付表の添付のある確定申告書を提出すること、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。
損失を繰り越している間は、株の売買がまったくなかった年でも、付表を付けた確定申告書を出さなければなりません。ここを抜かすと、その先の繰越しは使えなくなります。
そして、繰越控除を実際に受ける年は、付表を添付した確定申告書を提出します。一般株式等または上場株式等に係る譲渡所得等の金額がある場合には、計算明細書も添付します。損が出た年から、繰越しが終わる年まで、毎年の申告がひとつながりになっています。年が変わるたびに、繰越しの残りがいくらかを確かめておくと安心です。
よくある質問
株の譲渡損失は配当と損益通算できますか
まず、同じ年のなかでの通算です。国税庁のタックスアンサーNo.1474は、上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡したこと等により生じた譲渡損失の金額は、確定申告により、その年分の上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算できる、としています。→ 本文で読む
株の譲渡損失は何年繰り越せますか
その年の利益や配当と通算してもなお損失が残る場合は、翌年以降に持ち越せます。No.1474は、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額は、その年分の翌年以後3年間にわたり、確定申告により、上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除できる、としています。→ 本文で読む
NISA口座で出た損失は損益通算できますか
上場株式等の損失であっても、損益通算・繰越控除の対象にならないものがあります。No.1474の注記は、次の2つを挙げています。 1つは、 上場株式等の譲渡であっても、いわゆる相対取引などにより生じた譲渡損失 です。金融商品取引業者等を通じた譲渡でなければ、この特例は使えません。→ 本文で読む
株の損失を給与所得と通算できますか
株式の損失は、給与や事業の所得とは通算できません。No.1465は、株式等の譲渡損失の金額について、控除しきれない赤字の金額は、上場株式等に係る配当所得等との損益通算の場合を除き、給与所得など他の各種所得の金額から差し引くことはできない、としています。→ 本文で読む
株を売らなかった年も確定申告が必要ですか
繰越控除で最も見落としやすいのがここです。No.1474は、損失が生じた年分に付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出したうえで、その後の年において連続して付表の添付のある確定申告書を提出すること、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm - 国税庁「No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1465.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
損が出た年こそ、申告するかどうかを決めておいてください。
上場株式等の譲渡損失は、申告しなければ翌年に持ち越せません。持ち越した後も、売買がない年を含めて毎年続けて申告が必要です。特定口座の年間取引報告書と配当の資料をお持ちいただければ、損益通算と繰越しでいくら変わるかを確かめられます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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